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いびき 睡眠時無呼吸症候群で治療を受けている人はたった5%

いびきが大切な徴候

一般の医療現場で出会う睡眠時無呼吸症候群の患者のほとんどは、呼吸道が塞がってしまうタイプの「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」です。日本では、中度から重度の大人のOSAの患者数が約900万人いると推測されているという報告が2019年に出されました。しかし、その治療を受けている人は50万人にも満たないのです。

多くの人は、肥満でないし、昼間に眠気を感じないからと、自分が他の病気を抱えている背景にOSAがあることを疑わないかもしれません。しかし、実際には、日本のOSA患者の約4割は肥満ではなく、約半数は昼間に眠気を感じていないのです。つまり、肥満であるかどうか、昼間に眠気を感じるかどうかにかかわらず、OSAの検査は必要ということです。

OSAの一番の特徴は「いびき」です。「あなた、いびきをかいていませんか? 無呼吸の検査を受けてみませんか?」と問いかけることから、OSAの診療は始まります。

いびき 睡眠時無呼吸症候群 リスク

100人に1人が死亡

OSAの重症度を評価する指標として、無呼吸数を使用していましたが、今日では無呼吸だけでなく、呼吸が浅くなる(hypopnea)場面もOSAの病態に大きく影響することがわかっています。そのため、現在では、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の数を示すapnea-hypopnea index(AHI)が用いられています。AHIが5以上15未満を軽度、15以上30未満を中等度、30以上を重度と評価します。

2005年、Marinらは心臓血管系の問題の発生頻度を調査するためのコホート研究を行いました。対象は、健康な男性264人、いびきだけの患者377人、軽度から中等度の治療していないOSA患者403人、重度の治療していないOSA患者235人、そしてCPAP治療中のOSA患者372人でした。治療を受けていない重度のOSA患者で見られた心血管イベントの発生率は年間につき1.06/100人で死亡し、2.13/100人が非致命的な心血管イベントを経験しました。これらの数値は、健康な男性に比べて非常に高いと報告されました。

いびき 睡眠時無呼吸症候群 生存率

8年生存率は60%。CPAPで生存率低下を防げる

HeとKrygerらの研究グループは、1978年から1986年の間に閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)と診断された709名の男性患者の追跡調査を行いました。調査結果として、385名から回答を得ることができました。その結果、1時間あたりの無呼吸回数(AI)が20回以下の142例では、8年間で生存率が96±2%だったのに対し、AIが20回以上の104例では生存率が63±17%まで下がりました。また、CPAPという呼吸補助治療を受けた25例では、5年間の生存率が100%だったと報告されました。

睡眠時無呼吸症候群は肥満か否か?

睡眠時無呼吸症候群で肥満の方は60%。瘦せ型でもSASに注意

Guilleminaultらの1976年の研究では、睡眠時無呼吸症(SA)の患者62人の中で、39人(つまり63%)は肥満ではなかったと報告しています。

1999年から2009年の間に新潟県内の病院で睡眠時無呼吸症の診断を受けた人々のデータを見てみましょう。睡眠時無呼吸症ではなかった(非OSA)人は1,319人、睡眠時無呼吸症(OSA)だった人は8,857人です。OSA患者の平均BMI(体重指数)は26.1±1.5 kg/m2で、非OSA患者の22.7±1.4 kg/m2に比べて、OSA患者の方がより肥満傾向にありました。しかしながら、詳しく見てみると、OSA患者の38%はBMIが25 kg/m2未満で、5%の人は18.5 kg/m2未満、つまり痩せ型でした。

アジア人、特に日本人は、肥満度が欧米人より軽い場合でも、糖尿病や高血圧を発症しやすいとされています。これは睡眠時無呼吸症の発症についても同様です。ウィスコンシン州の大規模な睡眠研究(WSCS)によれば、体重が10%増加すると、睡眠時無呼吸症の重症度が32%増加し、逆に体重が10%減少すると、睡眠時無呼吸症は26%減少したと報告されています。

これらの事実から、肥満は睡眠時無呼吸症の発症の重要な因子であることがわかります。しかし、日本においては、肥満でない人でも睡眠時無呼吸症が発症する可能性があることを認識することが重要です。

 

いびき 睡眠時無呼吸症候群と眠気

いびき 睡眠時無呼吸症候群で日中に眠気を自覚するのはわずか

1988年に始まったウィスコンシン州の大規模な睡眠研究(WSCS)では、30歳から60歳までの公務員602人を対象に特別な睡眠検査(PSG)が行われています。その結果、睡眠中に1時間に5回以上呼吸が止まる(AHI≧5)状態(これをOSAと呼びます)が男性の24%、女性の9%で見られました。また、このOSAに加えて昼間も眠くなる(日中傾眠)症状がある人は男性の4%、女性の2%でした。つまり、OSAのある人の中で昼間眠くならない人は男性の20%、女性の7%いました。

そして、このOSAが循環器系の病気など様々な疾患の原因になることが明らかになってきました。21世紀になると、欧米ではさらに大きな睡眠研究が始まりました。2009年から始まったヨーロッパの「HypnoLaus Study」は、40歳から85歳までの男女2,121人(男性1,024人、女性1,097人)を対象に、自宅で特別な睡眠検査が行われました。その結果、OSAの状態(AHI≧5)が男性の83.8%、女性の60.8%、更に重度のOSA(AHI≧15)が男性の49.7%、女性の23.4%で認められるという驚くべき結果が2015年に報告されました。

しかし、日中も眠くなるOSAの人は全体的に見て少なかったです。OSAの全体数から日中眠くなるOSAの数を引くと、日中眠くならないOSAの人が大半であることがわかります。

いびき 睡眠時無呼吸症候群でCPAPを受けているのは5%

いびきがあればまずは検査を

2019年に公表された研究では、17の論文から集められた16カ国のOSA(睡眠時無呼吸症候群)の有病率(病気が存在する割合)が報告されました。これらのデータは、睡眠時に呼吸が5回以上止まる(AHIが5)人々の数を、各国の人口に合わせて算出し直すための特定の方法(アルゴリズム)を用いて、再評価されました。この結果によると、これらの16カ国全体で見た場合、睡眠中に1時間あたりに5回以上呼吸が止まる状態の人々(OSAの人々)は、約9億3,600万人、さらに重度で15回以上呼吸が止まる状態の人々は、約4億2,500万人に上ると推測されました。

国別に見ると、中国、アメリカ、ブラジル、インドの順にOSAの人が多く、日本では、睡眠中に1時間あたりに5回以上呼吸が止まる人が約2,200万人、15回以上呼吸が止まる人が約900万人と推測され、これらの16カ国中で10番目に多いとされています。

しかし一方で、OSAの最も効果的な治療法であるCPAP(持続的陽圧呼吸治療)を受けている人の数は、日本では50万人にも満たないとされています。これから考えると、大多数のOSAの人々はまだ診断されていないと考えられます。つまり、OSAの人々の中で、実際に治療を受けている人の数は少ないという現状が浮かび上がります。

 

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