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セマグルチドの使用により自殺リスクは上昇しない

近年、肥満症治療薬として注目を集めているGLP-1受容体作動薬「セマグルチド」ですが、その安全性に関する懸念も指摘されてきました。特に、「抑うつ症状や自殺念慮のリスクが高まるのではないか」という疑問がありました。しかし、最新の研究により、こうした懸念が払拭されました。

最新の研究結果

米ペンシルベニア大学の研究チームが実施した調査によると、セマグルチドを使用しても抑うつ症状や自殺念慮・自殺行動のリスクは増大しないことが示されました。この研究は、ノボ ノルディスク社の資金提供を受け、「JAMA Internal Medicine」に2024年9月3日付で掲載されました。

セマグルチドとは?

セマグルチドは、もともと2型糖尿病治療薬として開発されましたが、肥満症治療薬としての有効性が確認されて以降、広く使用されるようになりました。週に1回の皮下注射で効果が期待できるため、多くの医師が患者に処方しています。特に米国では、2023年には500万人がセマグルチドを処方され、そのうち40%は体重管理を目的としていました。

研究の概要

今回の研究では、以下の4つの臨床試験(STEP1、STEP2、STEP3、STEP5)のデータを分析しました。研究対象者は合計3,681人で、平均年齢は約49歳、女性が約70%を占めています。いずれも肥満または過体重の人々であり、一部は2型糖尿病を抱えていました。

研究では、抑うつ症状を「Patient Health Questionnaire(PHQ-9)」、自殺念慮や自殺行動を「コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)」で評価しました。その結果、セマグルチドを使用した群とプラセボ(偽薬)を使用した群の間で、抑うつ症状や自殺念慮・自殺行動の発生率に有意な差は見られませんでした。

結果の詳細

研究開始時点でのPHQ-9スコア(抑うつ症状の指標)は、セマグルチド群で2.0点、プラセボ群で1.8点と、「抑うつ症状なし/最小限」と評価されました。その後、68週間の治療を経た時点でのPHQ-9スコアは、セマグルチド群2.0点、プラセボ群2.4点となり、セマグルチド群の方が抑うつ症状の悪化が少ないことが示されました(オッズ比0.63、P<0.001)。

また、自殺念慮や自殺行動の報告は両群とも1%未満であり、統計的に有意な差は認められませんでした。これらの結果は、米食品医薬品局(FDA)が行っているセマグルチドの安全性評価とも一致しており、自殺リスクを高める証拠は見つかっていません。

今後の課題

ただし、本研究には精神障害を持つ人が含まれていないため、「うつ病やその他の精神疾患を抱える患者に対しても安全かどうか」は、今後の研究で検討する必要があります。

まとめ

今回の研究により、セマグルチドが抑うつ症状や自殺念慮を引き起こすリスクが増大しないことが示されました。体重管理のためにセマグルチドを使用している方や、これから治療を検討している方にとって安心材料となる結果といえるでしょう。しかし、精神疾患のある方が使用する場合は、医師と相談しながら慎重に進めることが重要です。

当院でも、ウゴービ(セマグルチド)の自費診療を行っております。詳しくはクリニックまでご相談ください。

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