持続陽圧呼吸(CPAP)

持続陽圧呼吸(CPAP)の進歩

2026.08.07 更新(機器・保険適用基準を2026年時点の情報に改訂)

1981年CPAPという治療法が
初めて報告された
1998年日本で健康保険が
適用された
73万人国内でCPAP治療を
受けている方(2025年時点)
2026年保険適用基準と
継続管理の考え方が改定

SAS(睡眠時無呼吸症候群)という病気は、1976年に最初に報告された当時、治療としては気管を切開するという大掛かりな方法しかありませんでした。しかし、1981年にColin Sullivanという医師が、鼻から空気を送り込んで上気道を内側から広げておく「CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)」が効果的だと発表しました。

それ以来、CPAPはOSA(閉塞性睡眠時無呼吸)の世界標準の治療法となっています。日本でも1998年からCPAP治療に健康保険が適用されるようになりました。対象となるのは、日中の強い眠気や起床時の頭痛といった症状があり、検査で無呼吸・低呼吸の回数(AHI=1時間あたりに呼吸が止まる・浅くなる回数)が一定以上と確認された方です。

【2026年6月から、保険でCPAPを始められる基準が広がりました】

2026年6月の診療報酬改定で、CPAP治療の対象となるAHIの基準が見直されました。以前なら「もう少し様子を見ましょう」となっていた中等症の方も、症状しだいで保険治療の対象になりやすくなっています。

表:2026年6月改定によるCPAP治療の基準と管理の考え方
項目 改定前 改定後(2026年6月~)
通常のAHI基準 AHI 20以上 AHI 15以上
強い自覚症状がある場合 AHI 40以上 AHI 30以上
管理で重視される点 機器を導入したかどうかが中心 実際に治療を継続して使えているか
使用データの確認方法 従来型の管理 通信機能による遠隔モニタリング

※表は左右にスクロールできます。

また、この改定では「機器を導入したか」だけでなく「治療をきちんと続けられているか」が重視されるようになり、通信機能で使用状況を確認する遠隔モニタリングが標準的な管理方法になっています。

CPAP治療を受けている方は年々増えており、2025年時点で国内の治療患者数は約73万人と報告されています。一方で、AHI 15以上と推計される潜在的な患者さんは約900万人ともいわれており、実際に治療につながっている方はまだ一部にすぎません。

そして、CPAPの機械やマスクなどの周辺機器は、約45年の間にさまざまな進歩を遂げてきました。これらの改良は、患者さんが治療を無理なく続けられるように役立っています。このページでは、その進化の歩みをご紹介します。

CPAPの約45年 ― 進化のあゆみ

  • 1976年
    SASが最初に報告される。当時の治療は気管切開のみでした。
  • 1981年
    CPAPが報告される。鼻から空気を送り、上気道を内側から広げる方法です。
  • 1990年
    外付けの加温加湿装置が登場。鼻や喉の乾燥への対策が始まりました。
  • 1994年
    ネーザルピローマスクが開発される。鼻の穴に直接あてる小さなタイプです。
  • 1995年
    加湿装置を内蔵した機種が登場。本体と加湿が一体になりました。
  • 1998年
    日本で健康保険が適用される。治療を受けやすくなりました。
  • 2007年
    自動圧調節型(auto CPAP)が登場。特別な検査をせずに始められるようになりました。
  • 2011年
    加温チューブの技術が開発される。チューブ内の水滴という悩みが改善しました。
  • 2020年代
    小型化・静音化と通信機能。遠隔モニタリングとスマートフォンアプリが一般的になりました。
  • 2026年
    保険適用基準と継続管理の考え方が改定。「続けられているか」が重視されるようになりました。

※年号は本文中で触れている出来事を並べたものです。

持続陽圧呼吸(CPAP)の圧設定と補助機能

CPAPのランプ(ramp)機能、EPR機能

現行の代表的なCPAP機器を比較した表。機種名、加温加湿器、重量、圧設定方式などが機種ごとに整理されている

※表は日本内科学会雑誌(2023年時点)より抜粋。掲載機種は当時のもので、現在は後継機(スリープメイト® 11など)が主流です。

CPAPという治療法では、息をするために送り込む空気の圧力をコントロールします。この圧力の決め方には、「固定圧CPAP」と「自動圧調節型(auto CPAP)」の2つの方式があります。

表:固定圧CPAPと自動圧調節型(auto CPAP)の違い
項目 固定圧CPAP 自動圧調節型(auto CPAP)
圧の動き 寝ている間じゅう一定に保つ 呼吸の状況に合わせて自動的に変わる
圧の決め方 あらかじめ決めた圧を使う 機械内部のセンサーが判断して調整する
事前の検査 一晩かけて睡眠を調べる検査
(CPAPタイトレーション)が必要
特別な検査をせずに始められる
主な利点 適切な圧が実際に確認されている。
圧が一定なので違和感が少ない
リアルタイムに調整するため、
平均すると圧が低めで済む
気になりやすい点 検査のための時間や費用の負担が
生じる可能性がある
圧が変わることで違和感を
覚える方もいる
現在の位置づけ 本文に記載はありません 現在の日本では主流

※表は左右にスクロールできます。

※本文で説明している内容のみを整理したものです。どちらの方式が適しているかは、症状や検査結果をもとに診察時にご相談します。

固定圧CPAPは、寝ている間じゅう一定の圧力を保ち、呼吸に問題が生じないようにします。この方式で適切な圧力を決めるためには、一晩かけて睡眠を調べる特別な検査(CPAPタイトレーション)が必要です。

自動圧調節型(auto CPAP)は、機械内部のセンサーが呼吸の状況を判断し、必要に応じて圧力を自動的に調整する方式で、2007年に登場しました。現在の日本では、この自動圧調節型が主流になっています。

治療を続けやすくするための4つの機能

ランプ(ramp)機能

どんな機能か治療を始めた直後に、圧力を少しずつ上げていきます。

患者さんの利点寝入りばなの圧の強さが和らぎ、CPAPを受け入れやすくなります。

EPR(呼気圧軽減)

どんな機能か息を吐くときに、一時的に圧力を下げます。

患者さんの利点吐きにくさが軽くなり、CPAPを受け入れやすくなります。

遠隔モニタリング

どんな機能か使用時間や無呼吸の残り具合などのデータが、自動的に医療機関へ送られます。

患者さんの利点データにもとづく継続支援が受けられます。2026年の制度改定でも正式に評価されるようになりました。

スマートフォンアプリ

どんな機能かご自身で毎晩の使用状況を確認できます。

患者さんの利点「昨夜は何時間使えたか」「無呼吸がどのくらい減ったか」を見ながら取り組めます。

さらに、CPAP治療をより快適に行うための機能も追加されてきました。これらの機能により、患者さんがCPAP治療を受け入れやすくなる効果が認められています。

また、現行の機種にはワイヤレス通信機能が内蔵されており、遠隔モニタリングが標準になりました。2026年の制度改定でも、こうしたデータに基づく継続支援が正式に評価されるようになっています。

CPAP機器の小型化

携帯型CPAPもある

表:CPAP機器の世代による違い
項目 2000年代初期 2010年代 現在の主力機種 携帯用
本体サイズ 大きさも重さもある据え置き型 大幅に小型化 さらに扱いやすく 手のひらサイズで非常に軽い
代表的な機種 スリープメイト® S6 スリープメイト® S9
REMstar auto System One™ 60
スリープメイト® 11
ドリームステーション® 2
スリープメイト® AirMini
加温加湿器 本文に記載はありません 本文に記載はありません 一体化が進んだ
(スリープメイト® 10・ドリームステーション®の世代から)
本文に記載はありません
静音性 本文に記載はありません 本文に記載はありません 静音化が進んだ 本文に記載はありません
通信機能 本文に記載はありません 本文に記載はありません ワイヤレス通信を内蔵 本文に記載はありません
持ち運び 自宅で使うには大型 本文に記載はありません 本文に記載はありません 出張・旅行先で使える
主な利用場面 自宅での使用 自宅での使用 自宅での日常的な治療 外泊時の治療の継続

※表は左右にスクロールできます。

※具体的な重量や寸法は、記事の元となった資料に記載がないため掲載していません。実際の機種選択は診察時にご相談します。

2000年代初期のCPAP機器(ResMed社のスリープメイト® S6など)は大きさも重さもあり、自宅で使うには大型の装置でした。2010年代に入ると大幅に小型化が進み(スリープメイト® S9、Philips社のREMstar auto System One™ 60など)、さらにスリープメイト® 10やドリームステーション®の世代では、加温加湿器との一体化や静音化も進みました。

現在の主力機種は、その後継にあたる世代です。ResMed社のAirSense™ 11(国内では帝人ファーマ扱いのスリープメイト® 11)は、従来の自動圧調節や呼気圧軽減の機能に加えて、アプリでマスクの装着方法を案内してくれる機能や、体調・使い心地の変化を医療機関に伝えるチェックイン機能などが搭載され、「治療に慣れるまでのつまずき」を減らす工夫が凝らされています。Philips社からも後継機のドリームステーション® 2が提供されています。

【Philips社の旧機種の自主回収について】

Philips社の旧機種(ドリームステーション®など)については、内部の防音用部品の劣化の可能性が指摘され、2021年から世界的な自主回収が行われました。日本国内でも対象機器の改善品への置き換えが進められ、2025年11月に回収は完了しています。現在国内で貸与されているCPAP機器はこの対応を経たものですので、ご安心ください。ご自身の機器について気になる点がある方は、診察の際にお気軽にお尋ねください。

また、持ち運びやすいように設計された小型のCPAP機器も使えるようになっています。ResMed社のスリープメイト® AirMiniなどは手のひらサイズで非常に軽く、出張や旅行の多い方でも外泊先でCPAP治療を続けられます。「旅行のたびに治療を中断していた」という方のニーズにも応えられるようになりました。

CPAP マスク

CPAP継続のため沢山の種類がある

現行の代表的なCPAP用マスクを比較した表。鼻マスク、口鼻マスク、ネーザルピローマスクの形状や特徴が整理されている

※表は日本内科学会雑誌(2023年時点)より抜粋。マスクの基本的な分類は現在も同様です。

CPAP治療では専用のマスクを使用します。一般的には鼻マスクが最も多く使われていますが、口鼻マスク(フルフェイスマスク)やネーザルピローマスクといった種類もあります。

表:CPAPマスク3種類の比較
項目 鼻マスク 口鼻マスク(フルフェイス) ネーザルピローマスク
覆う範囲 鼻の周囲 鼻と口の全体 鼻の穴に直接あてる
向いているケース 最も多く使われている標準的なタイプ 鼻マスクに補助具を追加しても
口漏れが解決しない場合
顔の大部分を覆いたくない場合
主な利点 鼻の周囲のみを覆う。
額あてつき・額あてなしなど種類が選べる
口を開けたときの空気漏れを防げる 装着したまま眼鏡をかけられる
気になりやすい点 個人差があります(診察時に調整) 個人差があります(診察時に調整) 個人差があります(診察時に調整)
眼鏡との相性 本文に記載はありません 本文に記載はありません 装着したまま眼鏡をかけられる
口漏れへの対応 補助具の追加で対応。
解決しなければ口鼻マスクへ
口漏れそのものを防ぐタイプ 本文に記載はありません

※表は左右にスクロールできます。

※記事の元となった資料に記載がない項目は、推測せず「本文に記載はありません」「診察時に調整」としています。

マスクごとに、肌に触れる部分の素材や固定の方法が異なり、寝返りによるずれにくさや、着け心地の好みに合わせて選択します。鼻マスクには、鼻の周囲を覆って額あてつきのバンドで固定するもの、額あてなしの小型のものなどがあります。

口鼻マスク(フルフェイスマスク)は、鼻と口の全体を覆うタイプで、口を開けたときの空気漏れを防ぎます。ネーザルピローマスクは、鼻の穴に直接あてる小さなタイプで、1994年に開発されました。顔の大部分を覆わないため、装着したまま眼鏡をかけることもできます。

マスクの困りごとは、調整で解決できることが多くあります

困りごとが起きたら
違和感/皮膚に痕や傷ができる/かぶれ/空気漏れによる目の乾燥・結膜炎
↓
まず確認
マスクのサイズと、あて方(装着方法)を見直します
↓
次に検討
マスクの種類そのものを変更します
↓
あわせて調整
圧の設定や加湿の状態も見直します
↓
治療を続けやすくする
我慢して使わなくなってしまうのが、一番もったいない選択です

マスクを長時間使用すると、肌への圧迫で皮膚に痕や傷ができたり、接触部分にかぶれ(皮膚炎)が起こることがあります。また、マスクから漏れた空気が目にあたって乾燥や結膜炎の原因になることもあります。

こうした問題が起こった場合は、マスクのサイズや種類の変更、あて方の調整などの対策を行いますので、我慢せずにご相談ください。

【ペースメーカーなどをお使いの方へ】

ヘッドギアの留め具に磁石(マグネット)を使用しているマスクもあります。ペースメーカーや植込み型除細動器など、磁気の影響を受ける医療機器を体内にお持ちの方(同居のご家族を含む)は、磁石を使わないタイプへの変更が推奨されていますので、該当する方は必ずお知らせください。

CPAPの加湿機能と、この記事のまとめ

湿り気を届ける工夫と、続けるために

CPAP治療を行うと、鼻の症状や喉の乾燥が起こることがあります。装置から出る空気を温めて湿らせることで、これらの症状は軽減できます。

  • 1990年
    外付けの加温加湿装置
    既存の機械に取り付けて使うタイプが登場しました。
  • 1995年
    加湿装置の内蔵
    加湿装置を内蔵した機種が使われるようになりました。
  • 2011年
    加温チューブ
    チューブ自体を加熱して水滴を減らす技術が開発され、チューブやマスク内部に水滴がたまる欠点が改善しました。
  • 現在
    自動での加湿量調整
    季節や室温に応じて加湿量を自動調整する機能も一般的になりました。

このように、CPAPの約45年の歩みは、「効果」はもちろんのこと、「いかに快適に、無理なく続けられるか」を追求してきた歴史でもあります。

CPAPは使ってこそ効果が出る治療です。装着感や乾燥、音など、続けるうえでの困りごとは機器やマスクの工夫で解決できることが多くありますので、あきらめる前にぜひご相談ください。

この記事の要点

  1. CPAPは約45年間、改良され続けてきた治療法です。1981年の報告から、小型化・加湿・通信機能へと進化してきました。
  2. 現在は自動圧調節型(auto CPAP)が主流です。特別な検査をせずに始められるようになりました。
  3. マスクは複数の種類から選べます。鼻マスク、口鼻マスク、ネーザルピローマスクがあり、着け心地に合わせて選択します。
  4. 困りごとは調整で改善できることが多くあります。マスクのサイズや種類、圧、加湿を見直すことで、続けやすくなります。

レーザー治療でCPAPをやめられるのか、気になる方へ

「喉のレーザー治療を受ければCPAPを卒業できるのでは」というご相談をよくいただきます。いびきの改善と睡眠時無呼吸の改善は分けて評価する必要があり、詳しくはいびきのレーザー治療でCPAPはやめられる?効果と限界を内科医がやさしく解説で整理しています。

睡眠時無呼吸症候群の症状・検査・治療の全体像については、「いびき外来 睡眠時無呼吸症候群の検査」もあわせてご覧ください。

この記事の監修
かとう内科(愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310)
院長 加藤丈陽
日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医・指導医/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医

この記事を最後に更新した日:2026年8月7日

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