2024-2025 今年の冬のインフルエンザ流行予想

インフルエンザ感染状況の推移(国立感染症研究所のデータより)

2023年は、例年のようにインフルエンザが夏に収まることはなく、前年の12月から今年の4月までの約500日間にわたり流行が続きました。2020年以降のコロナ禍では、マスクや手洗いなどの感染症対策が徹底され、インフルエンザの流行は一時的に激減しました。しかし、これによりウイルスに触れる機会が減少し、抗体が少なくなったため、インフルエンザに対する免疫力が低下したと考えられます。

では、今年のインフルエンザの流行はどうなるのでしょうか?

参考になるのが、日本とは季節が逆のオーストラリアの状況です。オーストラリアでは本格的な寒さが始まる5月後半からインフルエンザの感染者が増加し、現在も高い水準が続いています。また、同時にRSウイルスや新型コロナウイルスも流行している状況です。このことから、日本でも昨年同様にインフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルスなどの同時流行が懸念されています。

インフルエンザとは?

インフルエンザは、ウイルスが引き起こす感染症です。鼻や喉からウイルスが侵入し、通常1~3日の潜伏期間を経て、38℃以上の高熱や頭痛、全身の倦怠感、関節痛が突然現れます。のどの痛みやせき、鼻水などの症状も続きます。多くの場合、数日から1週間程度で回復しますが、中耳炎や副鼻腔炎、肺炎などの合併症を引き起こすこともあります。特に、心臓や肺の病気、糖尿病などの持病がある方は、症状が悪化するリスクが高いため注意が必要です。毎年インフルエンザによって数千人が亡くなっており、軽視できる病気ではありません。

小児や高齢者の危険なサイン

小児や高齢者においては、高熱による「脱水症」に注意が必要です。十分な水分と塩分補給が重要です。また、高齢者はインフルエンザにかかっても高熱が出にくい場合があるため、油断は禁物です。さらに、インフルエンザの後に細菌性肺炎を引き起こすこともあり、発熱や咳が長引く場合や呼吸が荒い場合には、肺炎の可能性が考えられます。食事が十分に摂れているかどうかも確認してください。

インフルエンザ対策の3本柱

インフルエンザの対策は「予防」、「ワクチン」、「治療」の3つが基本です。まずは予防策として、これまで実施してきた「手洗い・うがい」、「マスク着用」、「換気」が有効です。冬季の換気には工夫が必要で、部屋を十分に温めてから窓を開ける「2段階換気」が効果的です。

生活習慣の改善も重要です。睡眠不足は免疫力を低下させるため、十分な休養とバランスの取れた食事を心がけましょう。特に食物繊維を多く摂ることで、腸内環境が改善され免疫力が向上するとされています。

インフルエンザワクチン

生後6か月以上の方が接種対象となり、65歳以上の方は定期接種として公費で接種を受けることができます。それ以外の方は自費となりますが、自治体によっては補助金が出る場合もありますので、確認してみてください。13歳未満の方には2回接種、13歳以上の方には1回接種が推奨されています。

インフルエンザワクチンは、4つのウイルス株に対応した「4価ワクチン」であり、皮下注射で行われます。このワクチンは、死んだウイルスを使った「不活化ワクチン」と呼ばれ、感染を防ぐのではなく、感染した際の重症化や家庭内感染を予防する効果が期待されています。予防効果はおよそ40%とされ、ワクチンを接種しても半数程度の方はインフルエンザにかかる可能性がありますが、接種することで高齢者の入院リスクが約7割減少し、死亡率は5分の1に減少すると報告されています。

ワクチン接種後、免疫力が最も高まるのは約1か月後で、効果はおよそ5か月間持続します。インフルエンザの流行ピークは毎年1月から2月にかけてのため、できれば11月から年内にワクチンを接種するのが理想です。

早めの治療が重要

インフルエンザにかかった場合、早めの治療が重症化を防ぐカギです。大人は高熱や呼吸困難などの症状が現れた際には速やかに医療機関を受診しましょう。小児や高齢者、妊婦、持病のある方は、特に早期の治療が推奨されます。ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を早期に使用することで、症状の悪化を防ぐことができます。

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