睡眠時無呼吸症候群による交通事故のリスクがなくなる

睡眠時無呼吸症候群の交通事故のリスクは約7倍

OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)の患者さんは、昼間に眠いと感じない場合でも、判断力や集中力が低下していることがあります。その結果、健康な人に比べて交通事故を起こすリスクが約7倍高くなるとの報告があります。しかし、このリスクはCPAP(連続陽圧呼吸療法)という治療をしっかりと行っている人では、健康な人と同等になります。

4時間以上のCPAP使用で致命的な脳梗塞を70%減らす

ランダム比較試験で脳梗塞発症リスクを17.5⇒5%に低下

OSA(睡眠時無呼吸)を持つ人は、脳や心臓の血管系に関連する病気になるリスクが高いとされています。これまでの研究では、OSAが重度であればあるほど、これらの脳心血管系の病気の発生率が上がることが分かっています。しかし、CPAP(連続陽圧呼吸療法)という治療を行うことで、これらの病気の発生率が減少することも報告されています。

一方で、ランダムに比較を行った試験では、少なくとも4時間以上CPAPを使用する群では、脳心血管系の病気の予防効果が認められました。つまり、CPAP治療を適切な時間以上行うことで、脳心血管系の病気の予防に効果がある可能性が示されています。

昼間の眠気が改善する

CPAP使用時間が2時間未満で3割程度は改善

昼間の眠気について、CPAP(連続陽圧呼吸療法)の使用時間が重要であるという報告があります。自分自身が感じる眠気を改善するためには、少なくとも4時間以上のCPAPの使用が必要です。一方、眠気を客観的に測るためには6時間以上、睡眠の質を改善するためには7.5時間以上の使用が必要とされています。

ただし、これらの報告でも、CPAPを2時間以下しか使っていない人の中には3割程度の人が眠気が改善しているという結果もあります。また、逆に7時間以上使っている人の中にも、眠気が改善しない人が3割程度いるという結果もあります。つまり、これらの時間は一般的な目安であり、実際の効果は個々の人により異なると考えられます。そのため、それぞれの患者さんごとに評価を行うことが重要となります。

さらに、最近の研究では、適切な圧力で使用したCPAPと、効果のない低圧で使用したCPAPを比較した試験で、1日平均3.3時間のCPAP使用で昼間の眠気が改善し、生活の質(QOL)も向上することが分かりました。

CPAPの降圧効果は5 mmHg。心疾患、脳卒中を約5%減少

高血圧に対しては長時間のCPAP使用が有効

OSAの患者さんでは約30%~70%が高血圧を合併しているとされています。また、逆に、高血圧を持つ人の約30%~50%がOSAを合併しているとされています。特に、利尿薬を含む3つ以上の降圧薬が必要な難治性の高血圧患者の約60%~80%は、OSAを合併していることが分かっています。これらのことから、OSAと高血圧は密接に関係しているといえます。

そして、CPAP(連続陽圧呼吸療法)の使用により、収縮期(血圧が上がる時)と拡張期(血圧が下がる時)の血圧が少し下がることが分かっています。その効果は約5mmHg(血圧の単位)と限定的ではありますが、これにより、心臓の血管に関わる病気を4%~5%、脳卒中を6%~8%減少させる効果があると考えられています。したがって、高血圧の治療には、長時間のCPAP使用が効果的とされています。

CPAPは継続が大切 

目標は「4時間以上の治療を行っている日が全体の日数の70%以上」

睡眠時無呼吸症候群の治療を続け、その効果を最大限に得るためには、治療法をきちんと続けること(アドヒアランス)が重要です。しかし、実際の医療現場でみると、治療を続けている患者さんは5割から8割程度で、治療を中断する人が2割以上いるとのことです。また、「1日のうち4時間以上の治療を行っている日が全体の日数の70%以上」であるという、治療をうまく続けている患者さんは全体の4割程度だと言われています。

特に、CPAP(連続陽圧呼吸療法)という治療を始めて最初の1ヶ月間の治療の続け方が、その後の治療の進行に大きな影響を及ぼすと報告されています。そのため、この初期の段階では、遠隔モニタリングなどの技術を利用して、治療を続ける意欲を保つサポートも重要です。

CPAP継続を困難にする因子

様々な因子がある

CPAP(連続陽圧呼吸療法)の治療を適切に続けられない患者さんには、さまざまな理由があります。そのため、まず最初に、CPAPの設定や患者さんの使用状況を詳しく調べることが必要です。

次に、患者さんから具体的に困っていることを聞き、その原因を探し、解決策を考えます。困っていることには、CPAPの使用による不快感、皮膚や粘膜の痛み、鼻や口の乾燥感、冷たさ、アレルギー症状、眠気の残存などが考えられます。

特に、鼻が詰まって困っている患者さんでは、治療を続けられない率が高いと報告されています。特にアレルギー性鼻炎を合併している場合は、昼間は問題なくても、夜間は鼻呼吸に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。その場合は、加湿器を導入するか、薬物治療を考えることが多いです。

また、CPAPの使用で無呼吸の症状は改善しているけれど、CPAPの使用が違和感で眠れない患者さんには、短時間作用の睡眠薬の併用も考慮されます。
 

CPAP 終了できる?

実際には困難なことが多い

CPAP(連続陽圧呼吸療法)の治療をいつ終えられるのかという質問は、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者さんからよく聞かれます。しかし、CPAPは症状を改善するための治療法であり、病気そのものを治すものではありません。したがって、その治療を終えるかどうかは個々の病状によります。

たとえば、OSAの主な原因が肥満である場合、体重を減らすことで症状が改善される可能性があります。その結果、再評価したときにCPAPの治療を終えたり、口の中に入れる装具(口腔内装具)に切り替えることが可能になるかもしれません。

しかし、若い頃からいびきをかいていて、顎が小さくて呼吸がしにくいという骨格の特徴がある人の場合、ただ体重を減らすだけで症状が改善するのは難しいと考えられます。

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