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LDLが高いと言われたら、まず「3つの原因」を考える
LDL 250mg/dL以上は「体質(家族性高コレステロール血症)」を強く疑う
LDL(悪玉)コレステロールが
とても高いと言われたら?
──食べすぎ? それとも「体質」?
健診の結果票に「LDLコレステロール 高値」と書かれて返ってきた。でも痛くもかゆくもないし、お肉を控えればいいのかな……。じつはLDLが高い原因は大きく3つあり、なかには「生まれつきの体質」が隠れていることもあります。今回からは“診察室でよく出る質問”に専門医がひとつずつお答えするシリーズ。第1問は「LDLが高い」です。あなたのことかもしれません。
健診でLDL(悪玉)コレステロールがすごく高いと言われました。食事のせい? それとも体質? まず何を調べればいいの?
- LDLが140mg/dL以上で「高LDLコレステロール血症」。男女問わず同じ基準です。
- 原因は「生活習慣」「ほかの病気(二次性)」「体質(遺伝)」の3つ。1つだけのことも、混ざっていることもあります。
- とくに180mg/dL以上、ましてや250mg/dL以上なら、生まれつきの体質「家族性高コレステロール血症(FH)」を強く疑います。FHは200~300人に1人と意外に多い病気です。
- 甲状腺・腎臓・糖尿病など、別の病気が背景に隠れていることも。原因を見極めてから方針を決めるのが大切です。
- 当院は検査・診断・日常のコレステロール管理の“入口”。高度な専門治療が必要なときは、適切な施設へご紹介します。
1LDLが高いと言われたら、まず「3つの原因」を考える
LDL(いわゆる悪玉)コレステロールは、男女を問わず140mg/dL以上で「高い」と判断します。でも、ここでいきなり「食べすぎだ」と決めつけないことが大切です。私たちはまず、原因を次の3つに分けて考えます。
大事なのは、この3つは「どれか1つ」とは限らないということ。たとえば、もともとFHの体質がある人に甲状腺の不調が重なり、さらに食べすぎが加わると、LDLは何重にも跳ね上がります。だからこそ「数字だけ」で慌てず、何が起きているのかを一つずつ確かめていきます。
2①生活習慣によるもの──「飽和脂肪酸」がカギ
一時的に食べすぎただけで、LDLが大きく上がり続けることは多くありません。問題になりやすいのは「飽和脂肪酸」をとり続けている状態です。具体的には、脂身の多い肉、バターや生クリームなどの乳製品、チョコレートなどに多く含まれます。コレステロールそのものを多く含む食品に加えて、この飽和脂肪酸がLDLを押し上げる主役になります。
もちろん、食事の見直しは治療の土台です。ただし——ここが大切なところですが——食事をどれだけ頑張ってもLDLが下がりきらない場合は、生活習慣“だけ”が原因ではないサインかもしれません。次に説明する「ほかの病気」や「体質」が隠れている可能性を考えます。
3②ほかの病気が隠れていることも(二次性)
LDLが高いとき、その背景に別の病気が隠れていることがあります。これを「二次性(続発性)」と呼びます。原因を治療すると、LDLも一緒に改善することが多いので、見逃さないことが大切です。とくに次の3つは、コレステロールの診療で必ずチェックします。
| 背景にある病気 | ヒントになるサイン |
|---|---|
| 甲状腺機能低下症 | むくみ、脈がゆっくり、疲れやすい、寒がり。治療でLDLも下がります。 |
| ネフローゼ症候群 (腎臓の病気) |
強いむくみ、尿の泡立ち。LDLがかなり高くなることがあります。 |
| 糖尿病 | LDLは高いことも低いこともありますが、質の悪い小型のLDL(small dense LDL)が増えやすく注意が必要。 |
このほか、原発性胆汁性胆管炎・閉塞性黄疸・クッシング症候群・褐色細胞腫のほか、ステロイドや一部のホルモン剤(経口避妊薬など)といったお薬が原因になることもあります。だから当院では、コレステロールが高い方には、必要に応じて甲状腺・腎臓・肝臓・血糖の検査もあわせて確認します。
4③「体質」かもしれない──家族性高コレステロール血症(FH)
生活習慣でもほかの病気でもうまく説明できないほどLDLが高いとき、私たちが強く疑うのが家族性高コレステロール血症(FH)です。これは、血液中のLDLを回収する“掃除機”(LDL受容体)が生まれつきうまく働かない体質。そのため、生まれたときからずっとLDLが高い状態が続きます。
FHは「珍しい難病」ではありません。最も多いタイプ(ヘテロ接合体)は一般人口の200~300人に1人。日本中に数十万人がいる計算で、あなたの身近にも必ずいる、ごくありふれた体質なのです。問題は、その多くが気づかれないまま過ごしていること。日本でFHと診断されている人は、推定患者の1%にも満たないと報告されています。
LDLの値が、どれくらい「体質」を疑わせるか
LDLの数字そのものが、FHを疑う強さの目安になります。下の段階を見てください。あくまで目安ですが、数字が高いほど「体質」の可能性が上がっていきます。
数字だけじゃない──家族歴と「身体のサイン」
FHは血液検査だけで決まるものではありません。次のような手がかりがそろうほど、可能性が高まります。とくに「若くして心筋梗塞・突然死した親族がいる」は重要なサインです。
- 家族歴:血のつながった家族に、コレステロールが高い人やFHの人がいる。若い(男性55歳未満・女性65歳未満が目安)うちに心筋梗塞・狭心症になった親族や、原因不明の突然死がある。
- 身体のサイン:アキレス腱が分厚い、まぶたや皮膚にコレステロールの“コブ”(黄色腫)、50歳より前に目の縁に白い輪(角膜輪)。
- 本人の既往:自分自身が若くして狭心症・心筋梗塞を経験している。
これらの「身体のサイン」は、見ればFHにグッと近づける大切な所見です。くわしくはシリーズの専用記事で写真とともに解説しています(まぶたの黄色いできもの・目の白い輪・アキレス腱の腫れ)。
もうひとつの体質:シトステロール血症
FHとよく似て、若くからLDLが高く黄色腫が出る、まれな体質にシトステロール血症があります。こちらは植物に含まれるステロールを体の外に出す仕組みの異常で、日本にも一定数の患者さんがいると考えられています。スタチンが効きにくいのに、エゼチミブという飲み薬がよく効くのが特徴です。「コレステロールの薬(スタチン)が効きにくい」ときは、こうした体質も念頭に置いて検査を進めます。
5すでにお薬を飲んでいて「元の値」がわからないとき
「もう何年も前からコレステロールの薬を飲んでいて、薬を始める前の値がわからない」——これもよくあるご相談です。じつは、治療中のLDLからおおよその“元の値”を推定する方法が研究上は広く使われています。ざっくり言うと、治療中のLDLを0.7で割り戻すと元の値の目安になります。
6大切なのは「家族で」「早く」──そして当院の役割
FHやシトステロール血症は、親から子へ受け継がれる体質です。お一人が見つかったということは、ご家族にも同じ体質の方がいる可能性があるということ。家族で調べることで、まだ気づいていない方を早く見つけ、早く守ることができます(これを「カスケードスクリーニング」と呼びます)。
当院では、健診などで見つかった高コレステロールについて、原因の見極め(生活習慣・ほかの病気・体質)から、日常のコレステロール管理までを担当します。FHが強く疑われ、遺伝子検査や、より高度な専門治療(最重症型の治療など)が必要な場合は、適切な専門施設へご紹介します。まずは「自分のLDLが、なぜ高いのか」を一緒に整理するところから始めましょう。
具体的な下げ方(飲み薬や注射)は、シリーズの治療編でくわしく解説しています。あわせてご覧ください。
新しい経口LDL低下薬―オビセトラピブが欧州で承認
2026年9月21日、Menarini社とNewAmsterdam Pharma社は、オビセトラピブ(obicetrapib)を含む2製剤が欧州委員会に承認されたと発表しました。オビセトラピブとして世界で初めての承認です。対象は、家族性を含む原発性高コレステロール血症や、混合型脂質異常症の成人です。
オビセトラピブは、CETPという脂質の移動に関わるタンパク質の働きを抑える、1日1回の飲み薬です。スタチンやPCSK9阻害薬とは仕組みが異なります。欧州の商品名は、オビセトラピブ10mgのUbesloと、オビセトラピブ10mgにエゼチミブ10mgを組み合わせたEvlarcoです。
第III相のBROADWAY・BROOKLYN・TANDEM試験をまとめた企業発表では、既存の脂質治療に追加した場合の、プラセボとの比較でのLDLコレステロール低下効果を、オビセトラピブ単剤で最大約40%、エゼチミブとの配合剤で約50%と説明しています。試験ごとに対象や条件が異なり、どの患者さんでも同じだけ下がるという意味ではありません。
大切なのは、LDLの数値を下げることと、心筋梗塞や脳卒中を実際に減らすことは、分けて確かめる必要があるという点です。その予防効果を調べる心血管アウトカム試験PREVAILは継続中で、今回の承認発表だけから、オビセトラピブが心筋梗塞や脳卒中を減らすと結論付けることはできません。
これはEUでの承認に関する情報で、日本での承認や保険適用を示すものではありません。当院での処方開始のご案内でもありません。新しい薬のニュースを理由に、今のスタチンやエゼチミブなどを自己判断で中止・変更しないでください。
参考:Menarini/NewAmsterdam Pharma:Ubeslo・Evlarcoの欧州委員会承認に関する公式発表(2026年9月21日、GlobeNewswire配信)/EMA:Ubesloの製品情報ページ。
7糖尿病・高血圧がある方はとくに注意
高いLDLに糖尿病や高血圧が重なると、動脈硬化のリスクは足し算ではなく“かけ算”で高まります。LDLの管理目標もより厳しくなります。あわせてご覧ください。
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
- 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
- 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
- 日本動脈硬化学会 FH診療ガイドライン作成委員会:成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022.日本動脈硬化学会,2022.
- Mabuchi H. J Atheroscler Thromb. 2017;24(3):189-207.
- Liu DJ, et al. Nat Genet. 2017;49(12):1758-66.(治療下LDLからの基礎値推定)
- NewAmsterdam Pharma/Menarini Group:Ubeslo(obicetrapib)・Evlarco(obicetrapib+ezetimibe)の欧州委員会承認に関する発表.2026年9月21日(GlobeNewswire配信).
