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  • コレステロールは脳卒中とどう関係する?下げすぎると脳出血が増える?神経内科医が解説|今治市・かとう内科

脳梗塞とコレステロールは深く関係する

下げる治療は脳梗塞予防に有効、脳出血予防の主役は血圧管理

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第26回

脳卒中とコレステロール
── 神経内科医の視点から

院長は神経内科を専門にしてきました。脳卒中とコレステロールの関係は、患者さんからよく質問をいただくテーマです。「下げすぎると脳出血が増えるのでは?」という不安にも、できるだけ正直にお答えします。

この記事で答えること

コレステロールは脳卒中とどう関係するの? 下げすぎると脳出血が増えるって本当?

🔑 まずここだけ押さえる
  • 脳卒中にはタイプがあり、コレステロールと特に関係が深いのは脳梗塞です。
  • 脳梗塞の約7割が脂質異常と関係し、中でも動脈硬化タイプ(ATBI)がLDLと強く関係します。
  • コレステロールを下げる治療は、脳梗塞の予防・再発予防に有効です(特にATBI)。
  • 「下げすぎると脳出血が増える」という確かな証拠はなく、脳出血予防の主役は血圧管理です。
  • 当院は予防・再発予防・かかりつけ管理が役割。発症した直後(急性期)は救急・専門施設へ。

1脳卒中には「タイプ」がある

ひとくちに脳卒中といっても、中身は大きく3つに分かれます。血管がつまるのが脳梗塞、やぶれるのが脳出血とくも膜下出血。コレステロールとの関係の深さは、タイプによってかなり違います。

🧠
脳梗塞
血管がつまる
関係:深い
🩸
脳出血
血管がやぶれる
関係:あるかも
💥
くも膜下出血
こぶ等がやぶれる
関係:うすい

コレステロールが直接かかわってくるのは、いちばん患者数の多い脳梗塞です。脳出血は「関係がないとは言い切れない」程度、くも膜下出血は関係がうすい、と考えられています。この記事は主に脳梗塞のお話です。

2脳梗塞とコレステロール ── 特に“動脈硬化タイプ”

脳梗塞のおよそ7割が、脂質異常症と密接に関わっています。脳梗塞にもいくつかタイプがあり、代表的なのが「ラクナ梗塞(細い血管)」「アテローム血栓性脳梗塞(ATBI)」「心原性脳塞栓症(心臓から飛んだ血のかたまり)」の3つ。

このうち動脈硬化が原因のATBI――首や頭の中の太い動脈が、コレステロールのたまり(プラーク)で狭くなって起こるタイプ――が、LDLコレステロールと強く関係します。神経内科の現場でも、ATBIの患者さんでは「LDLをしっかり下げる」ことが再発予防のかなめになります。

3下げる治療は「効く」 ── 予防と再発予防

脳梗塞の予防では、「まだ起こしていない人(一次予防)」と「再発を防ぎたい人(二次予防)」で力の入れ方が変わります。

一次予防では、まず食事・運動でLDL<140を目安に。糖尿病や、首・頭の太い動脈の狭窄、LDL 180以上などが重なる場合は、お薬も使って<120を考えます。二次予防(再発予防)では、スタチンを中心にしっかり下げます。とくに動脈硬化タイプ(ATBI)は、より低い目標が勧められています。

脳梗塞予防のためのLDLコレステロール目安(mg/dL)
区分 LDLの目安
一次予防/低リスク <140
一次予防/高リスク※ <120
二次予防/動脈硬化タイプ以外 <100
二次予防/動脈硬化タイプ(ATBI) <70

※糖尿病、首や頭の太い動脈の50%以上の狭窄、LDL 180以上などが重なる場合。これはAHA/ASA(米国の学会)の考え方を加味した“目安”で、実際の目標値は主治医が一人ひとりの状態を見て判断します。

📑 根拠:スタチンで脳卒中の再発が減ることは、SPARCL試験(2006年)で初めて明確に示されました。その後、強力に下げるほど良いという流れになり、TST試験ではLDL<70の群で、日本のJ-STARS試験では動脈硬化タイプ(ATBI)の再発で、それぞれ抑制効果が確かめられています。

4「下げすぎると脳出血が増える?」の本当のところ

いちばん多い心配がこれです。結論から言うと、脳梗塞を防ぐメリットのほうが、脳出血の心配を大きく上回ります。順番に見てみましょう。

😟 心配の出どころ

昔(1980~90年代)の調査で「コレステロールが低い人は脳出血が多い」と報告されました。ただしこれは、低栄養など別の事情が混じっていた可能性が高いと考えられています。

🙂 実際のところ

お薬でしっかり下げた最近の研究では、脳出血が明らかに増えるという結果は出ていません。脳出血のおもな原因は、LDLの値ではなく「脳出血の既往」と「高血圧」でした。

過去にスタチンの高用量(日本の最大量より多い量)で脳出血がやや増えた、という指摘はありました。ただ日本で使う量とは前提が違いますし、その後の複数の研究やまとめ(メタ解析)では、LDLを下げる治療で脳出血が増えるという見方は否定されています。

🔖 脳出血を防ぐ“いちばんの鍵”は血圧
脳出血をいちばん左右するのは、コレステロールよりも血圧です。とくに過去に脳出血をしたことがある方や、血圧が高めの方は、しっかりした血圧管理が何より大切です。コレステロールを下げることと、血圧を整えること――この両輪で脳を守ります。

5当院の役割 ── 予防・再発予防のかかりつけとして

脳卒中は、発症した直後(急性期)の治療がとても大切で、これは救急・脳卒中の専門施設の役割です。当院はその立場ではありません。当院が担うのは、神経内科の視点を生かした、発症前の予防と、退院後の再発予防・日常の管理です。コレステロールと血圧を一緒に整え、定期的に見守っていきます。

🔖 血管は“つながって”います
動脈硬化は脳だけで起こるわけではありません。心臓(狭心症・心筋梗塞)、足(足の動脈がつまる末梢動脈疾患)も同じ仲間です。脳の血管が傷んでいる方は、ほかの血管も傷んでいることが多いので、全身の血管をまとめて守る意識が大切です。
▶ 次回:腎臓が弱っていると言われたら(CKD)とコレステロール
腎臓とコレステロールも、実は深い関係があります。慢性腎臓病(CKD)があるときの脂質管理のポイントを、次回やさしく解説します。

6糖尿病・高血圧がある方へ

脳を守るうえで、血圧管理は脂質と並ぶ“主役”です。糖尿病も脳梗塞の大きな危険因子。あわせて整えていきましょう。

🫀 高血圧について(解説一覧) →
脳出血・脳梗塞の予防に、血圧管理は欠かせません。当院の考え方をまとめています。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
🩸 糖尿病について(解説一覧) →
糖尿病があると、脳梗塞の起きやすさも上がります。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
  2. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
  3. 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 編:脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕.協和企画,2025.
📚 脂質異常症シリーズ
第25回:糖尿病があると、コレステロール管理はどう変わる? → 前の記事へ
第26回:脳卒中とコレステロール(神経内科医の視点)(この記事)
第27回:腎臓が弱っていると言われたら(CKD)とコレステロール → 次の記事へ

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