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HDL(善玉)が低いと言われたら、まず「生活と病気」を見直す
25mg/dL未満の著しい低値は「体質(原発性)」を疑う
HDL(善玉)コレステロールが
低いと言われたら?
──「悪玉だけ」じゃない、もう一つのサイン
コレステロールというと「悪玉(LDL)を下げる」話ばかり。でも健診で「善玉(HDL)が低い」と言われて、戸惑った方も多いのではないでしょうか。じつは善玉が低い状態は、それ自体が動脈硬化のリスク。さらに、ごくまれですが「生まれつき善玉が作れない体質」が隠れていることもあります。今回は「善玉が低い」と言われたときの意味を整理します。
健診でHDL(善玉)コレステロールが低いと言われました。悪玉が高いわけじゃないのに、何が心配なの? どうすれば上がるの?
- HDL(善玉)が40mg/dL未満で「低HDLコレステロール血症」。悪玉とは別の、独立した動脈硬化リスクです。
- 多くは生活習慣(喫煙・肥満・2型糖尿病など)が背景の「二次性」。これは見直せば改善が期待できます。
- 25mg/dL未満の著しい低値では、生まれつき善玉が作れない「原発性(体質)」の可能性があり、精査が必要です。
- 原発性には、タンジール病・LCAT欠損症・アポリポ蛋白A-I欠損症などの指定難病があります。
- 当院は原因の見極めと日常管理の“入口”。体質が疑われるときは専門の研究班・施設へつなぎます。
1HDL(善玉)が低いと言われたら、まず「生活と病気」を見直す
HDL(善玉)コレステロールは、血管にたまった余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ“お掃除役”です。これが40mg/dL未満だと「低HDLコレステロール血症」と判断します。善玉が低い人は、悪玉(LDL)が高くなくても動脈硬化が進みやすいことがわかっており、悪玉とは別の、独立した危険因子として注意します。
そして、善玉が低い原因の多くは生活習慣や別の病気(二次性)です。ここはまず見直せるポイント。代表的なものを挙げます。
| 要因 | ひとこと |
|---|---|
| 喫煙 | たばこは善玉を下げる代表。禁煙で上がることが期待できます。 |
| 肥満・運動不足 | 内臓脂肪が増えると善玉は下がりがち。減量・運動で改善します。 |
| 2型糖尿病 (メタボ) |
中性脂肪が高く善玉が低い、という組み合わせがよくみられます。 |
| その他 | 慢性腎不全、栄養不良、一部の薬剤など。背景として確認します。 |
2どれくらい低いと「体質」を疑う?
善玉の低さも、程度によって考えることが変わります。下の段階を見てください。25mg/dL未満という著しい低さになると、生活習慣だけでは説明しにくく、生まれつき善玉が作れない「原発性(体質)」の可能性が出てきます。
3生まれつき善玉が作れない「体質」(原発性)
ごくまれですが、善玉を作る仕組みに生まれつきの不具合があり、著しく善玉が低くなる体質があります。代表的なものを3つ、やさしく紹介します。いずれも指定難病で、医療費の助成が受けられる場合があります。
| 体質の名前 | 特徴のヒント |
|---|---|
| タンジール病 (指定難病261) |
善玉がほとんど作れない体質。のどの扁桃がオレンジ色に大きくなる、肝臓や脾臓のはれ、手足のしびれなどが手がかり。 |
| LCAT欠損症 (指定難病259) |
善玉を“成熟”させる酵素の不具合。黒目のまわりの濁り(角膜混濁)、貧血、腎臓の障害が出ることがあります。 |
| アポリポ蛋白A-I欠損症 (指定難病に申請中) |
善玉の主成分が欠ける体質。若くして動脈硬化(狭心症・心筋梗塞)を起こすことがあります。 |
これらは、ただ善玉が低いだけでなく、体のあちこちにサインが出ることがあります。だから当院では、著しく善玉が低い方には、症状やほかの検査値もあわせて確認し、体質が疑わしければ専門の研究班・施設へご相談します。
4善玉が低いと、なぜ心配?──動脈硬化との関係
善玉が低い状態は、悪玉(LDL)が高いのとは別に、独立して動脈硬化のリスクになります。実際、善玉が低いほど、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増えることが、日本人を含む研究で示されています。タンジール病やLCAT欠損症などの著しい低値でも、冠動脈疾患のリスクが高いことが報告されています。
5当院でできること・専門へつなぐ目安
当院では、健診などで見つかった低HDL(善玉)について、生活習慣や別の病気(二次性)の見直しと、動脈硬化リスク全体の管理を担当します。多くの方は、禁煙・減量・運動・お酒の見直しと、悪玉や血圧・血糖の管理で、リスクを下げていけます。
一方で、HDLが25mg/dL未満と著しく低い場合や、体に特徴的なサイン(扁桃のはれ・角膜の濁りなど)があり、生まれつきの体質が疑われる場合は、専門的な検査・遺伝学的検査が必要になるため、専門の研究班・施設へご紹介します。「善玉が低いだけ」と見過ごさず、まずは原因を一緒に整理しましょう。
6糖尿病・高血圧がある方はとくに注意
低HDL(善玉)は、糖尿病・肥満・高血圧などと一緒に現れることが多く(いわゆるメタボリックシンドローム)、これらが重なると動脈硬化のリスクは大きく高まります。あわせてご覧ください。
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
- 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
- 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
- Kitamura A, et al. Circulation. 1994;89(6):2533-9.
- Tietjen I, et al. Biochim Biophys Acta. 2012;1821(3):416-24.
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究班」資料.
