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  • コレステロールの目標値はなぜ人によって違う?持病・年代で決まる“あなたの基準”|今治市・かとう内科

リスクが高い人ほど、目標は厳しくなる

一次予防(低・中・高リスク)と二次予防で、LDLの目標値はこう変わる

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第24回

同じ“コレステロール値”でも、
目標ラインは人それぞれ

健診で同じLDLの数字なのに、ある人は「様子を見ましょう」、ある人は「そろそろお薬を考えましょう」。意地悪をしているわけではなく、持病や年代によって“安全ライン”が変わる、ちゃんとした理由があります。シリーズ第5章は、この「人それぞれ」の中身を一緒に見ていきます。

この記事で答えること

LDLコレステロールの数値が同じでも、「下げるべき目標ライン」が人によって違うのはなぜ? 自分はどの基準で考えればいいの?

🔑 まずここだけ押さえる
  • コレステロールの目標値は一律ではなく、その人の「動脈硬化のなりやすさ(リスク)」で決まります。
  • すでに心筋梗塞・狭心症や脳梗塞をした方(二次予防)は、いちばん厳しい目標になります。
  • まだ発症していない方(一次予防)は、年齢・血圧・血糖・喫煙などから低・中・高リスクに分けて目標を決めます。
  • 糖尿病・慢性腎臓病(CKD)・末梢動脈疾患(PAD)のどれかがあると、それだけで「高リスク」扱いになります。
  • 自分の10年リスクは、無料アプリ「これりすくん」でも目安を確認できます。

1なぜ「目標値は人それぞれ」なの?

コレステロール、とくにLDL(いわゆる悪玉)は、血管の壁にたまって動脈硬化を進める“主役”です。ただ、同じLDLの数字でも、動脈硬化が実際にどれくらい進みやすいかは人によって大きく違います。年齢、性別、血圧、血糖、たばこ……こうした条件が重なるほど、血管の事故(心筋梗塞や脳梗塞)の起きやすさは上がっていきます。

だから医療では、「LDLが◯◯だから一律にこの薬」ではなく、リスクが高い人ほど、目標ラインを厳しく設定します。リスクが低い人に最初から強い薬は要りませんし、逆にリスクが高い人を“ふつうの基準”のまま見ていると、防げたはずの事故を見逃してしまうからです。同じ数字でも対応が違うのは、ここに理由があります。

2あなたのリスクは、こう決まります

複雑そうに見えて、入口はとてもシンプルです。次の3ステップで、自分が「どの区分か」がだいたい見えてきます。

まず:血管の“事故”をしたことがある?
心筋梗塞・狭心症、または動脈硬化が原因の脳梗塞をしたことがある方は「二次予防」。再発を防ぐため、もっとも厳しい目標になります。
なければ「一次予防」。まず持病をチェック
糖尿病・慢性腎臓病(CKD)・末梢動脈疾患(PAD)のどれかがあれば、それだけで「高リスク」。血管が傷みやすい状態だからです。
どれもなければ、6つの項目でスコア化
性別・収縮期血圧・血糖・LDL・HDL・喫煙の6項目から「10年以内に動脈硬化の病気を起こす確率」を計算し、低・中・高リスクに振り分けます(久山町スコア)。
🔖 ひとつだけ注意
LDLが極端に高い(目安として180mg/dL以上)場合は、生活習慣だけでなく体質的なもの(家族性高コレステロール血症)が隠れていることがあります。この場合はリスク区分にかかわらず早めの対応を考えます。くわしくはシリーズの別の回で取り上げます。

3リスクが高い区分ほど、目標は厳しくなる

区分が決まると、目標とするLDL(と、補助的に使うnon-HDL)の値が変わります。下の階段を見ると、区分が上がるほど数字が小さく=厳しくなっているのが分かります。

低リスク
一次予防・低リスク LDL <160
中リスク
一次予防・中リスク LDL <140
高リスク
一次予防・高リスク LDL <120(条件により<100)
二次予防
発症ずみ LDL <100(条件により<70)

non-HDLコレステロールもあわせた目標値は、次のとおりです。

リスク区分別の脂質目標値(mg/dL)
区分 LDLコレステロール non-HDLコレステロール
一次予防/低リスク <160 <190
一次予防/中リスク <140 <170
一次予防/高リスク <120(条件により<100) <150(<130)
二次予防(発症ずみ) <100(条件により<70) <130(<100)

※「条件により」とは、高リスクでは糖尿病に他の合併(PADや網膜症・腎症・神経障害)や喫煙がある場合、二次予防では急性冠症候群・家族性高コレステロール血症・糖尿病などを合併する場合に、さらに厳しい目標を考える、という意味です。中性脂肪(TG)は空腹時150/随時175未満、HDLは40以上が目安です。まずはLDLの目標達成を優先し、それでもnon-HDLが高い場合に次の一手を考えます。

「自分はどの区分で、目標はいくつなのか」は、健診結果と持病を合わせれば診察で一緒に確認できます。気になる方は、受診のときにお気軽にお尋ねください。

4自分のリスクを“見える化”する

動脈硬化の10年リスクは、日本動脈硬化学会が出している無料ツールで、目安を自分でも確認できます。一般向けには「これりすくん」という名前で公開されていて、さきほどの項目を入れるだけで「10年以内に動脈硬化の病気を起こす確率」が出ます。数字で見えると、生活を見直すきっかけにもなりますね。

ひとつ注意点を。この“10年確率”は年齢の影響を強く受けるので、若い方は低めに出やすい傾向があります。今の数字が低くても、長い目で見れば油断は禁物、という点だけ覚えておいてください。

📑 根拠:このリスク評価は、日本の代表的な追跡研究「久山町研究」をもとにした予測モデルで、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』に採用されています。“◯倍”という比較ではなく、「あなたが10年でどれくらいの確率か」という実際の確率で考えるのが特徴です。
🔖 相対リスクと絶対リスク
相対リスクは「ある基準と比べて何倍」という見方(例:LDLが高い群は低い群の約2倍)。絶対リスクは「その人が10年で発症する確率は◯%」という見方です。目標値づくりに使われるのは、後者(絶対リスク)のほうです。
▶ 次回:糖尿病があると、コレステロール管理はどう変わる?
「持病があると高リスク」の代表が糖尿病です。なぜ厳しめの目標になるのか、どこまで下げるのかを、次回くわしく解説します。

5糖尿病・高血圧がある方へ

血糖や血圧は、コレステロールと並んで動脈硬化を左右する大きな要素です。あわせて整えることで、血管を守る効果はぐっと高まります。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
糖尿病があるとなぜ“高リスク”になるのか、当院の考え方をまとめています。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
血圧の管理は、脳卒中や心臓病の予防に直結します。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
  2. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
📚 脂質異常症シリーズ
第23回:お薬との上手な付き合い方(アドヒアランス) → 前の記事へ
第24回:同じコレステロール値でも、目標は人それぞれ(この記事)
第25回:糖尿病があると管理はどう変わる? → 次の記事へ

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