1日1回投与の低亜鉛血症治療薬「ジンタス」

ジンタスとノベルジンの違い

ジンタス(ヒスチジン亜鉛水和物)と従来薬であるノベルジンは、いずれも低亜鉛血症の治療に使用され、主成分として亜鉛を補充します。しかし、両者にはいくつかの重要な違いがあります。

ジンタスは、亜鉛とヒスチジンとの錯体を形成することで、消化管での亜鉛イオンの遊離を抑制し、亜鉛イオンによる悪心・嘔吐などの消化器系副作用を低減することが期待されています。従来のノベルジン(酢酸亜鉛水和物)と比較して、ジンタスは副作用のリスクを軽減しつつ、患者様の負担を減らす設計がされています。

さらに、ジンタスの大きな特徴は「1日1回投与」が可能である点です。ノベルジンでは通常1日2~3回の投与が必要とされていましたが、ジンタスは1日1回の投与で治療効果を維持できるため、服薬アドヒアランス(薬の飲み忘れを減らすこと)において大きな利点があります。

実際に行われた大規模調査では、亜鉛欠乏症の患者に対して1日1回の服用を導入したことで、服用の継続率が向上したという結果も得られています。これは、特に高齢者や複数の薬を服用する患者にとって、非常に有益な改善点です。

ジンタスの適応と用法・用量

適応は「低亜鉛血症」で、成人および小児(体重30kg以上)に対して、1日1回50~100mgを食後に経口投与します。血清亜鉛濃度や患者の状態により、用量は適宜増減しますが、1日150mgを超えないように注意が必要です。

低亜鉛血症とは?

低亜鉛血症は、血清中の亜鉛濃度が低下し、亜鉛が不足した状態を指します。原因としては、亜鉛の摂取不足、吸収不全、排泄促進などがあり、低出生体重児、妊婦、高齢者、慢性疾患(慢性肝障害、糖尿病、腎疾患など)の患者において特に発生しやすいとされています。亜鉛は300種類以上の酵素の活性に関わり、細胞分裂や核酸代謝に重要な役割を果たしています。

主な症状

低亜鉛血症による症状には、皮膚炎、脱毛、味覚障害、発育障害、貧血、食欲低下、下痢、創傷治癒の遅延などが含まれます。亜鉛欠乏の治療には、まず食事療法が行われますが、食事のみで改善しない場合には、亜鉛製剤による補充療法が必要です。

副作用と注意点

ジンタスの主な副作用には、貧血、浮動性めまい、下痢、悪心、血中銅減少などがあります。また、重大な副作用として銅欠乏症が報告されており、治療開始時や用量変更時には血清亜鉛濃度の確認が推奨されます。ウィルソン病(肝レンズ核変性症)には適応外ですので、治療に際しては十分な確認が必要です。

PAGE TOP