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  • インフルエンザ2026-2027|ワクチン・治療薬・解熱剤を専門医が解説|今治市 かとう内科

インフルエンザはいつ感染?――うがいをしても、気付いた時にはもう侵入しています

潜伏期間1~2日、ワクチンはいつ打つ?フルミスト・治療薬・解熱剤・異常行動まで

2026.08.05 更新

「どこでもらってきたのか、まったく心当たりがないんです」

インフルエンザで受診された方から、毎年必ずといっていいほど聞く言葉です。手洗いもうがいもしていた、人混みも避けていた、それなのに、と。

ここには、インフルエンザというウイルスの性質と、私たちがふだん「予防」だと思っている行動との間の、小さなずれが隠れています。今回はそのずれを出発点に、ワクチンの選び方、治療薬の考え方、そしてお子さんの見守り方まで、診察室でお話ししている内容をまとめておきます。

いつうつったのか分からないのは、珍しいことではありません

まず申し上げたいのは、感染した場面を特定できないのは、まったく珍しいことではないということです。ご自身の不注意を探す必要はありません。

インフルエンザがうつる経路は3つあります。咳やくしゃみ、会話で飛ぶ飛沫。より小さく、しばらく空気中を漂うエアロゾル。そして手すりやドアノブなどを介した接触感染です。

このうちエアロゾルは、目に見えず、相手が咳をしていなくても発生します。換気の悪い部屋で同じ空気を共有していれば、それだけで曝露は成立します。潜伏期は1~2日と短いため、思い当たる場面を探そうとすると、ちょうど記憶があいまいな範囲に入ってしまう。「気付いた時には、すでに侵入している」のがこのウイルスです。

「うがいをしていたのに、なぜ感染したのでしょう」

診察室でよく聞かれる疑問:帰宅後は必ずうがいをしていました。それでもかかるものですか。

かかります。理由は、ウイルスが粘膜に付いてから細胞の中に入るまでの時間にあります。

インフルエンザウイルスは、鼻や喉の粘膜に到達すると、本人が何かを感じるより前に、細胞の内側へ入り込みます。いったん細胞内に入ってしまえば、そこはうがい薬も水も届かない場所です。帰宅後のうがいで、すでに始まった感染をなかったことにするのは、残念ながら難しいのです。

誤解しないでいただきたい点

うがいが無意味だと申し上げているのではありません。喉の乾燥や不快感をやわらげる意味はありますし、習慣として続けていただいて構いません。ただ、うがいをインフルエンザ対策の主役に据えてしまうと、守られていない部分が大きく残ります。そこをお伝えしたいのです。

外側の対策と、内側の備えは役割が違います

ここは患者さんにぜひ知っておいていただきたいところです。感染対策は、性質の違う2種類に分けて考えると整理がつきます。

種類 具体的な行動 何をしているか
外側の対策 マスク、換気、手洗い、手指消毒、人混みを避ける ウイルスに出会う確率を下げる
内側の備え ワクチン接種 出会ってしまった後に身体が対応できるようにしておく

マスク、換気、手洗いは確かに有効です。とくに手洗いとアルコール手指消毒は、インフルエンザウイルスに対してしっかり効きます。しかしこれらはすべて出会う確率を下げる外側の対策であって、確率をゼロにするものではありません。

仕事があり、学校があり、家族がいて、買い物にも行く。人と接して生活する以上、ウイルスとの出会いを完全にゼロにすることはできません。だからこそ、出会った後に備えておく手段が必要になります。

感染する前から身体の内側に準備しておける、実質的な防御がワクチンです。私が特に大切だと考えているのは、この役割分担です。インフルエンザ対策の主役は、うがいではなくワクチンだと、当院でははっきりお伝えしています。

今、流行しているウイルスと、変わってきた流行の時期

ヒトの間で流行しているのは、現在3種類です。A型のH3N2(A香港型)とH1N1pdm09、そしてB型のビクトリア系統。B型にはかつて山形系統もありましたが、世界的に検出されなくなりました。ワクチンが4価から3価に切り替わったのは、この現実に合わせたためです。

そして、流行する時期そのものが変わってきました。以前は12月から1月にA型、2月からB型というのが定番でしたが、近年は立ち上がりが早まっています。コロナ禍の数年間でインフルエンザがほとんど流行せず、社会全体の免疫が薄まったこと、人の移動が戻ったことなど、複数の要因が重なっていると考えられます。

当院からの補足:昨シーズン、愛媛県では山が2つ来ました

2025年第50週にA型でピーク(定点当たり55.05人)を迎え、いったん収まったように見えたあと、2026年第6週にB型で第二のピーク(同61.62人)が訪れ、こちらがシーズン最多となりました。

診察室でも、年明けに「インフルエンザはもう終わったと思っていました」というお声を何度もいただきました。A型の波が引いても、シーズンは終わっていません。年明け以降のB型は、今シーズンも念頭に置いておいてください。

「ただの風邪だと思っていました」と言われることがあります

インフルエンザの特徴は、全身症状が先に、強く出ることです。高熱、頭痛、腰痛、そして起き上がるのもつらいほどの倦怠感。咳や鼻水といった風邪らしい症状は、むしろ熱が下がってくる頃から目立ってきます。

「急に、ガクンと来た」という始まり方をしたら、早めにご相談ください。抗インフルエンザ薬は、発症からの時間が早いほど効果が期待できます。

注射のワクチン ── 長く使われてきたという安心

実は、現在の注射ワクチンの基本的な製造方法は、1958年頃から長く使われてきたものです。孵化鶏卵でウイルスを増やし、感染防御に関わるHA(ヘムアグルチニン)という部分を取り出して精製します。毎年変わるのは主に使用するウイルス株で、製造の土台そのものは驚くほど長く受け継がれています。

これは裏を返せば、長期間にわたって世界中で使われ、安全性と有効性の蓄積があるということでもあります。ウイルスそのものが体内で増えることはないため「不活化ワクチン」と呼ばれ、妊娠中の方にも接種できます。

当院での受付対象

国内では生後6か月から接種できますが、当院では注射のインフルエンザワクチンは6歳以上の方を対象としています。6歳未満のお子さんは、かかりつけの小児科でご相談ください。

接種回数は、13歳未満が2回、13歳以上が1回です。

「50%しか効かないと聞きました」

診察室でよく聞かれる疑問:ワクチンを打っても半分しか効かないなら、意味がないのでは。

この50%という数字は、発病そのものを防ぐ確率です。ここが誤解されやすいところで、ワクチンの本来の主眼は別のところにあります。

ワクチンの価値が特に表れるのは、感染や発症を完全には防げなかった場合にも、重症化・入院・死亡のリスクを下げてくれるところです。肺炎を起こさずに済む、入院せずに済む、持病が悪化せずに済む。糖尿病や心臓・肺の病気をお持ちの方、ご高齢の方ほど、この重症化予防の恩恵は大きくなります。

数字を冷静に見ると、「発病を半分に減らし、かかったときの重さも減らす」というのは、外側の対策では到底届かない水準です。

フルミストという選択肢 ── 魅力と、正直な数字

2024年から、鼻に噴霧するタイプのワクチン(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン、フルミスト)が国内で使えるようになりました。当院でも2歳以上19歳未満の方を対象に扱っています。

魅力は明確です。痛くない。1回で済む。注射を怖がるお子さんにとっても、押さえつける役をしなくて済むご家族にとっても、これは小さな違いではありません。

なぜ生きたウイルスなのに、病気にならないのか

このワクチンの本体は、生きたインフルエンザウイルスです。ただし温度感受性株という特別なもので、37度前後の温度では増殖しにくい性質があります。鼻の中は体温より温度が低いためウイルスは増え、免疫がつきます。一方、気管や気管支、肺といった温度の高い場所では増えにくい ── この温度差が、設計上の安全弁になっています。

ここは一歩踏み込んで考えます

便利さと効果は、別の問題です

フルミストの国内第III相試験(プラセボ対照)では、2~6歳での発症予防効果は21.6%でした。試験時に流行していたのがA香港型(H3N2)だったという事情はありますが、期待された水準に届いた数字とは言えません。

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。この試験は偽薬との比較であり、注射のワクチンと直接比べたものではありません。「フルミストは注射より効かない」と数字を並べて言い切ることはできません。比較していないものを比較したように語るのは、正確ではないからです。

それでも、低年齢のお子さんでどの程度の効果が得られるのかは、冷静に見ていく必要があると考えています。低年齢はもともと入院しやすく、インフルエンザ脳症のリスクも意識される年齢層で、本来もっとも効果を期待したいところだからです。

痛くないことと、よく効くことは同じではありません。当院では、どちらが正解とは申し上げず、お子さんの年齢、持病の有無、注射への抵抗の強さ、ご家庭の状況をうかがったうえで、一緒に決めています。

医学的にはここに注意が必要です

主な副反応は鼻汁・鼻づまり、咽頭痛、軽い発熱、頭痛です。頻度は高くありませんが、まれにアナフィラキシーなど重いアレルギー反応が起こる可能性があり、接種後しばらくは院内でお待ちいただきます。

また生ワクチンのため、妊娠中の方、免疫抑制状態にある方、喘息や反復性喘鳴のあるお子さんなどでは、接種の可否や時期を個別に判断します。ご家族に免疫抑制状態の方がいらっしゃる場合も、事前にお知らせください。

対象年齢・料金・接種できない方の条件など、詳しくはフルミストの詳しい解説をご覧ください。

高用量ワクチンをお待ちだった方へ

ご高齢の方向けに、高用量インフルエンザHAワクチンが2026年10月から75歳以上を対象に定期接種化される方針が了承されていました。しかし製造上の理由で供給が困難となり、2026年7月21日、2026-2027シーズンの定期接種への導入は見送りとなることが公表されました。

今シーズンは、従来の標準用量ワクチンでの接種となります。お待ちいただいていた方には残念なお知らせですが、「高用量が出るまで待つ」という選択はおすすめできません。標準用量のワクチンにも重症化を防ぐ効果は確認されています。今シーズンは今あるワクチンで備えていただくのが、現実的な判断だと考えています。

いつ打てばよいか ── 逆算して考えましょう

接種後、十分な抗体ができるまでにはおおむね2週間かかります。流行が本格化してから慌てても間に合いません。一般には10月から12月中旬までの接種をおすすめしています。

とくに10月から計画的に進めていただきたい方
  • 2回接種が必要なお子さん ── 2回目まで間隔が必要なため、逆算すると10月開始が現実的です
  • 糖尿病・心疾患・呼吸器疾患などの持病をお持ちの方
  • 65歳以上の方
  • 受験や、動かせない予定を控えている方

「早ければ早いほどよい」というものでもありません。シーズンを通して効果が保たれるよう、この期間の中でご都合のよいタイミングをお選びください。持病で定期通院されている方は、次の診察のときに「今年はいつ頃打ちましょうか」と一言おっしゃっていただければ、逆算してご提案します。

あの鼻の検査について ── つらいけれど、価値があります

鼻に綿棒を入れる迅速検査は、患者さんには決して人気のある検査ではありません。「あれだけは勘弁してください」と言われることもあります。

それでもお願いしているのは、診療所でその場で検査し、その日のうちに診断と治療方針を決められることに、大きな価値があるからです。型が分かれば薬の選び方が変わりますし、陰性であれば別の病気を考える手がかりになります。

実際の診療では、①検査結果、②発症からの経過時間、③重症化リスク(年齢・持病・妊娠の有無など)の3つを合わせて、薬を使うかどうか、どれを使うかを判断しています。発症から時間が経ち、すでに回復に向かっている軽症の方では、必ずしも投薬が必要とは限りません。

1回で済む薬が、すべての方に最適とは限りません

バロキサビルは、1回の内服で治療が完了する薬です。飲み忘れの心配がないのは、大きな利点です。ただ、ここでも便利さだけで決めない方がよい事情があります。

この数字をどう見るか

A型のとき:とくに低年齢のお子さんでは、この薬が効きにくい変異ウイルス(低感受性変異株)が出現しやすいことが知られています。その場合、熱が下がるまでの時間が長引くことがあります。ただし、12歳未満では使えないという意味ではありません。年齢や体重、飲み薬・吸入薬の使いやすさを踏まえて、選択肢の一つとして検討します。

B型のとき:バロキサビルは良好な有効性が期待できるとされています。年明け以降、B型が主流になる時期には有力な選択肢です。

ほかに、オセルタミビル(内服)、ラニナミビルやザナミビル(吸入)、ペラミビル(点滴)があります。ウイルスの型、年齢、経過、生活の状況を合わせて、相談しながら決めていきます。

解熱剤 ── お子さんには、はっきりお伝えしたいことがあります

患者さんに一番伝えたいこと

お子さんのインフルエンザでは、アセトアミノフェンを基本とします。アスピリン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は、インフルエンザ脳症との関連が指摘されており、小児では使用を避けます。

市販の解熱鎮痛薬には、これらの成分を含むものがあります。ご家庭に残っている薬を、自己判断でお子さんに使わないでください。成分をご確認いただくか、受診の際にお持ちいただければこちらで確認します。

大人については、一般的な解熱鎮痛薬が一律に禁じられているわけではありません。ただし腎機能や胃腸、喘息などの持病、ほかに飲んでいる薬との関係で避けたほうがよい場合があります。持病のある方は、市販薬を続ける前にご相談ください。

お子さんの異常行動 ── 具体的にどう備えるか

「窓から飛び出した」といった異常行動が大きく報道され、抗インフルエンザ薬が原因ではないかと心配された時期がありました。その後の検討では、薬を使ったかどうかにかかわらず、インフルエンザそのものに伴って起こり得ると整理されています。つまり、「薬を使わなければ安心」ではないということです。

現場では、ここが重要です

異常行動は発熱から2日以内に多く報告されています。少なくともこの間は、お子さんを1人にせず、目の届く範囲で見守ってください。

具体的には、玄関・ベランダ・窓の施錠、高層階では窓に補助錠をつける、できるだけ1階で寝かせる、といった対応が推奨されています。「気をつける」ではなく、物理的に動線を塞いでおくのが確実です。

2日を過ぎれば絶対に起こらない、というものではありません。その後も普段と様子が違うと感じたときは、遠慮なくご相談ください。

変異株の話 ── 「ワクチンが効かない」と聞いた方へ

2025年、A香港型(H3N2)の変異ウイルスが各国で広がり、subclade Kと呼ばれるようになりました。ワクチン株とは遺伝的な隔たりがあり、「ワクチンが効かないのでは」というご心配の声を多くいただきました。

まず、流行が早く始まった原因をこの変異ウイルスだけに帰することはできません。コロナ禍を経た集団免疫の低下、人の移動の回復など、複数の要因が重なっています。

数字は冷静に見る必要があります

欧州19か国・9つの研究をまとめた解析(2025年9月~2026年1月)では、subclade Kが優勢だったにもかかわらず、A型インフルエンザに対するワクチンの有効性は全年齢で25~45%小児では47~72%と、例年と大きく変わらない水準でした。

つまり、株のずれがあってもワクチンが無効になるわけではない、ということが実地のデータで確認されたのです。「ずれているから打っても無駄」ではなく、「ずれている年こそ、重症化を防ぐ層を厚くしておく」と考えるのが、現時点で妥当な判断だと思います。

最後に、当院からお伝えしたいこと

インフルエンザの予防について、当院の考えははっきりしています。

  • 対策の主役はワクチンです。うがい・手洗い・マスク・換気は、出会う確率を下げる大切な外側の対策ですが、それだけでは守りきれません。
  • 持病のある方ほど、発病予防より重症化予防を目的にお考えください。ここがワクチンのいちばんの働きどころです。
  • 接種は10月から12月中旬に。2回接種のお子さんと持病のある方は、10月から逆算して計画を。
  • 年明け以降のB型を忘れずに。A型が収まっても、シーズンは終わっていません。
  • お子さんの解熱にはアセトアミノフェンを。市販薬の自己判断使用は避けてください。
  • 発熱から2日間は、お子さんを1人にしないでください。

ワクチンをどれにするか、いつ打つか、持病との兼ね合いはどうか ── 迷われることがあれば、定期の診察のときで構いませんので、お声がけください。一緒に逆算して決めましょう。

主な参考資料

本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。流行状況、ワクチンの供給状況、定期接種の取り扱いは変更されることがあります。個別の治療方針については、必ず主治医にご相談ください。

2026.08.05 更新

監修:かとう内科 院長 加藤丈陽

日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医

医療法人 かとう内科 愛媛県今治市

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