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  • HDL(善玉)コレステロールが高すぎると言われたら?|今治市・かとう内科

「善玉は高いほど良い」は、じつは正しくない

100mg/dL以上の極端な高値は、むしろリスクと関連することがある

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第13回

HDL(善玉)コレステロールが
「高すぎる」と言われたら?
──「善玉は高いほど良い」のウソ・ホント

「善玉は高いほうがいい」——多くの方がそう信じています。だから健診で「善玉が高い」と出ると、むしろ喜ぶ人も。ところが近年の大規模研究で、善玉が“極端に高い”人はかえってリスクが上がることがわかってきました。今回は、長く信じられてきた「善玉神話」を、最新のエビデンスで見直します。

この記事で答えること

健診でHDL(善玉)コレステロールが高すぎると言われました。善玉だから、高いほど良いんじゃないの? 何か調べたほうがいい?

🔑 まずここだけ押さえる
  • HDL(善玉)が100mg/dL以上になると「高HDLコレステロール血症」。明確な定義はありませんが、ひとつの目安です。
  • 「善玉は高いほど良い」は、じつは正しくありません。極端に高いと、むしろリスクが上がるという研究があります。
  • 原因は、体質(CETP欠損症など)と、お酒・肝臓の病気・甲状腺・肺の病気(COPD)などの二次性。
  • とくに飲酒が背景のことが多く、肝臓の状態のチェックが大切です。
  • 当院では、極端な高値の方には動脈硬化のチェック(心電図・頸動脈エコーなど)と、リスク全体の管理を行います。

1「善玉は高いほど良い」は、じつは正しくない

HDL(善玉)コレステロールは、血管の余分なコレステロールを回収する“お掃除役”。だから長いあいだ、「善玉は高いほど、心臓も血管も守られる」と考えられてきました。健診で善玉が高いと、ホッとする方も多いと思います。

ところが——ここが今回いちばんお伝えしたいところです——善玉が“極端に高い”人は、むしろ亡くなるリスクが上がることが、近年の大規模研究でわかってきました。善玉とリスクの関係は、まっすぐな右肩下がりではなく、「U字(Uの字)」を描きます。低すぎても、高すぎても良くない、ということです。

 
低い
 
ほどよい
 
やや高い
 
高い
 
極端に高い
← 善玉(HDL)コレステロール → / 縦:亡くなるリスクのイメージ
📑 根拠:デンマークの大規模研究では、善玉が極端に高い群で全死亡(あらゆる原因で亡くなる)リスクの上昇が認められました。日本国内の9つのコホート研究をまとめたEPOCH-JAPANでも同じ傾向が確認され、善玉が90mg/dLを超えると心血管イベントのリスクがむしろ増える可能性が報告されています。さらに、善玉を強く上げる薬(CETP阻害薬)が、心臓を守る効果を示さなかったことも、「善玉そのものを上げれば安心」とは限らないことを裏づけています。

つまり、善玉が高いこと自体を“ごほうび”のように受け取るのではなく、なぜ高いのか・ほかにリスクはないかを確かめることが大切なのです。

🐦 第2回:HDLは「善玉だから安心」?──その思い込みを検証 →
善玉は本当に高いほど良いのか。「善玉神話」をエビデンスでていねいに見直します。

2なぜ善玉が高くなる?──「体質」と「お酒・病気」

善玉が極端に高くなる原因は、大きく分けて「生まれつきの体質」と「お酒や別の病気(二次性)」の2つです。

🧬
体質(原発性)
CETP欠損症が代表で、日本人に多い体質です。善玉を運び替える蛋白(CETP)が生まれつき少なく、善玉が健康な人の3~4倍にもなります。
🍶
お酒・病気(二次性)
長期の過度な飲酒が代表。ほかに原発性胆汁性胆管炎(PBC)などの肝臓の病気、甲状腺機能低下症、肺の病気(COPD)などでも上がることがあります。

とくにお酒は、善玉を上げる代表的な原因です。だから当院では、善玉が高い方には飲酒の量・肝臓の状態・内服薬を確認します。肝臓の数値に異常があるときは、PBCなどの肝臓の病気が隠れていないかもチェックし、必要に応じて消化器の専門へご紹介します。

📑 CETP欠損症の落とし穴:CETP欠損症では善玉が著しく上がる一方で、最近の研究では、このタイプに伴う悪玉(LDL)の低下が、必ずしも安心につながらない可能性が指摘されています。善玉が高いからと油断せず、悪玉の値にも注意を払う必要がある——これがCETP欠損症の見落とせないポイントです。

3善玉が高いと言われたら、何を調べる?

善玉が高いこと自体に“治療”が必要なわけではありません。大切なのは、動脈硬化が進んでいないかをチェックし、ほかのリスクを管理することです。当院では、極端な高値の方に対して、次のような評価を行います。

🩺 こんなことを確認します
  • 飲酒・内服歴の確認、肝臓・甲状腺の血液検査。
  • 胸の症状(狭心症)がないかの確認、必要に応じて心電図。
  • 動脈硬化のリスクが高い方には頸動脈エコーなどのスクリーニング。
  • 血圧・血糖・喫煙・悪玉(LDL)など、ほかの動脈硬化リスクの管理。
⚖️ ここでも「数字だけで判断しない」
善玉が高い=良い、とも、悪い、とも一概には言えません。大切なのは、善玉という一つの数字に振り回されず、あなた全体の動脈硬化リスクを見積もって、できる対策を着実に進めること。胸の痛みなど気になる症状があれば、迷わずご相談ください。

4当院でできること・専門へつなぐ目安

当院では、健診などで見つかった高HDL(善玉)について、原因の見極め(お酒・肝臓・甲状腺・体質)と、動脈硬化リスク全体の管理を担当します。多くの方は、飲酒や生活の見直し、ほかのリスクの管理で対応できます。

一方で、狭心症が疑われる場合は循環器の専門へ、肝臓の病気(PBCなど)が疑われる場合は消化器の専門へご紹介します。「善玉が高いから安心」と決めつけず、まずは“なぜ高いのか・ほかにリスクはないか”を一緒に確かめましょう。

▶ 次回:Lp(a)(エルピーエー)が高いと言われたら?
あまり聞き慣れない「Lp(a)」。じつは、生活では変わりにくい“体質の隠れたリスク”として、いま世界中で注目されています。新しい薬の動向も解説します。(準備中)

5糖尿病・高血圧がある方はとくに注意

善玉が高くても、糖尿病・高血圧・喫煙などのリスクがあれば、動脈硬化は進みます。「善玉が高いから大丈夫」とほかのリスクを軽視しないことが大切です。あわせてご覧ください。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
善玉の数字に関わらず、糖尿病があれば動脈硬化のリスクは高まります。あわせて管理を。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
高血圧が重なると、心筋梗塞・脳卒中のリスクが相乗的に高まります。脂質とあわせて管理を。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
  2. Madsen CM, et al. Eur Heart J. 2017;38(32):2478-86.
  3. Hirata A, et al. J Clin Lipidol. 2018;12(3):674-84.(EPOCH-JAPAN)
  4. Nomura A, et al. Circ Res. 2017;121(1):81-8.
  5. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
📚 脂質異常症シリーズ
第2回:HDLは「善玉だから安心」?の検証 → 記事を読む
第12回:コレステロールが低すぎると言われたら? → 前の記事へ
第13回:HDL(善玉)が高すぎると言われたら?(この記事)
第14回:Lp(a)が高いと言われたら?(準備中)→ 次の記事へ

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