睡眠時無呼吸と交通事故のリスク

治療を受けていない場合は約7倍。CPAPで健康な人と同程度に

2026.08.07 更新(心血管エビデンスの記載を精緻化、2026年の制度改定と新しい治療選択肢を追記)

約7倍未治療のOSAの方の
交通事故リスク
(健康な人と比べて)
同程度CPAPをしっかり
続けている方の
事故リスク(健康な人と)
4時間以上心血管イベントの解析で
効果が示された
1日あたりの使用時間
約5mmHgCPAPによる
平均的な血圧の低下幅
(集団としての平均)

※いずれも研究で報告された目安であり、お一人おひとりの効果を保証するものではありません。

OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)の方は、ご自身では昼間に眠いと感じていない場合でも、判断力や集中力が落ちていることがあります。その結果、交通事故を起こすリスクが健康な人の約7倍高くなるという報告があります。

このリスクはCPAP(持続陽圧呼吸療法)をしっかり続けている方では、健康な人と同程度まで下がることが分かっています。

CPAPと脳心血管の病気 ― 大切なのは使用時間

「処方されたか」ではなく「何時間使えたか」

致死的な脳心血管系疾患の累積発症率を示す折れ線グラフ。144か月にわたる追跡で、群ごとに発症率の推移が比較されている

図:致死的な脳心血管系疾患の累積発症率(%)

OSAの方は、脳や心臓の血管の病気になりやすいことも知られています。OSAが重症であるほど、これらの病気の発生率が高くなることが、複数の観察研究で示されてきました。

ただし、この点については少し丁寧な説明が必要です。研究の段階ごとに、分かったことが異なるからです。

表:CPAPと脳心血管の病気 ― 研究段階ごとに分かったこと
研究の段階 何を比較したか 全体として分かったこと 読み取る際の注意 患者さんにとっての意味
観察研究 OSAの重症度と、病気の発生率 OSAが重症であるほど、発生率が高い この段階では、CPAPを使った場合にどうなるかは分かりません OSAを放置しないほうがよい理由のひとつになります
比較試験
(SAVE・ISAACC・RICCADSA)
CPAPを使うグループと使わないグループ
(すでに心臓や脳の病気がある方が対象)
全体としては、再発の減少がはっきりとは示されませんでした 実際にどれだけ使えていたかの違いは、この段階では区別されていません 「処方すれば効く」という単純な話ではないことが分かりました
2023年の
患者個別データ解析
上の3試験の患者さん一人ひとりのデータを、まとめ直して解析 CPAPを1日4時間以上使えていた方に限ると、心血管イベントの再発リスクが有意に低下していました 「使えた方」に限って見た結果です。CPAPが必ず心筋梗塞や脳卒中を防ぐことを示すものではありません 「処方されたか」ではなく
「実際に何時間使えたか」が大切です

※表は左右にスクロールできます。

すでに心臓や脳の病気を持っている方を対象にした大規模な比較試験(SAVE、ISAACC、RICCADSAという3つの試験)では、CPAPを使うグループと使わないグループを比べても、全体としては再発の減少がはっきりとは示されませんでした。

ところが、これら3試験の患者さん一人ひとりのデータをまとめ直して解析した2023年の研究では、CPAPを1日4時間以上使えていた方に限ると、心血管イベントの再発リスクが有意に低下していたことが報告されています。

つまり、「CPAPを処方されたかどうか」ではなく「実際にどれだけ使えたか」が、効果を左右するということです。この点が、CPAP治療を考えるうえで最も大切なポイントになります。

昼間の眠気が改善する

CPAP使用時間が2時間未満で3割程度は改善

使用時間が大切なのは、心血管の病気だけではありません。昼間の眠気についても、同じことが言えます。

この時間はあくまで目安です

・同じ報告の中でも、2時間以下しか使えていない方の3割ほどで眠気が改善しています。
・一方で、7時間以上使っている方の3割ほどでは眠気が改善しないという結果も出ています。
・効果の出方には個人差が大きいため、お一人おひとりの経過を見ながら評価していくことが重要になります。

ご自身で感じる眠気を改善するには1日4時間以上、眠気を客観的な検査で測って改善が出るには6時間以上、睡眠の質そのものが整うには7.5時間以上の使用が必要とされています。

また、適切な圧のCPAPと、効果の出ない低い圧のCPAPを比べた試験では、1日平均3.3時間の使用でも昼間の眠気が改善し、生活の質(QOL)も向上することが示されています。「毎晩8時間使えなければ意味がない」ということではありません。

睡眠時無呼吸と高血圧の深い関係

CPAPによる降圧は平均5mmHg程度(集団としての推計)

OSAの方の約30~70%が高血圧を合併しているとされています。逆に、高血圧の方の約30~50%がOSAを合併しているとも報告されています。

特に、利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を使ってもコントロールが難しい「治療抵抗性高血圧」の方では、約60~80%にOSAが隠れていることが分かっています。血圧が下がりにくい方こそ、睡眠中の呼吸を一度調べてみる価値があるということです。

表:CPAPと血圧について報告されていること
項目 報告されている内容
平均的な血圧の低下 約5mmHg(上の血圧・下の血圧いずれも下がる)
推定される心臓の血管の病気の減少 4~5%
推定される脳卒中の減少 6~8%
使用時間との関係 使用時間が長いほど、降圧効果は大きくなる傾向

※表は左右にスクロールできます。

※これらは集団としての推計であり、お一人おひとりの効果を保証するものではありません。

CPAPを使うことで、上の血圧(収縮期)も下の血圧(拡張期)も下がることが分かっています。その幅は平均して5mmHg程度と限定的ですが、集団としてみればこの差で心臓の血管の病気が4~5%、脳卒中が6~8%減ると見積もられています。そしてこの降圧効果も、使用時間が長いほど大きくなります。

血圧そのものの考え方については、「高血圧の総合ページ」でも詳しくご説明しています。

CPAPは継続が大切 

目標は「4時間以上の治療を行っている日が全体の日数の70%以上」

治療を継続できている方

5~8割

実際の医療現場で報告されている継続率です。

途中でやめてしまう方

2割以上

治療を中断してしまう方の割合です。

良好な使用を維持できている方

約4割

「1日4時間以上使えた日が全体の7割以上」を保てている方の割合です。

※3つの数字は、それぞれ異なる定義にもとづく別々の報告です。互いに排他的な分類ではないため、足し合わせて100%になるものではありません。

ここまで繰り返しお伝えしてきたとおり、CPAPの効果を十分に得るには、治療を無理なく続けられること(アドヒアランス)が何より重要です。しかし実際には、治療を継続できている方は5割から8割程度で、2割以上の方が途中でやめてしまうと報告されています。

「1日4時間以上使えた日が全体の7割以上」という良好な状態を保てている方は、全体の4割程度とされています。

最初の1か月が、その後を大きく左右します

CPAP導入
治療がスタートします
↓
最初の数日から数週間
装着の違和感や乾燥など、つまずきが起こりやすい時期です
↓
ここが分かれ道
我慢して中断してしまうのではなく、遠慮なくご相談ください
↓
調整する
マスク・圧・加湿を見直します
↓
続けやすくなる
始めたばかりの時期のつまずきは、対処すれば取り返しがつきます

特に、CPAPを始めてから最初の1か月の過ごし方が、その後の継続を大きく左右することが分かっています。逆に言えば、始めたばかりの時期のつまずきは、対処すれば取り返しがつくということです。この時期こそ、遠慮なくご相談いただきたいと思っています。

表:2026年6月改定による、CPAP治療の管理の考え方
項目 以前 現在(2026年6月~)
治療評価の中心 機器を導入しているか 治療を継続して使えているか
使用時間データ 評価の中心ではなかった 評価の対象として明確に位置づけられた
遠隔モニタリング 本文に記載はありません 標準的な管理方法
使用できていない場合の対応 本文に記載はありません 理由を確認し、一緒に解決する
1日平均1時間未満が
3か月続いた場合
本文に記載はありません 保険での管理を継続できなくなる仕組みが設けられた

※表は左右にスクロールできます。

この仕組みは、保険を打ち切るためのものではありません

ほとんど装着できていない状態が3か月続く場合の決まりは、患者さんを追い詰めるためのものではなく、「使えていないなら、その理由を一緒に解決しましょう」という趣旨のものです。うまく使えない日が続いているときこそ、次の受診を先延ばしにせず、状況をお聞かせください。

2026年6月の診療報酬改定では、CPAP治療の評価の考え方が大きく変わりました。これまでは「機器を導入しているか」が中心でしたが、改定後は「治療を継続して使えているか」が評価の対象として明確に位置づけられています。使用時間などのデータを通信機能で確認する遠隔モニタリングが、標準的な管理方法となりました。

CPAP継続を困難にする因子

様々な因子がある

CPAPをうまく続けられないとき、そこには必ず具体的な理由があります。「気合いが足りない」といった話ではありません。まずCPAPの設定と実際の使用状況を詳しく確認したうえで、何にお困りかを具体的にうかがい、原因を探して対策を立てていきます。

CPAP患者の訴えの原因と対策をまとめた表。訴えごとに考えられる原因と対応方法が整理されている

表:CPAP患者の訴えの原因と対策

表:本文で触れている、よくある困りごとと対策
困りごと 考えられる原因 主な対策 相談の目安
装着の違和感 マスクの合い方、圧の感じ方 マスクのサイズ・種類の変更、圧設定の見直し 気になり始めたら早めに
皮膚や粘膜の痛み マスクが接触する部分への負担 マスクのサイズ・種類の変更、あて方の調整 痕や痛みが出たら早めに
鼻や口の乾燥 診察時に確認します 加湿の調整 乾燥が続くとき
空気の冷たさ 診察時に確認します 加湿・加温の調整 冷たさが気になるとき
鼻づまり・
アレルギー症状
アレルギー性鼻炎の合併など。昼間は気にならなくても、夜間の鼻呼吸に影響することがあります 加温加湿の調整、鼻炎そのものの薬物治療 続けられなくなる割合が高いため、特に早めに
治療しても残る眠気 診察時に確認します 設定と使用状況を詳しく確認したうえで対応を検討 眠気が残るとき
違和感で眠れない
(無呼吸自体は改善している)
装着の違和感 短時間作用型の睡眠薬を一時的に併用することもあります 眠れない日が続くとき

※表は左右にスクロールできます。

※本文で説明している内容のみを整理したものです。上の画像の表には、さらに幅広い項目が掲載されています。

よくあるお困りごとには、装着の違和感、皮膚や粘膜の痛み、鼻や口の乾燥、送られてくる空気の冷たさ、アレルギー症状、そして治療しても残る眠気などがあります。

特に、鼻づまりのある方は治療を続けられなくなる割合が高いことが報告されています。アレルギー性鼻炎を合併している場合、昼間は気にならなくても夜間の鼻呼吸に影響することがあるため注意が必要です。この場合は加温加湿の調整や、鼻炎そのものの薬物治療を行います。

また、無呼吸自体はCPAPで改善しているのに、装着の違和感で眠れないという方には、短時間作用型の睡眠薬を一時的に併用することもあります。

いずれの場合も、我慢して使わなくなってしまうのが一番もったいない選択です。マスクの種類やサイズの変更、圧設定の見直し、加湿の調整など、打てる手は思いのほか多くあります。マスクや機器の種類については、「睡眠時無呼吸症候群 治療 CPAP」のページもあわせてご覧ください。

CPAP 終了できる?

実際には困難なことが多い

「CPAPはいつまで続けるのですか」というご質問は、外来で最もよくいただくもののひとつです。CPAPは症状をコントロールする治療であり、病気そのものを取り除く治療ではありません。ですから、やめられるかどうかは原因によって変わってきます。

OSAの主な原因は何か ― ここで道が分かれます

肥満が主な原因の場合

減量に取り組む

↓

再検査を行う

↓

CPAPの終了、または口腔内装具(マウスピース)への切り替えができる方もいらっしゃいます

骨格的に気道が狭いことが主な原因の場合

若い頃から痩せていていびきをかいていた方、顎が小さい方など

↓

減量だけで解決するのは難しいと考えられます

↓

CPAPを続けることが基本になります

※日本人のOSAには、この骨格タイプの方が欧米より多く含まれることも知られています。

たとえば、OSAの主な原因が肥満である場合、体重が減ることで無呼吸そのものが改善する可能性があります。その結果、再検査のうえでCPAPを終了したり、口腔内装具(マウスピース)に切り替えたりできる方もいらっしゃいます。

一方、若い頃から痩せていていびきをかいていた方や、顎が小さいなど骨格的に気道が狭い方の場合は、減量だけで解決するのは難しいと考えられます。日本人のOSAには、この骨格タイプの方が欧米より多く含まれることも知られています。

【2026年5月 ― 肥満を伴うOSAに、初めての治療薬が承認されました】

2026年5月18日、GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名ゼップバウンド)が、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する効能・効果の追加承認を取得しました。対象はBMIが27以上の方に限られます。国際共同試験(SURMOUNT-OSA)で、体重が減ることに伴って無呼吸低呼吸指数(AHI)も減少することが示されたことによるものです。

表:肥満を伴うOSAの治療選択肢
選択肢 何に働くか 向いている可能性がある方 注意点 CPAPを置き換えるか
CPAP 症状をコントロールします 診察時に検査結果をもとに判断します 病気そのものを取り除く治療ではありません ―(基本となる治療です)
減量 体重が減ることで、無呼吸そのものが改善する可能性があります 肥満が主な原因となっている方 骨格的な要因が大きい方は、減量だけで解決するのは難しいと考えられます 再検査のうえで、終了できる方もいらっしゃいます
口腔内装具
(マウスピース)
診察時に確認します 減量後の再検査を経て、切り替えの選択肢になることがあります 診察時に確認します 切り替えができる方もいらっしゃいます
ゼップバウンド
(チルゼパチド)
体重が減ることに伴って、AHI(無呼吸低呼吸指数)も減少することが示されました BMI 27以上/中等症以上のOSA/肥満が主な原因となっているタイプの方 骨格的な要因が大きい方には当てはまりません。国が定めた最適使用推進ガイドラインに沿った運用が求められます CPAPをすべて置き換える薬ではありません

※表は左右にスクロールできます。

ゼップバウンドについて、必ずご確認ください

これはCPAPを置き換える薬ではありません。効果が現れるのは肥満が主な原因となっているタイプの方であり、骨格的な要因が大きい方には当てはまりません。また、使用にあたっては国が定めた最適使用推進ガイドラインに沿った運用が求められます。

どなたに適した選択肢なのかについては、「チルゼパチドと睡眠時無呼吸」のページで詳しくご説明しています。

いずれにしても、CPAPを続けるか、減量に取り組むか、他の治療に切り替えるかは、検査の結果とご本人の生活を見ながら一緒に決めていくものです。「一生この機械と付き合うのか」と気が重くなったときは、そのお気持ちも含めて、どうぞ診察の際にお話しください。

この記事の要点

  1. 大切なのは「処方されたか」ではなく「実際に何時間使えたか」です。心血管イベントの解析でも、効果が示されたのは1日4時間以上使えていた方に限られていました。
  2. 効果の出方には個人差があります。短い時間でも改善する方がいる一方、長く使っても眠気が改善しない方もいらっしゃいます。
  3. 最初の1か月のつまずきは、対処すれば取り返しがつきます。我慢して中断する前に、ぜひご相談ください。
  4. やめられるかどうかは、原因によって変わります。肥満が主な原因の方と、骨格的に気道が狭い方とでは、進む道が異なります。

睡眠時無呼吸症候群の症状・検査・治療の全体像については、「いびき外来 睡眠時無呼吸症候群の検査」をご覧ください。

「レーザー治療を受ければCPAPをやめられるのでは」とお考えの方は、いびきのレーザー治療でCPAPはやめられる?効果と限界を内科医がやさしく解説もあわせてご覧ください。

この記事の監修
かとう内科(愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310)
院長 加藤丈陽
日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医・指導医/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医

この記事を最後に更新した日:2026年8月7日

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