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HDL(善玉)が低いと言われたら、まず「生活と病気」を見直す

25mg/dL未満の著しい低値は「体質(原発性)」を疑う

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第11回

HDL(善玉)コレステロールが
低いと言われたら?
──「悪玉だけ」じゃない、もう一つのサイン

コレステロールというと「悪玉(LDL)を下げる」話ばかり。でも健診で「善玉(HDL)が低い」と言われて、戸惑った方も多いのではないでしょうか。じつは善玉が低い状態は、それ自体が動脈硬化のリスク。さらに、ごくまれですが「生まれつき善玉が作れない体質」が隠れていることもあります。今回は「善玉が低い」と言われたときの意味を整理します。

この記事で答えること

健診でHDL(善玉)コレステロールが低いと言われました。悪玉が高いわけじゃないのに、何が心配なの? どうすれば上がるの?

🔑 まずここだけ押さえる
  • HDL(善玉)が40mg/dL未満で「低HDLコレステロール血症」。悪玉とは別の、独立した動脈硬化リスクです。
  • 多くは生活習慣(喫煙・肥満・2型糖尿病など)が背景の「二次性」。これは見直せば改善が期待できます。
  • 25mg/dL未満の著しい低値では、生まれつき善玉が作れない「原発性(体質)」の可能性があり、精査が必要です。
  • 原発性には、タンジール病・LCAT欠損症・アポリポ蛋白A-I欠損症などの指定難病があります。
  • 当院は原因の見極めと日常管理の“入口”。体質が疑われるときは専門の研究班・施設へつなぎます。

1HDL(善玉)が低いと言われたら、まず「生活と病気」を見直す

HDL(善玉)コレステロールは、血管にたまった余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ“お掃除役”です。これが40mg/dL未満だと「低HDLコレステロール血症」と判断します。善玉が低い人は、悪玉(LDL)が高くなくても動脈硬化が進みやすいことがわかっており、悪玉とは別の、独立した危険因子として注意します。

そして、善玉が低い原因の多くは生活習慣や別の病気(二次性)です。ここはまず見直せるポイント。代表的なものを挙げます。

HDL(善玉)を下げる「生活・病気」の代表例
要因 ひとこと
喫煙 たばこは善玉を下げる代表。禁煙で上がることが期待できます。
肥満・運動不足 内臓脂肪が増えると善玉は下がりがち。減量・運動で改善します。
2型糖尿病
(メタボ)
中性脂肪が高く善玉が低い、という組み合わせがよくみられます。
その他 慢性腎不全、栄養不良、一部の薬剤など。背景として確認します。
🚭 善玉を上げる近道
善玉を“薬で上げる”ことは難しいのですが、禁煙・減量・運動・お酒の見直しといった生活改善は、善玉にプラスに働きます。中性脂肪が高い方は、中性脂肪を下げると善玉が一緒に上がることもあります。

2どれくらい低いと「体質」を疑う?

善玉の低さも、程度によって考えることが変わります。下の段階を見てください。25mg/dL未満という著しい低さになると、生活習慣だけでは説明しにくく、生まれつき善玉が作れない「原発性(体質)」の可能性が出てきます。

40以上
基準内です。
40未満
低HDLコレステロール血症。まず生活・病気の見直しを。
25未満
著しい低値。生まれつきの体質(原発性)を疑い、精査します。

3生まれつき善玉が作れない「体質」(原発性)

ごくまれですが、善玉を作る仕組みに生まれつきの不具合があり、著しく善玉が低くなる体質があります。代表的なものを3つ、やさしく紹介します。いずれも指定難病で、医療費の助成が受けられる場合があります。

善玉が著しく低くなる「体質」(原発性低HDL-C血症)
体質の名前 特徴のヒント
タンジール病
(指定難病261)
善玉がほとんど作れない体質。のどの扁桃がオレンジ色に大きくなる、肝臓や脾臓のはれ、手足のしびれなどが手がかり。
LCAT欠損症
(指定難病259)
善玉を“成熟”させる酵素の不具合。黒目のまわりの濁り(角膜混濁)、貧血、腎臓の障害が出ることがあります。
アポリポ蛋白A-I欠損症
(指定難病に申請中)
善玉の主成分が欠ける体質。若くして動脈硬化(狭心症・心筋梗塞)を起こすことがあります。

これらは、ただ善玉が低いだけでなく、体のあちこちにサインが出ることがあります。だから当院では、著しく善玉が低い方には、症状やほかの検査値もあわせて確認し、体質が疑わしければ専門の研究班・施設へご相談します。

⚠ HDL 25未満は精査 ✓ 指定難病(助成あり) ✓ 家族歴も手がかり

4善玉が低いと、なぜ心配?──動脈硬化との関係

善玉が低い状態は、悪玉(LDL)が高いのとは別に、独立して動脈硬化のリスクになります。実際、善玉が低いほど、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増えることが、日本人を含む研究で示されています。タンジール病やLCAT欠損症などの著しい低値でも、冠動脈疾患のリスクが高いことが報告されています。

📑 根拠:低HDLコレステロール血症は、高LDLコレステロール血症とは独立した動脈硬化の危険因子です。日本人を対象とした研究でも、善玉が低い群ほど冠動脈疾患のリスクが高いことが示されています。一方で、善玉を“薬で上げれば必ず心臓が守られる”とは限らないことも、近年わかってきました。だからこそ、善玉の数字だけを追うのではなく、動脈硬化のリスク全体を管理することが大切です。
⚖️ 「上げれば安心」ではない、という誠実な話
善玉は“善玉”という名前から「高ければ高いほど良い」と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。善玉を上げる薬が、必ずしも心臓を守るとは限らなかった、という研究もあります。低い善玉は「危険のサイン」として受け止め、禁煙・減量・運動、そして悪玉や血圧・血糖の管理といった、できることを着実に進めるのが現実的です。
🐦 第2回:HDLは「善玉だから安心」?──その思い込みを検証 →
善玉は本当に高いほど良いのか。「善玉神話」をエビデンスで見直します。

5当院でできること・専門へつなぐ目安

当院では、健診などで見つかった低HDL(善玉)について、生活習慣や別の病気(二次性)の見直しと、動脈硬化リスク全体の管理を担当します。多くの方は、禁煙・減量・運動・お酒の見直しと、悪玉や血圧・血糖の管理で、リスクを下げていけます。

一方で、HDLが25mg/dL未満と著しく低い場合や、体に特徴的なサイン(扁桃のはれ・角膜の濁りなど)があり、生まれつきの体質が疑われる場合は、専門的な検査・遺伝学的検査が必要になるため、専門の研究班・施設へご紹介します。「善玉が低いだけ」と見過ごさず、まずは原因を一緒に整理しましょう。

▶ 次回:コレステロールが「低すぎる」と言われたら?
今度は逆に、悪玉(LDL)が“低すぎる”と言われたとき。じつはこれも、見逃せない体質や病気のサインのことがあります。(準備中)

6糖尿病・高血圧がある方はとくに注意

低HDL(善玉)は、糖尿病・肥満・高血圧などと一緒に現れることが多く(いわゆるメタボリックシンドローム)、これらが重なると動脈硬化のリスクは大きく高まります。あわせてご覧ください。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
2型糖尿病では「中性脂肪が高く善玉が低い」組み合わせがよくみられます。あわせて管理を。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
高血圧が重なると、心筋梗塞・脳卒中のリスクが相乗的に高まります。脂質とあわせて管理を。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
  2. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
  3. Kitamura A, et al. Circulation. 1994;89(6):2533-9.
  4. Tietjen I, et al. Biochim Biophys Acta. 2012;1821(3):416-24.
  5. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究班」資料.
📚 脂質異常症シリーズ
第2回:HDLは「善玉だから安心」?の検証 → 記事を読む
第10回:中性脂肪がとても高いと言われたら? → 前の記事へ
第11回:HDL(善玉)が低いと言われたら?(この記事)
第12回:コレステロールが低すぎると言われたら?(準備中)→ 次の記事へ

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