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  • 薬を夏の車内に置き忘れたら?「室温保存」の温度とインスリン・点眼薬の正しい保管方法

夏の車内は最高57℃・ダッシュボード79℃――薬の「室温保存」は1~30℃です

インスリン・点眼薬・坐薬の保管方法と、車内に置き忘れたときの対処法

2026.08.05 更新

タウン誌「マイタウン」すてき健康講座 第97話より

お盆の帰省や夏の旅行で、薬をうっかり車の中に置いたまま……という経験はありませんか。今治市のタウン誌「マイタウン」で連載中の「すてき健康講座」第97話(2026年8月号)では、夏の薬の保管方法を取り上げました。紙面の内容に少し補足を加えて、ブログでもご紹介します。

マイタウン:先生、お盆の帰省中に薬を車の中へ置いたまま、食事に行ってしまいました。錠剤ですし、見た目も変わっていないので大丈夫ですよね?

加藤:その薬、人間より先に“熱中症”になっているかもしれませんよ。

夏の車内は最高57℃、ダッシュボードは79℃

JAF(日本自動車連盟)が気温35℃の晴天時に行った実験では、エアコンを切って駐車した黒い車の車内温度は最高57℃、ダッシュボードは79℃に達しました。サンシェードを付けても車内は約50℃、窓を3cm開けても約45℃です。「少し対策したから大丈夫」とは言えない温度です。

夏の駐車中の車内はどれくらい暑い?(JAFユーザーテスト・外気温35℃)
ダッシュボード
最高79℃
車内(窓を閉め切り)
最高57℃
車内(サンシェードあり)
約50℃
車内(窓を3cm開けた状態)
約45℃
医薬品の「室温保存」の上限
30℃
出典:JAFユーザーテスト「真夏の車内温度」をもとに作成

一方、医薬品でいう「室温」は日本薬局方で1~30℃と定められています。つまり「室温保存」と書かれた薬にとって、夏の駐車中の車内は基準を大きく超えた、非常に過酷な環境なのです。「室温=その場の温度なら何度でもよい」という意味ではない、というのが最初のポイントです。直射日光の当たる窓際や、暑くなる物置、車のトランクやグローブボックスも同様に適しません。

見た目が変わらなくても、品質が保たれているとは限りません

高温にさらされた薬は、坐薬が軟らかくなる、カプセルが変形する、錠剤が変色するなど、見た目に変化が出ることがあります。しかし本当に難しいのは、見た目では変化が分からない場合もあることです。薬は温度だけでなく、湿気や光の影響も受けます。外見がいつも通りでも、本来の品質が保たれているかどうかを、見ただけで判断することはできません。特にシロップや点眼薬などの液体の薬は、開封後の変化に注意が必要です。

「全部冷蔵庫に入れれば安心」も正解ではありません

それなら夏の間はすべて冷蔵庫へ、と思いたくなりますが、これも正しくありません。薬には「室温保存」「冷所保存」「遮光保存」など、それぞれ決められた保管方法があります。冷蔵が指定されていない薬を自己判断で冷蔵庫に入れるのが最善とは限らず、薬によっては冷やしすぎや凍結を避けなければならないものもあります。薬の袋や説明書に書かれた保管方法に従うことが基本です。

インスリンは「暑さ」と「凍結」の両方に注意

多くのインスリン製剤は、使用開始前は2~8℃の冷蔵庫で保管し、使用開始後は30℃以下の室温で保管します(期間や条件は製品によって異なります)。注意したいのは、インスリンは一度凍結すると使用できなくなることです。「暑いから」と凍った保冷剤を直接当てるのは危険で、保冷が必要なときは保冷剤をタオルで包むなど、薬が凍らない工夫をしてください。もちろん、車内への置きっぱなしは禁物です。インスリンで治療中の方は、週1回インスリン『アウィクリ』の解説記事当院の糖尿病診療のご案内もあわせてご覧ください。

点眼薬・坐薬は「薬ごとの表示」を確認

点眼薬にも、冷蔵が必要なものと室温で保管するものがあり、開封前と開封後で条件が変わる製品もあります。坐薬も、暑さで軟らかくなることはありますが、すべてを冷蔵するとは限りません。「点眼薬だから冷蔵」「坐薬だから冷蔵」と決めつけず、薬ごとの表示を確認してください。

旅行や帰省で薬を持ち歩くときは

まず大原則は、薬を車の中へ置いていかないこと。人が車から降りるときには、薬も一緒に持って降りましょう。できるだけ元の包装や薬局でもらった袋のまま持ち歩き、薬の名前と保管方法が分かるようにしておくと安心です。インスリンなど温度管理が必要な薬は、旅行前に薬剤師へ持ち運び方を確認しておくことをおすすめします。

車内に置き忘れてしまったら――自己判断で「使う」も「捨てる」も避けて

一度車内に置いたからといって、すべての薬が直ちに使えなくなるとは限りません。ただし、「見た目が大丈夫だから使おう」と自己判断するのも、「もう使えない」と全部捨ててしまうのも避けてください。薬の種類、開封前か開封後か、置いていた時間、日なたか日陰かなどによって判断は変わります。

薬の名前と、どこに何時間くらい置いていたかを伝えて、調剤してもらった薬局や薬剤師に相談してください。特にインスリンや毎日欠かせない薬は、自己判断で中止せず、使用できるか、交換が必要かを確認することが大切です。

加藤:夏の合言葉は、「人が降りたら、薬も一緒に降りる」です。車は移動手段であって、薬の保管庫ではありません。

まとめ
  1. 医薬品でいう「室温」は1~30℃。夏の車内には薬を放置しない
  2. すべての薬を冷蔵すればよいわけではなく、インスリンなどは凍結にも注意する
  3. 車内へ置き忘れた薬は、自己判断で使用・廃棄せず、薬剤師に相談する

※この記事は一般的な情報提供を目的とした解説です。個々の薬の保管方法や、高温にさらされた薬が使用できるかどうかは、薬の種類や状況によって異なります。お手元の説明書をご確認のうえ、調剤を受けた薬局・薬剤師、または主治医にご相談ください。車内温度の数値はJAFユーザーテスト(外気温35℃・晴天時)の結果にもとづいています。

監修:医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽

日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医

医療法人 かとう内科|〒794-0821 愛媛県今治市立花町1-10-5|TEL 0898-23-2310

2026.08.05 更新

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