• トップ
  • ブログ
  • 中性脂肪が高いとどんな薬を使う?EPA・フィブラートを専門医が解説|かとう内科(今治)

中性脂肪が高い人に使う薬と、その選び方は?

残余リスク・フィブラート・EPA/DHA を根拠とともに

2026.09.16 更新

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第7回

中性脂肪が高いとき、どんな薬を使う?
──“残ったリスク”を下げる薬を専門医が解説

悪玉(LDL)を下げても、心筋梗塞・脳梗塞のリスクはゼロにはなりません。この“残ったリスク(残余リスク)”の正体のひとつが、中性脂肪です。中性脂肪が高い人に使うフィブラート、新しいペマフィブラート、そして魚の油(EPA・DHA)について、効く根拠と、「下げれば必ず良いとは限らない」という現実まで、正直に解説します。

この記事で答えること

健診で中性脂肪が高いと言われました。コレステロール(LDL)の薬とは別に、中性脂肪を下げる薬は必要ですか? どんな薬がありますか?

🔑 まずここだけ押さえる
  • LDLを下げても残るリスク(残余リスク)の正体のひとつが、中性脂肪と“脂肪酸のバランス”です。
  • 中性脂肪が高いと、悪玉が小型化したり(small dense LDL)、善玉が減ったりして、動脈硬化が進みやすくなります。
  • 薬にはフィブラート/ペマフィブラート/魚の油(EPA・DHA)があり、目的に応じて選びます。
  • ただし「中性脂肪を下げれば必ずイベントが減る」とは単純には言えないのが正直なところ。中性脂肪が高く善玉が低い人でとくに効きやすいことが分かっています。

1LDLを下げても残る「残余リスク」

スタチンで悪玉(LDL)をしっかり下げても、心筋梗塞・脳梗塞をすべて防げるわけではありません。下げきれずに残るリスクを「残余リスク」と呼びます。その代表が、中性脂肪の高さと脂肪酸のバランスの乱れです。

📑 根拠:スタチンでLDLを70mg/dL未満まで下げた患者さんでも、2年間で一定数が心血管イベントを起こしたという研究(PROVE IT-TIMI 22)があります。そのなかでも、中性脂肪が200mg/dL以上の人は、未満の人よりイベントが多いことが示されました。LDLを下げるだけでは取りきれないリスクが、中性脂肪側に残っているのです。

もう一つ大切なのが「脂肪酸バランス」です。体内の良い油(EPAなど)と、炎症に傾きやすい油(アラキドン酸)の比が下がると、冠動脈のプラークが進みやすくなります。じつはスタチン自体がこのバランスを下げてしまうことが分かっており、だからこそ後で出てくる「魚の油」を足す意味が生まれます。

2中性脂肪が高いと、なぜ良くない?

中性脂肪が高い状態では、その裏で「レムナント」と呼ばれる燃えかすのような粒子や、小型化した悪玉(small dense LDL)が増え、さらに善玉(HDL)が減りやすくなります。これらがそろって、動脈硬化を進めてしまいます。中性脂肪そのものというより、それが連れてくる“悪い仲間たち”がリスクになる、というイメージです。

📏 中性脂肪の管理目標
中性脂肪(TG)の目標は、空腹時で150mg/dL未満、食後など随時で175mg/dL未満とされています。ただし、「いくつまで下げれば心臓・脳の病気が確実に減るか」は、まだはっきり分かっていません。まずは食べ過ぎ・お酒・甘い物・運動不足といった生活習慣の見直しが土台になります。

3中性脂肪を下げる薬「早見表」

表:中性脂肪を下げる主な薬
薬 中性
脂肪
HDL
(善玉)
こんな人に 注意
フィブラート系 ↓↓↓ ↑↑ 中性脂肪がとくに高い/善玉が低い 腎機能・横紋筋融解・胆石
ペマフィブラート
(SPPARMα)
↓↓↓ ↑↑ スタチンと併用したい 比較的安全だが胆石など
魚の油
EPA・DHA
↓ — スタチンに上乗せしたい 出血傾向・胃腸症状

4フィブラートと、新しい「ペマフィブラート」

フィブラート系は、中性脂肪を強力に下げ、善玉(HDL)を上げる薬です。とくに中性脂肪が高く善玉が低いタイプの方に向いています。

📑 根拠:過去の複数の大規模試験(HHS・VA-HIT・FIELD・ACCORD-LIPIDなど)をまとめて見ると、フィブラートの効果は全員一律ではないものの、中性脂肪が高く善玉が低い人たち(サブグループ)では、心血管イベントを有意に減らしたことが分かっています。「効きやすい人」がはっきりしている薬です。

近年登場したペマフィブラート(SPPARMα)は、脂質代謝に関わる部分だけを選んで働く“選択的”な薬です。肝臓・腎臓への影響が少なく、スタチンとの併用の安全性が高いのが特徴で、2018年には「スタチンとフィブラート系の併用は原則禁忌」という従来の制限も解除されました。

📑 根拠(正直なところ):一方で、中性脂肪が高く善玉が低い2型糖尿病の方を対象にした大規模試験(PROMINENT)では、ペマフィブラートで中性脂肪を下げても、心血管イベントを有意に減らすことはできませんでした。「中性脂肪を下げる=必ずイベントが減る」とは、まだ単純に言い切れないのです。だからこそ、誰に使うかを見極めることが大切になります。
⚠ 横紋筋融解症(筋肉の障害) ⚠ 胆石・肝障害 ⚠ 腎機能の確認が必要

5魚の油(EPA・DHA)──スタチンの弱点を補う

青魚に多く含まれるEPA・DHA(ω3系脂肪酸)を薬にしたものもあります。先ほど触れたように、スタチンは脂肪酸のバランスを下げてしまうため、そこをEPAで補うという発想です。

📑 根拠:日本で行われた大規模試験(JELIS)では、スタチンにEPAを足した群は、スタチン単独より心血管イベントが19%減少しました。さらに、スタチン治療中で中性脂肪が高い人を対象にした海外の試験(REDUCE-IT)では、高用量のEPAでイベントが25%減少しています。スタチンの弱点を補う、理にかなった組み合わせです。

1日数回の内服が必要で、飲み忘れに注意が必要なこと、出血傾向や胃腸の症状が出ることがある点には気をつけます。

SHASTA-3・4:APOC3を抑える新薬plozasiran

🆕 ESC 2026で発表:重症高TG血症への3か月に1回の注射薬(第III相・開発段階)

ここまでの薬とはまったく仕組みの違う新しい薬の話題です。plozasiran(プロザシラン、APOC3を標的とするsiRNA薬・開発中)は、肝臓でapoC-III(アポリポ蛋白C-III)という、中性脂肪を運ぶ粒子の分解をじゃまするタンパク質が作られるのを抑える注射薬です。2026年8月30日、欧州心臓病学会(ESC Congress 2026)で第III相試験SHASTA-3・SHASTA-4の詳細結果が発表されました(2試験合計757人。企業が公表した詳細結果を含む学会発表段階の情報です)。

対象は、一般的な軽度の中性脂肪高値ではなく、空腹時TG 500mg/dL以上の「重症」高トリグリセリド血症の成人です。プロザシラン25mgを3か月ごとに皮下注射(12か月で計4回)したところ、12か月後のTG中央値はベースラインから79%(SHASTA-3)・81%(SHASTA-4)低下し、TG 500mg/dL未満に到達した割合は91%・93%(プラセボ群は51%・50%)でした。さらに重要なのは、2試験をあわせた事前規定の統合解析で、重症高TG血症で問題になる急性膵炎のイベントが相対的に78%少なかったことです(相対リスク0.22、95%信頼区間0.07~0.67、P=0.008。絶対リスク減少4.1%、1年間のNNT〔1件防ぐのに治療が必要な人数〕24)。TG 500mg/dL以上で急性膵炎の既往がある高リスクの方では、相対的に91%の低下でした(相対リスク0.09、95%信頼区間0.02~0.41、P=0.002。絶対リスク減少34%、1年間のNNT 3)。

安全性では、治療中に発生した有害事象は73%対73%、重篤な有害事象は8.3%対10.0%、有害事象による中止は1.4%対0.8%でした。一方、「血糖管理の悪化」として報告された有害事象はプロザシラン群で多く(14.3%対8.7%)、下痢も5.6%対3.2%でした。ただし、平均のHbA1cは時間経過で明確には悪化しておらず、血小板・肝酵素・肝脂肪にも明確な安全性シグナルは示されていません。血糖への影響は、とくに糖尿病のある方で今後さらに検討が必要な点です。

表:SHASTA-3/SHASTA-4の主な結果(12か月)
評価項目 結果 読み方
12か月後のTG低下(中央値) 79%低下(SHASTA-3)/81%低下(SHASTA-4) 試験ごとの結果
TG 500mg/dL未満への到達 91%/93%(プラセボ群51%/50%) 試験ごとの結果
急性膵炎イベント 相対的に78%低下(RR 0.22、P=0.008) 2試験をあわせた事前規定の統合解析
血糖管理悪化として報告された有害事象 14.3% 対 8.7% プロザシラン群で多い。平均HbA1cは明確に悪化せず

位置付けの整理です。プロザシランは、米国では家族性カイロミクロン血症症候群(FCS)というまれな病気に対して承認済みですが、今回のSHASTA-3・4は、それより広い「重症高TG血症」を対象にした試験であり、この発表だけで重症高TG血症への適応が承認されたわけではありません(開発企業は米国で2026年末までの適応拡大申請を予定)。企業発表で承認済みとされている国・地域(米国・カナダ・中国・オーストラリア・EU)に日本は含まれておらず、2026年9月時点で日本では処方できません。また、この試験が示したのはTG低下と急性膵炎の減少であり、心筋梗塞や脳卒中を減らした試験ではありません。検査値を大きく下げただけでなく、重症高TG血症で問題となる急性膵炎も減らした点は重要ですが、一般的な中性脂肪高値の方にすぐ使える薬になった、という意味ではありません。(出典:Arrowhead Pharmaceuticals発表・ESC Congress 2026、2026年8月30日。公式詳細/試験登録:NCT06347003〔SHASTA-3〕・NCT06347016〔SHASTA-4〕)

さらに先の治療:ANGPTL3を遺伝子編集するCTX310

プロザシランがRNAの段階でタンパク質が作られるのを抑えるのに対し、脂質代謝に関わる遺伝子そのものへ一度だけ働きかける治療の研究も始まっています。CTX310(開発中)は、肝臓のANGPTL3という遺伝子をCRISPR-Cas9(ゲノム編集技術)で働かないようにし、中性脂肪やLDLの処理をじゃまするタンパク質が作られにくくすることを目指す、体の中で行う遺伝子編集治療です。2026年8月28日、欧州心臓病学会(ESC Congress 2026)で1年追跡データが発表され、NEJM誌にも報告が掲載されました。

対象は、標準治療を受けても脂質が下がりにくい治療抵抗性の脂質異常症の成人15人で、安全性の確認を主な目的とした非盲検の第1相(Phase 1a)試験です。点滴による1回の投与のあと、最高用量を受けた4人では、12か月後の平均でLDLコレステロールが約53%、中性脂肪が約48%低下していました(投与前と比べた変化で、プラセボと比較した値ではありません)。

治療に関連する重篤な有害事象は報告されていませんが、投与時の反応などはみられており、なによりわずか15人の初期試験です。心筋梗塞・脳卒中などを減らせるかは、この試験では証明されていません。また、DNAを編集する治療は、内服薬を中止するようには簡単に元へ戻せないことを前提に考える必要があり、長期の安全性確認がとくに重要です。参加者は15年間の長期追跡に同意しており、現在は次の段階(Phase 1b)の試験が進行中です。日本では未承認の開発段階で、いま診療で選べる治療ではありませんが、脂質治療の発想が「薬を続ける」から「設計図へ一度だけ働きかける」へ広がり始めたことを示す、最初期のデータです。

LDLと中性脂肪を同時に狙うRNAi:ARO-DIMER-PA

2026年9月15日、Arrowhead Pharmaceuticals社は、開発中のARO-DIMER-PAの第I/IIa相(Phase 1/2a)試験の中間速報を発表しました。対象は、LDLコレステロールと中性脂肪の両方が高い「混合型脂質異常症」の成人です。特徴は、肝細胞でPCSK9とAPOC3という2つの遺伝子の発現を、1つのRNAi分子で同時に抑える点にあります。

PCSK9を標的としたLDL低下と、APOC3を標的とした中性脂肪低下を、1分子で一緒に狙う発想です。ただし、先ほどのCTX310のようなDNAを編集する治療ではありません。RNAの段階で、標的となるタンパク質が作られるのを抑える仕組みです。

企業発表では、単回投与でLDL-Cは54%、中性脂肪は73%の「最大平均低下率」が報告されました。ただし、具体的な評価時点やプラセボ群との差は、この速報には示されていません。一定期間後の全参加者の平均値や、他の薬より優れていることを示す数字として読むことはできません。

試験全体では最大78人の参加を予定していますが、今回の中間解析に含まれた人数は明示されていません。主に報告された有害事象は注射部位の反応と頭痛で、薬剤に関連する重篤な有害事象は報告されていないと企業は説明しています。ただし、初期段階の情報であり、長期の安全性が確立したわけではありません。反復投与での安全性などを調べる試験も続いています。

検査値の低下と、心筋梗塞・脳卒中の予防は分けて考えます

今回は査読論文ではなく、企業による初期試験の中間速報です。ARO-DIMER-PAで心筋梗塞や脳卒中が減るかどうかは、まだ確認されていません。また、1回投与した結果が報告されたことは、1回で治療が完了することを意味しません。日本では未承認の開発段階の薬で、当院で処方できる薬ではありません。現時点の注目点は、2つの脂質の経路を1分子で同時に狙う治療の研究が、ヒトで進んでいることです。

PCSK9を標的とする現在の治療については、コレステロールの注射薬・PCSK9阻害薬の解説をご覧ください。

出典:Arrowhead Pharmaceuticals:ARO-DIMER-PAの第I/IIa相中間速報(2026年9月15日、PDF)。試験番号:NCT07223658。RNAiの仕組み:同社の技術解説。

6結局どうする?──正直な使い分け

順番としては、まず生活習慣の見直しと、必要ならスタチンでLDLを下げることが土台です。そのうえで、中性脂肪が高く善玉が低い状態が残るなら、EPAやフィブラート/ペマフィブラートの上乗せを検討します。

「中性脂肪を下げれば必ず良い」と単純化せず、効きやすい人を見極めて選ぶ——これが今の考え方です。なお、「スタチン+魚の油」と「スタチン+フィブラート」のどちらが優れているかを直接比べた研究はまだなく、これは今後の課題とされています。

▶ 次回・第8回:家族性高コレステロール血症(FH)の治療
生まれつきLDLが非常に高い体質「FH」。とくに最重症の“ホモ接合体”の治療(飲み薬・点滴・LDLアフェレシス)まで、専門医が解説します。(準備中)

7糖尿病・高血圧がある方はとくに

中性脂肪は、糖尿病があると高くなりやすいのが大きな特徴です。先ほどのPROMINENT試験も、糖尿病の方が対象でした。糖尿病の方は、LDLだけでなく中性脂肪や“残余リスク”にもとくに注意が必要です。あわせてご覧ください。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
糖尿病があると中性脂肪が高くなりやすく、悪玉の小型化や善玉の低下も起きやすくなります。血糖と脂質をあわせて管理する重要性を、糖尿病シリーズでくわしく解説しています。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
中性脂肪・高血圧・血糖の異常が重なる状態は、動脈硬化をとくに進めやすくなります。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
  2. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版.日本動脈硬化学会,2023.
  3. Yokoyama M, et al. Lancet. 2007;369(9567):1090-8.(JELIS)
  4. Bhatt DL, et al. N Engl J Med. 2019;380(1):11-22.(REDUCE-IT)
  5. Pradhan AD, et al. N Engl J Med. 2022;387(21):1923-34.(PROMINENT)
  6. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
  7. Arrowhead Pharmaceuticals. “Arrowhead Pharmaceuticals Presents Phase 3 SHASTA-3 and SHASTA-4 Results.” ESC Congress 2026発表(2026年8月30日).ClinicalTrials.gov:NCT06347003(SHASTA-3)・NCT06347016(SHASTA-4).※学会発表・企業公表の詳細結果であり、査読済み原著論文の掲載は執筆時点で未確認.
  8. Laffin LJ, et al. Durability of CRISPR-Cas9 Gene Editing Targeting ANGPTL3 with CTX310. N Engl J Med. 2026年8月28日オンライン公開(Letter).DOI: 10.1056/NEJMc2609825.誌面リンク/CTX310のPhase 1a・1年追跡の数値と安全性は、CRISPR Therapeutics社の発表(2026年8月28日・ESC Congress 2026)による:公式発表・発表スライド.
  9. Arrowhead Pharmaceuticals. ARO-DIMER-PAの第I/IIa相試験・中間速報.2026年9月15日.公式発表(PDF).試験登録番号:NCT07223658.※企業トップライン情報.
📚 脂質異常症シリーズ
第4回:薬の全体像と第一選択「スタチン」 → 記事を読む
第5回:スタチンに足す飲み薬 → 記事を読む
第6回:コレステロールの注射の薬(PCSK9) → 前の記事へ
第7回:中性脂肪が高い人の薬(この記事)
第8回:家族性高コレステロール血症の治療(準備中)→ 次の記事へ

この記事を最後に更新した日:2026.09.16

PAGE TOP