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  • 家族性高コレステロール血症(FH)の治療は?最新の薬まで専門医が解説|かとう内科(今治)

家族性高コレステロール血症(FH)はどう治療する?

ヘテロ/ホモ接合体の治療と、新しい薬まで根拠とともに

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第8回

家族性高コレステロール血症(FH)の治療
──“体質”のコレステロールをどう下げる?

生まれつきLDL(悪玉)がとても高い体質、家族性高コレステロール血症(FH)。第3回では「見つける」話をしましたが、今回は「治療」です。多くの方は、しっかり治療すれば心筋梗塞のリスクを大きく下げられます。一方、ごくまれな最重症型には専門的な治療が必要です。新しい飲み薬や点滴、血液の浄化(LDLアフェレシス)まで、最新の選択肢を整理します。

この記事で答えること

家族性高コレステロール血症(FH)と言われました(家族にいます)。どんな治療をするの? ふつうの高コレステロールと何が違う?

🔑 まずここだけ押さえる
  • FHは生まれつきLDLが高い体質。放置すると若くても動脈硬化が進みますが、しっかり治療すればリスクを大きく下げられます。
  • 多くは「ヘテロ接合体」(200~300人に1人)。スタチン+エゼチミブ+必要ならPCSK9でしっかり下げます。
  • まれに最重症の「ホモ接合体」があり、小児期から動脈硬化が進むため、専門医での早期治療が必要です。
  • 新しい武器も登場:飲み薬(MTP阻害薬)、点滴(ANGPTL3阻害薬・2024年)、血液浄化(LDLアフェレシス)。早く・併用して下げるのが鍵です。
  • FHは遺伝するので、ご家族にも検査・治療のチャンスを。

1FHはどんな体質?──治療の出発点

FHは、血液中のLDLを回収する“掃除機”(LDL受容体)が生まれつきうまく働かない体質です。そのため、生まれたときからずっとLDLが高い状態が続きます。この「長年にわたる高LDL」こそが、若くても動脈硬化が進む理由です。実際、FHの方の動脈硬化は男性では20代、女性では30代から始まるとされ、年齢が若いからと油断はできません。

FHには、体質の遺伝子を1つ持つ「ヘテロ接合体」(200~300人に1人と意外に多い)と、2つ持つ「ホモ接合体」(ごくまれだが重症)があります。治療の考え方が大きく異なるので、分けて見ていきましょう。なお、FHを“見つける”手がかり(アキレス腱の厚みなど)は第3回でくわしく解説しています。

🦴 第3回:FHを“見つける”──検査とアキレス腱 →
どんな人にFHを疑い、どう確かめるか。アキレス腱の厚さや家族歴が手がかりになります。

2ヘテロ接合体の治療──しっかり下げれば守れる

多くを占めるヘテロ接合体は、早くから生活習慣を整え、薬でLDLをしっかり下げることで、心筋梗塞などのリスクを大きく下げられます。使う薬は、これまでの回でご紹介したものがそのまま当てはまります。

💊 治療の進め方(イメージ)
  • まずスタチン(必要に応じて最大耐用量まで)。
  • 足りなければエゼチミブを追加(▶第5回)。
  • それでも管理目標に届かなければPCSK9阻害薬(注射)を追加(▶第6回)。

管理目標のLDLは、一次予防で100mg/dL未満、すでに心筋梗塞などを起こした二次予防では70mg/dL未満が目安です。高強度のスタチンとエゼチミブを併用しても十分に下がらないときは、より重症のタイプ(ホモ接合体)を疑い、専門医に相談することが大切です。

3ホモ接合体──早期診断と“総力戦”

ホモ接合体は、掃除機(LDL受容体)がほとんど働かないため、LDLが平均500mg/dL台、ときに1,000mg/dLを超えることもあります。小児期から動脈硬化が進む最重症型で、早期の診断と、早くからの強力な治療が予後を大きく左右します。皮膚や腱にできるコレステロールの“コブ”(黄色腫)が乳幼児期から現れることがあり、早期発見の手がかりになります。

📑 ここが重要:ホモ接合体では、スタチンやPCSK9阻害薬の効果が限られることがあります。これらは“掃除機(LDL受容体)を増やす”薬なので、掃除機そのものがほとんどない人では力を発揮しきれないためです。そこで、受容体に頼らない仕組みの治療が必要になります。なお、ホモ接合体は指定難病で、医療費の助成が受けられます。

4ホモ接合体の新しい治療

近年、受容体に頼らずにLDLを下げる治療が増え、選択肢が広がっています。

① MTP阻害薬(飲み薬)

肝臓でLDLのもとになる粒子が作られる工程をブロックする飲み薬です。受容体に頼らずにLDLを半分ほどに下げられる、ホモ接合体では貴重な内服薬です。下痢や脂肪肝が出やすいため、脂肪を控える食事指導をしながら、少量からゆっくり増やすのがコツです。

② ANGPTL3阻害薬(点滴・2024年承認)

2024年に承認された新しい点滴の薬です。これまでとはまったく違う仕組みで効くため、掃除機(受容体)が完全に欠けたタイプの人でもLDLを半減させられます。4週間に1回の点滴で、小児にも使えるのが大きな利点です。

📑 根拠:ANGPTL3阻害薬(エビナクマブ)は、ホモ接合体の患者さんでLDLをおよそ半分に下げ、その効果はLDL受容体の働きが完全に失われたタイプ(最重症)でも変わらなかったことが報告されています。これまで打つ手の限られていた患者さんにとって、大きな前進です。

③ LDLアフェレシス(血液浄化)──最後の砦

体外に血液を回して、装置でLDLを直接取り除く治療です。1~2週ごとに行い、LDLを大きく下げます。スタチンでは下げられないLp(a)やPCSK9も効率よく除けるのが特徴で、薬だけでは足りない重症例の“最後の砦”として、今も重要な役割を担っています。

⚠ 専門施設での治療 ✓ 小児期からの導入も ✓ 妊娠中も注意して実施可
🤝 大切なのは「総力戦」
ホモ接合体の治療は、ひとつの薬で解決するものではありません。効果のある治療をできるだけ早期から、組み合わせて使う「総力戦」が重要です。治療の選択肢は年々増えており、予後も少しずつ改善してきています。

5大切なのは「家族で」「早く」

FHは親から子へ受け継がれる体質です。お一人が見つかったということは、ご家族(親・きょうだい・お子さん)にも同じ体質の方がいる可能性があるということ。家族で調べることで、まだ気づいていない方を早く見つけ、早く守ることができます。FHは、見つけて治療すれば予後が大きく変わる病気です。「家族にコレステロールが高い人が多い」「若くして心筋梗塞になった親族がいる」——そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。当院では、FHの拾い上げや検査を行い、必要に応じて専門施設へのご紹介もいたします。

▶ 次回からは「診察室の質問編」へ
ここまでで“コレステロールの薬”はひと通り解説しました。次回からは、診察室で患者さんが本当に聞きたい質問に、ひとつずつ専門医がお答えしていきます。(準備中)

6糖尿病・高血圧がある方はとくに

FHに糖尿病や高血圧が重なると、動脈硬化のリスクはさらに高まります。LDLの管理目標もより厳しくなります。あわせてご覧ください。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
糖尿病が重なると、FHの方のLDL管理目標はより厳しくなります。糖尿病シリーズでくわしく解説しています。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
高血圧が重なると、心筋梗塞・脳卒中のリスクが相乗的に高まります。FHの方はとくに注意が必要です。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
  2. 日本動脈硬化学会 FH委員会:成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン フォーカスアップデート2025.
  3. 日本小児科学会・日本動脈硬化学会 合同:小児家族性高コレステロール血症診療ガイドライン フォーカスアップデート2025.
  4. Raal FJ, et al. N Engl J Med. 2020;383(8):711-20.(エビナクマブ/ANGPTL3)
  5. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
📚 脂質異常症シリーズ
第5回:スタチンに足す飲み薬 → 記事を読む
第6回:コレステロールの注射の薬(PCSK9) → 記事を読む
第7回:中性脂肪が高い人の薬 → 前の記事へ
第8回:家族性高コレステロール血症(FH)の治療(この記事)
第9回:診察室の質問編(準備中)→ 次の記事へ

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