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スタチンに“足す”飲み薬にはどんな選択肢がある?
エゼチミブ・ベムペド酸・レジン・プロブコールを根拠とともに
2026.08.13 更新
スタチンだけでは足りないとき
──“足す”飲み薬を専門医が解説
スタチンを飲んでも目標に届かない。あるいは増やしても下げ止まる(前回の「6%ルール」)。そんなときに活躍するのが、作用の違う薬を組み合わせる“足し算”の飲み薬です。注射(PCSK9)に進む前に試せる選択肢として、定番のエゼチミブから、筋肉の副作用が出にくい新顔ベムペド酸、古くからのレジン、日本生まれのプロブコールまで、根拠とともに整理します。
スタチンだけでは足りないと言われました。次に“足す”飲み薬にはどんな選択肢がありますか? 注射の前に試せる薬は?
- スタチンで目標に届かないとき、まず足すのが「飲み薬」。注射(PCSK9)の前に試せる選択肢です。
- 定番はエゼチミブ(腸からの吸収をブロック)。スタチンと組むと、心筋梗塞・脳梗塞をさらに減らす証拠があります。
- ベムペド酸は新しい飲み薬。肝臓だけで効く仕組みで筋肉の副作用が出にくいのが特徴。スタチンが筋肉症状で続けにくい方の選択肢になります。
- ほかにレジン(妊娠中にも検討できる)とプロブコール(日本生まれ・抗酸化、皮膚やアキレス腱の“コブ”を小さくする効果も)。
1なぜ「増やす」より「足す」のか
前回お話ししたとおり、スタチンには“6%ルール”という天井があります。量を倍にしてもLDLは約6%しか追加で下がりません。そこで効いてくるのが「足し算」の発想です。スタチンとは違う場所・違う仕組みで効く薬を組み合わせれば、それぞれの長所を重ねて、より深くLDLを下げられます。
順番のイメージは、スタチン → 飲み薬を足す(この回)→ それでも届かなければ注射(次回)。まずは飲み薬の選択肢から見ていきましょう。
2エゼチミブ──腸からの「吸収」をブロック
スタチンが「肝臓で作る量」を減らすのに対し、エゼチミブは「腸からの吸収」を減らす薬です。食事由来・胆汁由来のコレステロールを腸が取り込む入り口(NPC1L1という運び役)をふさぎます。作用する場所が違うので、スタチンと足すと効果がきれいに上乗せされます。
単独でもLDLを約20%下げ、スタチンに足すとさらに下がります。1日1回の飲み薬で、スタチンとの配合剤(合剤)もあり、飲む手間を減らせます。
エゼチミブは小腸でコレステロールの吸収を抑える薬ですが、薬そのものは体内に吸収されます。妊娠中・妊娠の可能性がある場合は、使用の可否を医師が慎重に判断します(妊娠中にスタチンとの併用は行いません)。また、ワルファリン(血をさらさらにする薬)と併用すると、その効果を強めることがあるため注意します。
3ベムペド酸──筋肉の副作用が出にくい“新顔”
比較的新しい飲み薬がベムペド酸です。最大の特徴は、肝臓のなかでだけ効くこと。この薬はそのままでは働かず、肝臓にしかない酵素で“スイッチオン”されます。筋肉では活性化されないため、筋肉の副作用がきわめて起きにくいのです。スタチンの効く工程の、ひとつ上流をブロックします。
単剤でLDLを約15~25%、エゼチミブとの配合剤では約30%下げます。悪玉に関連するnon-HDLやApoB、さらに体の炎症の指標(hs-CRP)も下げることが報告されています。
向いているのは、①スタチン+エゼチミブでも目標に届かない方、そして②筋肉痛などスタチンが続けにくい方(スタチン不耐)です。注意点として、尿酸値が上がって痛風が出ることがあるため、痛風の既往がある方では慎重に使い、尿酸値を見ながら進めます。
4古くからの薬も、役割を選んで
新しい薬ばかりが主役ではありません。昔からある2つの薬も、適した場面ではしっかり力を発揮します。
レジン(陰イオン交換樹脂)──腸で“胆汁酸”を捕まえる
レジンは、腸のなかで脂肪の消化を助ける「胆汁酸」とくっつき、そのまま便として排泄させます。すると肝臓は胆汁酸を作り直すためにコレステロールを使い、結果として血液中のコレステロールが下がります。薬自体が腸から吸収されないため、妊娠中にも治療の選択肢として検討されるのが特徴です。便秘や、ほかの薬の吸収を妨げることがある点には注意します。
プロブコール──日本生まれの、ひと味違う薬
プロブコールは日本で広く使われてきた薬で、強い抗酸化作用を持ちます。善玉(HDL)が動脈硬化の“掃除”をする働き(コレステロールの逆転送)を活発にするのが特徴で、HDLの数値自体はむしろ下がりますが、これは掃除の回転が速くなるためで、動脈硬化を抑える方向に働くと考えられています。実際、皮膚やアキレス腱にできるコレステロールの“コブ”(黄色腫)を小さくする効果も知られています。
5糖尿病・高血圧がある方はとくに
糖尿病や高血圧があると、同じLDL値でも動脈硬化が進みやすく、コレステロールの管理目標もより厳しくなります。「スタチンに何を足すか」を考える場面も増えます。あわせてご覧ください。
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
- 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
- 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版.日本動脈硬化学会,2023.
- Cannon CP, et al. N Engl J Med. 2015;372(25):2387-97.(IMPROVE-IT)
- Nissen SE, et al. N Engl J Med. 2023;388(15):1353-64.(CLEAR Outcomes)
- 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
第2回:善玉HDLは高いほど良い? → 記事を読む
第3回:血管を調べる検査+家族性 → 記事を読む
第4回:薬の全体像と第一選択「スタチン」 → 前の記事へ
第5回:スタチンに足す飲み薬(この記事)
第6回:コレステロールの注射の薬 → 次の記事へ
この記事を最後に更新した日:2026.08.13
