• トップ
  • ブログ
  • 糖尿病があるとコレステロールの目標はどう変わる?厳しくなる理由とLDL目標値|今治市・かとう内科

糖尿病があると、目標ラインはぐっと厳しくなる

合併症なし<120・合併症あり<100・二次予防<70、LDLの目標値

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第25回

糖尿病があると、
コレステロール管理はどう変わる?

糖尿病があると、コレステロールの“目標ライン”はぐっと厳しくなります。「まだ何も起きていないのに、なぜそこまで?」――その理由と、どこまで下げればいいのかを、やさしく整理します。

この記事で答えること

糖尿病があると、なぜコレステロールを厳しめに管理するの? 目標値はいくつ?

🔑 まずここだけ押さえる
  • 糖尿病があると心筋梗塞・脳梗塞が健康な人の約3~4倍起きやすく、まだ発症していなくても「高リスク」として扱います。
  • 糖尿病の脂質異常は、LDLが高いだけでなく中性脂肪が高い・HDL(善玉)が低い・小型のLDLが増えるという“質”の悪化が特徴です。
  • LDLの目標は合併症なしで<120、合併症ありで<100、発症ずみ(二次予防)で<70と、ぐっと厳しめです。
  • 治療の土台は体重・血糖・生活習慣。LDLにはスタチンが基本になります。
  • 減量や血糖改善がうまくいくと、一時的にLDLが上がって見えることがありますが、多くは良い変化のサインです。

1なぜ糖尿病だと“厳しめ”なの?

糖尿病があると、血管の事故(心筋梗塞や脳梗塞)が格段に起きやすくなります。日本の久山町研究では、糖尿病のある方は冠動脈疾患も脳梗塞も健康な人のおよそ3~4倍起きやすいと報告されています。

さらに、「糖尿病の人が“まだ発症していない段階(一次予防)”でも、糖尿病でない人が“すでに発症した後(二次予防)”と同じくらいのリスク」という報告もあります。それくらい糖尿病は強力な危険因子なのです。前回お話しした区分でいうと、糖尿病があるだけで一次予防の中の「高リスク」に入ります。だから、まだ何も起きていなくても、しっかり管理する意味があります。

2糖尿病の脂質異常は、“質”が変わる

糖尿病の脂質異常で見落とせないのは、「LDLの数字」だけではない、という点です。中身(質)がこんなふうに変わります。

中性脂肪(TG) ↑ HDL(善玉) ↓ 小型LDL(sd-LDL) ↑

ざっくり言うと、内臓脂肪がたまる → インスリンが効きにくくなる → 肝臓で中性脂肪(TG)が作られすぎる → その玉突きでHDL(善玉)が減り、小型で硬いLDL(sd-LDL)が増える、という流れです。

この小型LDL(sd-LDL)がやっかいで、血管の壁に入り込みやすく、酸化されやすいため、動脈硬化を進めやすい“たちの悪い”LDLです。ふつうの検査では測れませんが、糖尿病ではこれが増えていると考えて、いつもより一歩踏み込んで管理します。

3目標値は、こう変わる

区分ごとの目標は下の表のとおりです。第24回で見た一般の区分では「低リスクなら<160」でしたが、糖尿病があると入口から<120スタート。合併症があれば、さらに厳しくなります。

糖尿病がある場合の脂質目標値(mg/dL)
区分 LDLコレステロール non-HDLコレステロール
一次予防/合併症なし <120 <150
一次予防/合併症あり <100 <130
二次予防(発症ずみ) <70 <100

※「合併症あり」とは、末梢動脈疾患(PAD)や細小血管症(網膜症・腎症・神経障害)の合併、または喫煙ありの状態を指します。中性脂肪(TG)は空腹時150/随時175未満、HDLは40以上が目安です。まずはLDLの達成を優先します。

4治療 ── 土台は生活、LDLにはスタチン

治療の順番は、まず体重・血糖・生活習慣(食事・運動・お酒・たばこ)から。減量や血糖コントロールでインスリンの効きが戻ると、中性脂肪も自然と下がってきます。脂質の薬だけでなく、糖尿病そのものの管理が、実は脂質改善の近道です。

そのうえでLDLが目標に届かなければ、スタチンが基本のお薬になります。スタチンだけで足りなければエゼチミブなどを足し、中性脂肪が高い場合は生活改善に加えてEPAなどを使うこともあります。

検査・診断から、生活指導やスタチンなどでの管理までは、かかりつけとして当院で行えます。注射薬を使うような、より強力な治療が必要な場合には、適切な専門施設と連携してすすめます。

📑 根拠:スタチンが糖尿病のある方の心筋梗塞・脳梗塞を減らすことは、CARDS試験やREAL-CAD試験など、国内外の複数の研究で示されています。
🔖 「やせたらLDLが上がった?」
減量や血糖の改善が進むと、小型のLDLが“普通サイズ”のLDLに戻っていく過程で、見かけ上LDLの数字が少し上がることがあります。多くは体質が良い方向へ動いているサインなので、自己判断でお薬をやめず、まずは主治医にご相談ください。
▶ 次回:脳卒中とコレステロール ── 神経内科医の視点から
院長の専門分野です。脳梗塞とコレステロールの関係、「下げすぎると脳出血が増える?」という疑問まで、次回じっくり解説します。

5糖尿病・高血圧がある方へ

血糖・血圧・脂質は“三点セット”で整えるのが、血管を守る近道です。シリーズの糖尿病・高血圧の解説も、あわせてどうぞ。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
血糖の管理は、脂質の“質”の改善にも直結します。当院の考え方をまとめています。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
血圧の管理は、脳卒中や心臓病の予防に直結します。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
  2. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
  3. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版.日本動脈硬化学会,2023.
📚 脂質異常症シリーズ
第24回:同じコレステロール値でも、目標は人それぞれ → 前の記事へ
第25回:糖尿病があると、コレステロール管理はどう変わる?(この記事)
第26回:脳卒中とコレステロール(神経内科医の視点) → 次の記事へ

PAGE TOP