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  • 20代・30代で増える2型糖尿病|イングランド全国データが示す世代差を今治の内科医が解説

若い世代で増える2型糖尿病

イングランドの全国データが示した世代差と、早期発症が持つ意味

2026.08.01 更新

2型糖尿病は「中高年になってから気をつける病気」——長いあいだ、そう考えられてきました。健康診断の仕組みも、その前提で組み立てられています。

ところが2026年、イングランドの全国データを2011年から2024年まで追った分析が公表され、その前提が少し揺らぎはじめています。高齢の世代では新たに診断される人が減っている一方で、40歳未満、とくに20代・30代の女性では増えていた、という内容です。

今回は、この研究が何を示し、何を示していないのかを整理しながら、「若いうちに発症する」ということが持つ意味を、神経内科・老年医学の視点も交えて考えてみます。

イングランドの全国データが示した「世代差」

今回の分析は、イングランドのNational Diabetes Audit(全国糖尿病監査)というデータベースを使ったものです。特定の病院や研究施設に来た人だけを集めたのではなく、国全体の診療記録をもとにした人口ベースの観察研究にあたります。(観察研究=治療などの介入を行わず、実際に起きていることをそのまま記録・分析する研究のことです)

研究チームは、2011年から2024年までに新しく2型糖尿病と診断された人を、年齢・性別・民族別に分けて集計しました。ここが今回のポイントです。

国全体の平均だけを眺めていると、大きな変化は見えにくくなります。しかし年齢層で切り分けると、方向が逆になっている集団があることが分かりました。

イングランドNational Diabetes Auditの分析(2011~2024年)で示された、新規診断の傾向。数値そのものではなく、方向性として整理しています。
年齢層 新たに2型糖尿病と診断される人の傾向
高齢の世代 低下する傾向がみられた
40歳未満 上昇する傾向がみられた(とくに女性で目立った)

「全体としては横ばい」に見えても、その内側では世代ごとに違う動きが起きている。平均値というものは、こういうときに変化を隠してしまいます。

増加が目立ったのは、20代・30代の女性でした

より細かく見ると、増加がとくに目立った集団が特定されています。

増加が目立った集団
  • 20~29歳の白人女性、アジア系女性、黒人女性
  • 30~39歳の白人女性

2型糖尿病というと、どうしても「働き盛りを過ぎた年代の男性」というイメージがつきまといます。しかし今回のデータでは、まだ20代のうちに診断される女性が増えていた、ということになります。

もっとも、これはイングランドで暮らす人々のデータです。食生活も、医療制度も、健診の受け方も日本とは違いますので、そのまま「日本でも同じことが起きている」と言い切ることはできません。あくまで、同じような社会環境の変化を共有している国で観察された傾向として受け止めるのが適切だと考えます。

診断されたときの体格も、若い世代ほど変化が大きい

この研究では、診断された時点のBMI(体格指数)も一緒に分析されています。(BMI=体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m で計算する体格の目安です)

その結果、診断時BMIの上昇幅は、若年層で高齢層のおよそ2倍だったと報告されています。さらに一部の若い白人女性では、診断された時点の平均BMIが40kg/m²に近づいていました。

診断時BMIの「上がり方」の比較(2011~2024年)
高齢層での上昇幅
 
若年層での上昇幅(およそ2倍)
 

※「およそ2倍」という関係を視覚的に示した図です。BMIの実数値ではありません。

ここは誤解されやすいところです

この研究は、「2型糖尿病と診断された人の、診断時のBMI」を調べたものです。イングランドの一般人口全体の体重がどう変化したかを直接調べた研究ではありません。

ですから、この結果をもって「肥満が若年糖尿病増加の原因であることが証明された」と言うことはできません。言えるのは、若い世代の発症増加と、診断時体格の上昇が同時に進んでいる可能性がある、というところまでです。

なぜ「早く発症すること」が重く受け止められるのか

ここが、今回の研究のいちばん大切な論点だと考えています。

合併症の多くは、血糖の高い状態が「どれくらい高いか」だけでなく、「どれくらいの期間続いたか」の影響を受けます。つまり、発症が早いほど、糖尿病と付き合う年数が長くなり、その分だけ累積の負担が大きくなりやすいということです。

60歳で診断された方と、25歳で診断された方とでは、80歳になったときの経過年数がまるで違います。前者は20年、後者は55年です。同じ「2型糖尿病」という診断名でも、時間軸がこれだけ異なります。

ただし、これは「若く診断されたら手遅れ」という意味ではまったくありません。むしろ逆で、時間が長いからこそ、早い段階で気づいて管理を始めることの価値が大きくなる、と受け止めていただきたいところです。長い時間は、悪化にも改善にも同じように働きます。

神経内科・老年医学の視点から、気をつけたいこと

当院は神経内科・認知症・老年医学を専門領域としながら、内科全般を診ている診療所です。糖尿病を長く抱えた方が、その後どのような経過をたどるかを、時間の経った側から見る機会が多くあります。その立場から、三つだけ申し添えます。

1.神経の合併症は、自覚が乏しいまま進むことがあります

糖尿病性神経障害は、しびれや痛みで気づかれることもありますが、感覚がゆっくり鈍っていくだけで、本人がほとんど自覚しないまま進行することも珍しくありません。若い時期から罹病期間が長くなるほど、この経過には注意が必要です。詳しくは糖尿病性神経障害について解説した記事をご覧ください。

2.目・腎臓の定期的な確認は、症状がなくても続ける

網膜症も腎症も、初期には症状が出ません。「調子が悪くないから大丈夫」という判断がいちばん通用しにくい領域です。合併症の定期スクリーニングの考え方はこちらの記事で整理しています。

3.長期の血糖管理と、将来の脳の健康

糖尿病と認知機能の関係については、関連を指摘する研究が複数報告されています。ただし、どの程度・どのような仕組みで影響するのかは、まだ結論が出ている問題ではありません。断定はできませんが、長い目で考える理由の一つにはなります。関心のある方は糖尿病と認知症の関係についての記事もあわせてどうぞ。

若い方の糖尿病では、「型」の確認も大切です

もう一点、診療の現場で気をつけていることがあります。若い年代で血糖の異常が見つかったとき、すぐに「2型糖尿病」と決めてしまわないことです。

  • 1型糖尿病の可能性:若年発症では特に鑑別が必要です。
  • MODY(若年発症成人型糖尿病)の可能性:遺伝的な背景を持つタイプで、家族に同じような方が複数いる場合には検討します。MODYについての解説はこちら
  • 妊娠糖尿病の既往:その後の2型糖尿病発症と関連することが知られています。受診時にお伝えいただきたい大切な情報です。

また、体格の大きい若年の方では、睡眠時無呼吸や脂肪肝が同時に存在していることがあります。それぞれ単独の問題ではなく、まとめて確認したほうがよい組み合わせです。睡眠時無呼吸と肥満・血糖の関係脂肪肝(MASLD)についてもご参照ください。

個人の努力不足の話にしてしまわないために

こうしたデータを見ると、「若い人の自己管理が甘くなったのではないか」という受け止め方をされることがあります。しかし、それは事実に照らして公平ではありません。

研究者自身も、この十数年で変わったのは個人の意志ではなく、その人を取り巻く環境のほうだと指摘しています。

背景として指摘されている環境要因
  • 安価で手に入りやすい高カロリー食品が増えたこと
  • 食品の広告・マーケティングの影響
  • 仕事も余暇も座って過ごす時間が長くなったこと

いずれも、一人ひとりの心がけだけでは動かしにくい部分です。

診療の場面でも、「頑張りが足りない」という話から始めても、あまりよい結果になりません。どこに変えられる余地があるかを一緒に探すほうが、現実的だと感じています。

健診が「40歳から」では、届かない世代があります

日本の特定健康診査(メタボ健診)は、40歳以上が対象です。20代・30代の方は、勤務先の定期健康診断で血液検査を受ける機会はあるものの、項目が限られていたり、結果を見返さないまま過ごしてしまったりすることが少なくありません。

今回のイングランドの研究が投げかけているのは、まさにこの点です。仕組みが「中高年から」を前提にしていると、若い世代で起きている変化を拾いにくくなります。

もちろん、日本の健診制度をすぐに変えられるわけではありません。それでも、手元にある検査結果を一度きちんと見ておくことは、今日からできます。

今日から確認できること

  1. 直近の健診結果を開いて、血糖値・HbA1c・脂質・血圧の数値を確認する。「異常なし」と書かれていても、基準値のどのあたりにあるかを見ておくと、次回との比較ができます。
  2. 家族歴と、妊娠糖尿病の既往を、受診時に伝える。ご両親やきょうだいに糖尿病の方がいるかどうかは、若い年代ではとくに重要な情報になります。
  3. お薬の開始・中止を自己判断で行わない。個人輸入もしない。血糖や体重に関わる薬は、体調や他の薬との兼ね合いを見ながら調整するものです。

補足:2026年7月下旬に報じられた関連の動き

この研究が公表された時期に、生活習慣病に関わる大きな発表が二つありました。方向性としては、いずれも「より早く、より積極的に介入する」流れの一部として読めます。ただし、証拠の性質は今回の研究とはまったく異なりますので、簡単に触れるにとどめます。

開発中の肥満症治療薬「レタトルチド」の第3相試験結果(2026年7月23日)

Eli Lilly社が、GIP・GLP-1・グルカゴンの3つの受容体に作用する週1回注射薬について、第3相試験のトップライン結果を発表しました。80週間で平均20~22%台の体重減少が報告された一方、消化器症状による治療中止も一定の割合で生じています。現時点でどの規制当局からも承認されておらず、詳細な査読論文も公表されていません。期待と未確定部分の両方については、レタトルチドについて解説した記事で詳しく整理しています。

米国の新しい脂質異常症ガイドラインをめぐる推計(JAMA、2026年7月20日)

米国の2026年ガイドラインを人口データに当てはめると、スタチンの推奨対象が従来より約2,150万人増える、という推計が報告されました。新ガイドラインは30歳から10年リスクと30年リスクの両方を評価する方式を採っており、比較的低リスクの若い層まで対象が広がる点が特徴です。ただしこれは米国のガイドラインを米国の人口に当てはめた推計であり、日本にそのまま適用できるものではありません。脂質の考え方については脂質異常症のページをご覧ください。

まとめ

今回のイングランドの研究が示したのは、「2型糖尿病は中高年の病気」という前提が、少しずつ現実と合わなくなってきている可能性です。40歳未満、とくに20代・30代の女性で新規診断が増え、診断時の体格も若い世代ほど大きく変化していました。

ただし、これは観察研究であり、原因を証明したものではありません。個人の努力不足という話に還元してしまうと、本当に見るべきものを見落とします。

大切なのは、若く発症するほど糖尿病と付き合う年数が長くなり、その時間が合併症に効いてくるという構造を理解しておくことです。裏を返せば、早く気づいて管理を始めれば、その長い時間を味方につけることもできます。

当院は、糖尿病そのものだけでなく、神経・脳・全身の状態を長い時間軸で診ることを専門としています。健診の数値が気になったとき、あるいはご家族の糖尿病が気になったときに、相談していただける入口でありたいと考えています。糖尿病全般については糖尿病のページにまとめておりますので、あわせてご覧ください。

参考文献
  1. Holman N, et al. Trends in type 2 diabetes incidence and BMI at diagnosis by age, sex, and ethnicity, 2011–2024: a population-based analysis of the English National Diabetes Audit. The Lancet Regional Health – Europe. 2026. DOI: 10.1016/j.lanepe.2026.101764
  2. Eli Lilly and Company. Lilly's triple agonist, retatrutide, successful in two additional Phase 3 obesity trials, delivering significant improvements in weight and A1C. 2026年7月23日発表.
  3. Anderson TS, et al. Implications of the 2026 Dyslipidemia Guideline for Primary Prevention Statin Therapy. JAMA. Published online July 20, 2026. DOI: 10.1001/jama.2026.11246
この記事の監修
かとう内科 院長 加藤 丈陽

日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医

〒794-0821 愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の診断・治療方針を示すものではありません。検査値や治療の判断については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

この記事を最後に更新した日:2026年8月1日

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