• トップ
  • ブログ
  • 高齢者の低血糖は気づきにくい|認知症・転倒との関係と血糖目標|今治市・かとう内科

高齢者の低血糖 ― 気づきにくさと、下げすぎない血糖管理

認知症・転倒との関係、そして一人ひとり違う血糖目標の考え方

糖尿病 老年病・認知症の視点 交差・深掘り かとう内科ブログ

ご高齢の方の低血糖は、若い方とは症状の出かたが違い、ご本人も周りも気づきにくいのが特徴です。そして、ふらつきによる転倒や、認知機能とも深く関わります。だからこそ、高齢の方では「血糖を下げればよい」とは限りません。当院は、糖尿病に加えて老年病・認知症・神経内科を専門とする院長が、その方の状態に合った目標と安全性を一緒に考えます。この記事では、高齢の方の低血糖の「気づきにくさ」と「下げすぎない大切さ」を、わかりやすくお話しします。

高齢の方の低血糖は「気づきにくい」

若い方の低血糖は、動悸・冷や汗・手のふるえ・強い空腹感といった、はっきりしたサインで気づけることが多いものです。ところがご高齢の方では、こうした典型的なサインが出にくく、代わりにぼんやりする・元気がない・ふらつく・ろれつが回らない・急に怒りっぽくなるといった、加齢や認知症と紛らわしい形で出ることがあります。

高齢の方に出やすい、紛らわしい低血糖のサイン

・なんとなく元気がない、ぼーっとしている、反応がにぶい
・ふらつく、歩き方がおかしい、立てない
・ろれつが回らない、言葉が出にくい(脳卒中と紛らわしいことも)
・急に不機嫌・落ち着かない、いつもと様子が違う

このため、ご本人も周りも低血糖と気づかないまま進んでしまい、意識がもうろうとしたり、けいれんに至ることもあります。さらに、糖尿病が長い方などで自律神経の障害があると、警告となる動悸や冷や汗が出ないまま、いきなり意識が低下する「無自覚性低血糖」が起こることもあります(神経の障害については 糖尿病の足のしびれと神経障害 もご覧ください)。

なぜ高齢の方で起きやすく、危ないのか

ご高齢の方が低血糖を起こしやすい背景には、いくつかの理由が重なります。

起きやすくなる主な理由

・低血糖を起こしやすい薬(インスリンや一部の飲み薬など)を使っている
・腎臓のはたらきの低下で、薬が体に残りやすく効きすぎることがある
・食事のむら、食欲の低下、体重の減少
・たくさんの薬を併用している

そして、高齢の方の低血糖が危ないのは、それが転倒・骨折に直結しやすいからです。ふらついて転べば、骨折から寝たきりにつながることもあります。重い低血糖は、それ自体が命に関わることもあります。「ただの一時的なこと」と軽く見ないことが大切です。

減量中の骨や筋肉の変化については、GLP-1治療中の骨と筋肉を守るには?で詳しくまとめています。

低血糖と認知症の、深いつながり

低血糖と認知症は、お互いに影響しあう関係にあります。重い低血糖をくり返すと、将来の認知機能の低下や認知症のリスクが高まることが、研究で示されています。一方で、認知症があると、薬の管理が難しくなり、低血糖を起こしやすくなるという逆の関係もあります。

つまり、低血糖と認知症は「悪循環」に入りやすいのです。だからこそ、ご高齢の方では低血糖を防ぐこと自体が、認知機能を守ることにもつながります。糖尿病と認知症のつながりは 糖尿病と認知症 でくわしく解説しています。

「下げればよい」ではありません ― 目標は一人ひとり違う

若い世代では「血糖をしっかり下げる」ことが基本ですが、ご高齢の方では、下げすぎがかえって危険になることがあります。低血糖の害が、高血糖を抑える利益を上回ってしまう場合があるからです。

日本の診療指針でも、高齢の方の血糖目標は、年齢・認知機能・日常生活の自立度・使っている薬に応じて、一人ひとり個別に決めることになっています。状態によっては目標をゆるめたり、低血糖を起こしやすい薬を使っている場合は「下げすぎないための下限」を設けたりします。一般には HbA1c 7%未満が一つの目安ですが、高齢の方では 8%前後を目標にすることもあります。

「ゆるめる」のは、手抜きではありません

必要に応じて薬を減らしたり、種類をまとめたりすること(治療の単純化)も、立派な治療です。低血糖を避けて安全に過ごすことを優先する、前向きな判断です。ご自身やご家族の目標は、ぜひ主治医とご相談ください。

低血糖を防ぐ・備える(ご家族とできること)

ご高齢の方の低血糖は、ご家族や周りの方の「気づき」が大きな助けになります。

日ごろの備え

・低血糖の紛らわしいサイン(元気がない・ふらつき・ろれつなど)を、ご家族も知っておく
・食事を抜かない・極端な食事制限をしない
・かぜや下痢などで食べられない日(シックデイ)は要注意(シックデイの備え)
・すぐ補えるようブドウ糖を携帯しておく(具体的な対処は 低血糖の症状と対処法 へ)
・「いつもと様子が違う」ときは、血糖を測る・早めに受診する

当院でできること

当院は、糖尿病に加えて老年病・認知症・神経内科を専門とする院長が診療しています。だからこそ、低血糖の見えにくいサインを拾い、その方に合った安全な目標へ調整することを得意としています。

当院でできること

・認知機能や生活の状態をみて、低血糖を起こしにくい目標と薬に整えます
・認知症・神経の視点から、紛らわしい症状の背景を見極めます
・たくさんの薬の見直し(減薬・単純化)、ご家族への説明も行います
・より専門的な対応が必要な場合は、連携施設へご紹介します

よくあるご質問

高齢の親の様子がおかしいのですが、低血糖でしょうか?

ご高齢の方の低血糖は、ぼんやり・ふらつき・ろれつが回らない・急に不機嫌になるなど、認知症や加齢と紛らわしい形で出ることがあります。糖尿病の薬(とくにインスリンや一部の飲み薬)を使っている方で「いつもと違う」と感じたら、可能なら血糖を測り、わからないときは早めにご相談ください。意識がはっきりしないときは急いで受診を。

低血糖は認知症と関係ありますか?

関係があると考えられています。重い低血糖をくり返すと、将来の認知機能の低下や認知症のリスクが高まると報告されています。逆に、認知症があると薬の管理が難しく低血糖を起こしやすくなります。低血糖を防ぐことが、認知機能を守ることにもつながります。

高齢だと、血糖はゆるめでよいのですか?

一律ではありませんが、ご高齢の方では下げすぎがかえって危険になることがあり、年齢・認知機能・生活の状態・使う薬に応じて目標を個別に決めます。状態によっては目標をゆるめたり、下げすぎない下限を設けたりします。具体的な目標は主治医とご相談ください。

低血糖を防ぐには、どうすればよいですか?

食事を抜かない、極端な制限をしない、体調が悪い日は無理をしないことが基本です。低血糖の紛らわしいサインをご家族も知っておき、すぐ補えるようブドウ糖を携帯しておくと安心です。くり返す場合は、薬や目標の見直しが必要なこともあるので、遠慮なくご相談ください。

― あわせて読みたい(生活習慣病の三兄弟)―

監修:加藤 丈陽(かとう内科 院長)
日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
かとう内科 〒794-0821 愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310(1986年開業・19床)

※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。血糖の目標や薬の調整は一人ひとり異なります。実際の診断・治療は必ず医師にご相談ください。
参考:日本老年医学会・日本糖尿病学会「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」/両学会合同「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」(2016)/日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」。2026年時点の情報に基づいて作成しています。

PAGE TOP