閉塞性睡眠時無呼吸とは

4つの原因が知られている

閉塞性睡眠時無呼吸とは、睡眠中に繰り返し呼吸が停止したり、減少したりする状態を指します。この原因は、主に上気道が狭くなることです。この結果、体内の酸素レベルが時折下がり(間歇的低酸素血症)、二酸化炭素(CO2)のレベルが上がる(高二酸化炭素血症)ことがあります。また、これによって睡眠が何度も中断され、その結果、昼間の眠気、心臓や血管の病気、脳卒中、認知能力の低下などの問題が引き起こされる可能性があります。閉塞性睡眠時無呼吸は、上気道の形や構造(解剖学的な因子)だけでなく、他のいくつかの要因(非解剖学的な因子)も関係していると考えられています。その中には、特定の4つの要素や特性が含まれており、これらが病状の主な原因となっていると理解されています。

原因①解剖学的上気道の狭小化

「上気道」は、鼻の奥から喉の上部までの領域を指します。これは、前後が硬い管で挟まれた、柔らかい管(喉の部分)のような構造になっています。肥満や小顔症などの顔の骨格の問題、または扁桃腺の肥大などにより、この上気道が狭くなることがあります。

太っていると、内臓周りの脂肪による圧力で肺の空気の量が減少します。その結果、上気道の後ろ側への引っ張り力が弱まり、喉の部分が閉塞しやすくなります。

また、心臓不全や末期腎臓病などの体液が関わる疾患では、横になることで体内の水分が下半身から上半身に移動する現象(体液移動)が起こります。この結果、喉の部分が狭くなってしまいます。

原因②上気道開大筋の反応性

上気道を開いている筋肉は、呼吸の中枢からの指示で動き、上気道が閉じるのを防ぐ役割を果たしています。たとえば、上気道を開く筋肉である「オトガイ舌筋」は、吸気(息を吸うこと)の時に活動します。また、気道内の特殊な感覚器からの反射反応も、上気道が閉塞するのを防いでいます。

睡眠中は、目覚めているときに比べて、これらの筋肉の活動や反射が弱まり、上気道が閉塞しやすくなります。しかし、体内の二酸化炭素のレベルが上がったり、呼吸の際に空気を吸引する力が強ければ、これらの筋肉の活動や反射は維持されます。

呼吸をする努力と、上気道を開く筋肉の活動との関係は、「UAR(upper airway response)」という反応性として理解されています。これは、吸気の力が強まるにつれて、上気道を開く筋肉の活動が増えることを意味します。反応が良好な場合、上気道を開く筋肉は自身の活動を調整して、上気道を開いた状態に保てますが悪化すると閉塞しやすくなります。

原因③呼吸の不安定性

呼吸の調節も、閉塞性睡眠時無呼吸の重要な要因です。呼吸は、覚醒時には行動調節、神経調節、化学調節という3つのシステムによって中枢部分で制御されています。睡眠中、特に深い睡眠(ノンレム睡眠)では、化学的な調節が主になり、体内の二酸化炭素(CO2)の量を一定に保つように調節されます。

普通、睡眠中は覚醒時の刺激がなくなるため、二酸化炭素の量は覚醒時よりも少し高いレベルで保たれます。もし呼吸が過度になり、二酸化炭素の量が減ってしまうと、次の呼吸は抑制され、二酸化炭素の量を元に戻すために調整が行われます。逆に、呼吸が少なく、二酸化炭素の量が増えてしまうと、次の呼吸の力は増し、二酸化炭素の量を元に戻そうとします。その結果、呼吸ができない状態が続くと、呼吸の力はどんどん強くなってしまいます。

上気道が開いている場合、呼吸の阻害量に対する反応の量が生じ、これは「ループ・ゲイン」という指標で表されます。このループ・ゲインが高まると、呼吸の反応の変動が大きくなり、それが二酸化炭素の量の変化につながります。つまり、二酸化炭素の量の変化に対する呼吸の変動が大きい場合、または、呼吸の変動に対する二酸化炭素の量の変動が大きい場合(これは化学的感受性が高まることに相当します)では、呼吸が不安定になりやすいです。

原因④覚醒しやすさ

覚醒とは、音や光、振動、痛みなどによって起こる状態です。また、無呼吸や低呼吸(呼吸が浅い状態)に関連しても覚醒が起こることがあります。酸素が少ない状態(低酸素血症)や二酸化炭素が多い状態(高CO2血症)になると、呼吸をするための努力が増大し、その結果、食道内の圧力が大きくなります。しかし、これが一定の限界を超えると、覚醒が起こることがわかっています。この限界を「覚醒閾値」と呼びます。

以前は、無呼吸や低呼吸の状態が終わるときに覚醒が起こることは、睡眠時無呼吸の病状の一部として当然と考えられていました。しかし、上述したように、上気道を開く筋肉が活動して、覚醒閾値に達する前に十分に調整すると、上気道が再び開くことがわかっています。

つまり、覚醒を引き起こす限界と上気道を開く筋肉の反応の関係によって、覚醒が起こるかどうかが決まります。具体的には、上気道を開く筋肉が活動して調整するスピードが早ければ、覚醒せずに上気道が再び開きます。一方、上気道を開く筋肉の反応が遅ければ、覚醒が起こり、それによって上気道が再び開くことになります。

覚醒閾値は個々の人や睡眠の段階によって変わり、覚醒しやすい(覚醒閾値が低い)人や、逆に覚醒しにくい(覚醒閾値が高い)人がいます。覚醒が起こるのは、呼吸の問題が続くことで酸素が足りなくなったり、二酸化炭素が増えすぎたりするのを防ぐための反応の一つです。しかし、覚醒しやすい(覚醒閾値が低い)人の場合、覚醒によって一時的に呼吸が深くなるため、呼吸が不安定になることがあります。

これにより、上気道を開く筋肉の反応と組み合わさり、二酸化炭素の量が大きく変動しやすくなることがあります。その結果、無呼吸(呼吸が止まる状態)や低呼吸(呼吸が浅くなる状態)を引き起こしやすくなる可能性があります。

まとめ

閉塞性睡眠時無呼吸は、4つの生理的特性がさまざまな組み合わせで働くことで生じます.
解剖学的な要因は非常に影響力が強いですが、他の非解剖学的な要素も関係しています。それらは単独または複数組み合わさって、閉塞性睡眠時無呼吸を引き起こします。

閉塞性睡眠時無呼吸の重度を評価するために、無呼吸低呼吸指数(AHI)が用いられます。しかし、これらの多様な病状や病状の進行を評価するには十分でないと考えられています。

最近では、呼吸の問題の持続時間、最低酸素飽和度、周期性四肢運動指数などの他の睡眠検査(PSG)指標の組み合わせ、あるいは低酸素血症の範囲を示す新しい指標が、AHIよりも病状の進行をよく反映するとの報告があり、これらが臨床での使用に期待されています。

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