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マンジャロ・GLP-1で抜け毛が増える?急な減量と休止期脱毛を内科医が解説

マンジャロ・GLP-1と抜け毛の因果関係は確定できていない

2026.08.28 更新

糖尿病や肥満症の治療でGLP-1関連の注射を始めて数か月。血糖や体重は良い方向に動いているのに、シャンプーのたびに抜け毛が気になる──そんな不安をもって検索された方へ。

マンジャロ、ウゴービ、オゼンピック、ゼップバウンド。商品名は違っても「GLP-1で抜け毛が増えるのか」という心配は共通しています。2026年、この関係を調べた大規模な観察研究がBMJに発表されました。この記事では、その研究を「怖がりすぎず、軽く見すぎず」正確に読み解き、抜け毛が増えたときに実際に何をすればよいかを、内科の立場から整理します。

まず結論
  1. 2026年の観察研究では、GLP-1受容体作動薬を開始した2型糖尿病の患者さんに、SGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬を開始した患者さんより脱毛症の記録がやや多いという関連がみられました。
  2. 相対的には37%または68%高い関連でしたが、絶対的な発生率は1,000人年あたり約4~7件と低いものでした。「68%の人が抜ける」という意味ではありません。
  3. 観察研究であり、薬が毛根を直接傷つけたと証明したものではありません。急速な減量、食事量の低下、鉄・亜鉛の不足、身体的ストレスによる休止期脱毛などが関係している可能性があります。
  4. 抜け毛が増えても、自己判断でマンジャロ・ウゴービ・オゼンピックなどを中止しないでください。開始・増量の時期、体重の減り方、食事量、抜け方、他の病気や薬を主治医と確認することが先です。

1.GLP-1関連治療と抜け毛について、何が分かったのか

研究を行ったのは米国のPenn Medicineのグループで、2026年にBMJ(英国医師会雑誌)に掲載されました(Tangら)。無作為化比較試験ではなく、電子カルテを使った観察研究です。ただし、理想的な比較試験の条件にできるだけ近づける「ターゲット試験エミュレーション」という手法が使われており、観察研究の中では信頼性を高める工夫がなされています。2019年1月から2024年9月までの診療データで、対象は成人の2型糖尿病患者さんです。

GLP-1受容体作動薬を新たに始めた人と、同じ時期に別の糖尿病薬(SGLT2阻害薬、またはDPP-4阻害薬)を新たに始めた人とで、その後に脱毛症の診断が記録された割合を比べました。

比較 GLP-1群 比較薬群 相対的な関連 患者さん向けの読み方
SGLT2阻害薬との比較
(12,004人 対 15,221人)
6.91/1,000人年 5.04/1,000人年 HR 1.37
(37%高い)
絶対差は約1.9件/1,000人年
DPP-4阻害薬との比較
(11,964人 対 11,238人)
6.53/1,000人年 3.89/1,000人年 HR 1.68
(68%高い)
絶対差は約2.6件/1,000人年

※発生率は統計的な調整後の値。HR=ハザード比。
・2つの比較は対象集団が異なるため、行どうしを直接比べないでください。
・「1,000人年」は、1,000人を1年間追跡した量に相当する統計上の単位です。
・相対リスクの増加と、実際に起こる人数の差は、分けて読む必要があります。

「相対リスク」と「絶対リスク」を分けて見る

相対的な見方(比較薬との比)1.37倍/1.68倍比較薬を始めた人に比べて、脱毛症の記録が相対的にこれだけ多かった、という数字です。
絶対的な見方(実際に起こった数)約4~7件/1,000人年1,000人を1年間追跡して、脱毛症と記録された人が数人程度、という水準です。差は1,000人年あたり2~3件でした。

同じ結果でも、「68%増」と聞くと大きく感じ、「1,000人年あたり約2.6件の差」と聞くと小さく感じます。どちらも正しい数字ですが、ご自身にとって何が起こりやすいかを考えるときは、絶対的な見方のほうが役に立ちます。

どんな種類の脱毛だったのか

追加の解析では、この関連は主に非瘢痕性脱毛(毛包が保たれているタイプの脱毛)でみられたと説明されています。非瘢痕性脱毛は毛の生える組織が残っており、一般に回復の余地があるタイプです。ただし、この研究は一人ひとりの患者さんが実際に回復したかどうかまでは十分に評価していません。

この研究の限界

  • 観察研究なので、因果関係を確定できません。
  • GLP-1群と比較薬群は、年齢、BMI、併存する病気などがもともと違い、統計的に調整しても、測定されていない要因の影響が残り得ます。
  • 対象は成人の2型糖尿病患者であり、肥満症だけを理由にGLP-1関連薬を使用している方へ、同じ発生率をそのまま当てはめることはできません。
  • 脱毛の重症度、範囲、続いた期間、薬を中止したあとの回復は、詳しく評価されていません。
  • 体重減少の速さ、食事の摂取量、鉄や亜鉛の状態の影響を十分に切り分けられていません。
  • 薬剤ごと、用量ごとの違いを安易に断定することはできません。

2.「マンジャロで脱毛する」とは言い切れない理由

ここで薬の整理をしておきます。

  • マンジャロ/ゼップバウンドの成分はチルゼパチドで、GIPとGLP-1の2つの受容体に働く「GIP/GLP-1受容体作動薬」です。マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症の薬で、同じ成分でも適応が違います。
  • ウゴービ/オゼンピックの成分はセマグルチドで、「GLP-1受容体作動薬」です。ウゴービは肥満症、オゼンピックは2型糖尿病の薬です。

今回のBMJ研究は、「GLP-1受容体作動薬」という薬剤群(クラス)を対象にした観察研究です。研究に含まれた個々の薬剤の内訳は論文本文で確認する必要があり、特定の商品名について「この薬は何%」といった薬剤別の結論は、確認できないものは書けません。「クラス全体としての関連」と「特定の商品が直接起こす副作用」は同じではない、という点を押さえておいてください。薬の違いについては、ウゴービ・ゼップバウンド・マンジャロの違いで整理しています。

正確な言い方をすると

「GLP-1関連治療と、臨床記録上の非瘢痕性脱毛との間に、小さい絶対リスクの関連が報告された」というのが、この研究から言えることです。薬の直接作用、急な減量、栄養、ホルモン変化などの寄与はまだ分かれておらず、治療の利益と小さな潜在リスクを一人ひとりについて考える、というのが現実的な受け止め方です。

3.急な減量が抜け毛を増やす仕組み ― 休止期脱毛

髪には、伸びる時期(成長期)、移行期、休む時期(休止期)という周期があり、休止期に入った毛は数か月後に自然に抜けて、次の毛に置き換わります。

休止期脱毛は、病気、発熱、手術、出産、強いストレス、著しい体重減少、極端な食事制限、新しく始めた薬などをきっかけに、通常より多くの毛が一斉に休止期へ移ってしまう状態です(英国皮膚科医協会の患者向け資料より)。特徴は次のとおりです。

  • きっかけから約3か月後に、急に頭全体の抜け毛が増えることがある
  • 円形ではなく、頭部全体からびまん性に(広い範囲で均等に)抜けることが多い
  • 脱毛が3~6か月続いたあと、新しい毛が生え始めることが多い。ただし、元のボリュームに戻るまでには、さらに時間がかかる
  • 鉄不足や甲状腺の病気などがあれば、その原因への対応が必要
  • もともとAGA(男性型脱毛症)や女性型脱毛症がある人に休止期脱毛が重なると、生え際や頭頂部の薄さが急に目立つことがある
GLP-1関連治療の開始・増量

↓

食欲低下/摂取量低下/急速な体重減少

+

病気・ストレス・栄養不足など

↓

毛周期が休止期へ移る可能性

↓

約2~3か月後に頭全体の抜け毛が増えることがある

※概念図であり、個人の原因を特定する図ではありません。薬の直接作用は確定していません。

4.AGA、休止期脱毛、皮膚の病気を見分けるヒント

タイプ 抜け方 経過 主な背景 相談先
男性AGA/女性型脱毛症 男性は生え際・頭頂部、女性は分け目・頭頂部 徐々に進行 遺伝、ホルモン、加齢 内科または皮膚科
休止期脱毛 頭部全体から急に抜ける 誘因の約2~3か月後 減量、発熱、手術、出産、ストレス、食事制限、薬 内科で背景を評価+必要時に皮膚科
円形脱毛症・炎症性の頭皮疾患など 円形、まだら、赤み、痛み、かさぶたなど 急速なことがある 自己免疫、皮膚の病気など 皮膚科を優先

※AGAと休止期脱毛は同時に存在し得ます。見た目だけでは確定診断できない場合があります。AGAと糖尿病・高血圧・脂質異常症の関係は、薄毛と生活習慣病の関係で解説しています。

5.抜け毛が増えたときに確認すること ― 診察前のチェックリスト

次のことを整理しておくと、診察で原因を絞り込みやすくなります。

  • 薬を始めた日、増量した日
  • 抜け毛に気づいた日
  • 3か月前からの体重の変化
  • 1か月あたり何kg減ったか
  • 食事量、たんぱく質の摂取、極端な糖質制限・脂質制限の有無
  • 発熱、感染症、手術、入院、出産、強いストレスの有無
  • 月経量の変化、妊娠・出産、閉経
  • 新しく始めた薬、サプリメント
  • 抜け方:頭全体か、生え際・頭頂部か、円形か
  • 頭皮の赤み、痛み、湿疹、かさぶた
  • 眉毛や体毛の脱毛

なお、抜け毛の本数を毎日数え続けることはお勧めしません。数字に振り回されて不安が強くなりがちです。経過を残したい場合は、同じ照明・同じ角度で、月に1回程度、分け目や頭頂部の写真を撮っておくくらいで十分です。

6.どんな検査をするのか

全員に一律で多くの採血を勧めるものではありません。抜け方、性別、症状、健診結果、体重の変化に応じて、必要な項目を選びます。

  • 血算(貧血の有無)
  • フェリチン(貯蔵鉄)
  • TSH、FT4(甲状腺機能)
  • HbA1c、血糖
  • 肝機能、腎機能
  • 必要に応じて脂質

検査で大切なこと

  • 最近の健診結果があればお持ちください。重複する検査を避けられます。
  • 鉄や亜鉛の不足を決めつけて、サプリメントを大量に摂ることは避けてください。亜鉛は食事の状況や症状から必要性を判断するもので、漫然と測定・補充するものではありません。
  • 異常があれば、その原因に応じて治療します。
  • 採血が正常でも、AGAや休止期脱毛を否定できるわけではありません。

7.薬は中止すべきか ― いちばん大切なところ

自己判断で中止しないでください

GLP-1関連薬には、血糖や体重を改善する治療上の利益があり、一部の薬剤では心血管・腎臓への利益も示されています。抜け毛という小さな潜在リスクだけを理由に一律に中止することは、適切ではありません。

そのうえで、次のような場合は主治医と相談して調整を検討します。

  • 体重の減り方が速すぎる、食事がほとんど取れない、嘔吐が続く:用量や増量の間隔を見直す余地があります
  • 栄養を確保しながら、緩やかに減量する方針に切り替える
  • 斑状の脱毛、頭皮の炎症、急激な悪化、眉毛や体毛の脱毛がある:薬の調整だけで済ませず、皮膚科での評価を優先します

「減量のペースは月○kg以下にすべき」といった全員共通の数字を、根拠なく決めることはできません。体格、持病、食事内容によって適切なペースは変わりますので、診察で個別に考えます。減量中に骨や筋肉を守る考え方は、GLP-1治療中の骨と筋肉を守るには?もあわせてご覧ください。

8.かとう内科でできること

当院(内科)でできること

  • GLP-1関連治療の開始・増量時期、体重の推移、食事量、副作用の確認
  • 糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症などの全身評価
  • 必要に応じた採血:血算、フェリチン、甲状腺機能など
  • 典型的な男性AGAが疑われる場合のデュタステリド治療(詳しくはこちら)
  • 男性用ミノキシジル5%外用薬「ボズレーMX5」(詳しくはこちら)
  • 女性用ミノキシジル1%外用薬「ボズレーMX1 Women」(詳しくはこちら)

2型糖尿病の治療としてのGLP-1関連薬については2型糖尿病の薬物療法、肥満症の治療については肥満外来(GLP-1)をご覧ください。

当院の自費価格(AGA治療・発毛剤)

  • デュタステリド錠0.5mgZA 30日分:6,600円(税込。薬を処方する場合、診察料は別途いただきません)
  • ボズレーMX5 60mL(約1か月分):5,500円(税込。薬を購入する場合、診察料は別途いただきません)
  • ボズレーMX1 Women 62mL(約1か月分):4,400円(税込。薬を購入する場合、診察料は別途いただきません)

AGA治療・発毛剤は自由診療(自費)です。初診は院長の診察日に行っていますので、ご来院前にお電話(0898-23-2310)で診察日をご確認ください。

当院では行わないこと

  • ミノキシジルの飲み薬(いわゆるミノタブ)は処方しません。日本ではAGA治療薬として承認されておらず、日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインで推奨度D(行うべきではない)とされているためです。
  • 頭皮のダーモスコピー、毛髪顕微鏡検査、皮膚生検などの皮膚科専門検査は行っていません。
  • 円形脱毛症、瘢痕性脱毛、強い頭皮の炎症が疑われる場合は、皮膚科へご紹介します。

9.皮膚科の受診を優先するサイン

  • 円形、まだら状の脱毛
  • 短期間に急激に進行している
  • 頭皮の強い赤み、痛み、湿疹、かさぶた、膿
  • 毛穴が見えない光沢のある部分や瘢痕(傷あと)がある
  • 眉毛や体毛も抜けている
  • お子さんの脱毛
  • 6か月以上続いている、原因が分からない
  • 外用薬を使って悪化した

当院は皮膚科ではありません。減量や薬の背景を内科として評価し、皮膚の病気が疑われれば皮膚科へ確実におつなぎします。

10.よくある質問

マンジャロで抜け毛は何%起こりますか?
BMJ研究は、個別の商品の発症率を確定する試験ではありません。GLP-1受容体作動薬というクラス全体で、脱毛症の記録がGLP-1群で1,000人年あたり約6~7件、比較薬群で約4~5件だった、という観察研究として理解してください。
68%の人が抜けるという意味ですか?
違います。比較薬(DPP-4阻害薬)を始めた人より相対的に68%高い関連があった、という意味で、実際の発生率は1,000人年あたり数件と低いものでした。
抜け毛が増えたら薬をやめるべきですか?
自己判断で中止しないでください。薬の利益、体重減少の速さ、栄養状態、脱毛の重症度を、主治医と一緒に評価したうえで方針を決めます。
何か月後に抜け始めますか?
休止期脱毛であれば、きっかけから約2~3か月後が典型です。ただし個人差があり、時期だけで薬との因果関係を断定することはできません。
元に戻りますか?
休止期脱毛や非瘢痕性脱毛は回復の余地があるタイプです。ただしBMJ研究は回復性を十分に評価していません。AGAが併存している場合は、そちらに対する別の治療が必要なことがあります。
鉄や亜鉛のサプリを飲めばよいですか?
不足を確認せずに大量に摂ることはお勧めしません。食事の状況と検査結果を踏まえて判断します。
ミノキシジルを使ってよいですか?
まず脱毛の種類を確認してからです。男性用5%と女性用1%は対象が異なります。円形・急激・炎症性の脱毛に、自己判断で使わないでください。
ミノキシジルの飲み薬は処方しますか?
当院では処方しません。日本ではAGA治療薬として未承認で、日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインで推奨度D(行うべきではない)とされています。
参考資料
1.Tang H, et al. Risk of hair loss associated with glucagon-like peptide-1 receptor agonists in adults with type 2 diabetes: target trial emulation. BMJ. 2026;394:e100077. DOI: 10.1136/bmj-2026-100077(BMJ)
2.British Association of Dermatologists. Telogen effluvium. Patient Information Leaflet. Updated October 2025(bad.org.uk)
3.日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(PDF)
4.デュタステリド錠0.5mgZA「明治」添付文書/ボズレーMX5・ボズレーMX1 Women 添付文書・公式資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。GLP-1関連薬の利益とリスクは一人ひとり異なります。自己判断で開始・中止・減量・増量しないでください。脱毛には複数の原因があり、急激な脱毛、斑状の脱毛、炎症を伴う脱毛は皮膚科での評価が必要なことがあります。AGA治療・発毛剤は自由診療です。

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