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コレステロールが高いと言われたら──血管を調べる検査

頸動脈エコー・心臓CTから家族性(アキレス腱)の見分け方まで。どんな人に検査を勧めるか専門医が解説します。

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第3回

「コレステロールが高い」と言われたら
──血管の状態を調べる検査を専門医が解説

健診で「コレステロールが高い」と言われても、痛くもかゆくもないので、つい後回しにしてしまう方が多いものです。けれどコレステロールが本当に怖いのは、自覚のないまま血管の壁を傷め、動脈硬化を進めていく点にあります。「自分の血管はいま、どのくらい傷んでいるのか」。それを目に見える形にできるのが、この記事で紹介する検査たちです。誰にでも必要なわけではなく、どんな人にどの検査が向くのかまで整理します。

この記事で答えること

コレステロールが高いと言われました。血管がどのくらい傷んでいるか、どんな検査でわかりますか? その検査は受けたほうがいい?

🔑 まずここだけ押さえる
  • コレステロールが高くても症状は出ません。だからこそ、動脈硬化が進んでいないかを検査で「見える化」することに意味があります。
  • 主役となる検査は2つ。頸動脈(首の血管)エコーと心臓のCTです。
  • 検査は全員に必要なわけではなく、年齢・高血圧・糖尿病・喫煙などのリスクの高さに応じて選びます。
  • ご家族に若くして心筋梗塞になった方がいて、ご自身のコレステロールも極端に高い場合は、体質的な「家族性高コレステロール血症」の可能性。アキレス腱の厚さが手がかりになります。

1症状がないからこそ「検査で見える化」

コレステロール(とくに悪玉のLDL)が高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールが少しずつ溜まり、動脈硬化が進みます。やっかいなのは、その間ほとんど症状が出ないこと。気づいたときには狭心症や心筋梗塞、脳梗塞という形で表面化することも珍しくありません。

そこで役立つのが、動脈硬化が起きていないか、起きているならどの程度かを体に大きな負担をかけずに調べる「非侵襲的(ひしんしゅうてき)検査」です。ここから、当院でもご相談の多い検査を、わかりやすい順にご紹介します。

2首の血管を診る「頸動脈エコー」

もっとも手軽で、最初の一歩になりやすいのが頸動脈エコー(けいどうみゃくエコー)です。首の左右を通る太い血管に超音波をあてて、血管の壁の状態を画像で見る検査です。

🦴 頸動脈エコーでわかること

血管のいちばん内側の壁の厚み(専門的には内膜中膜複合体厚=IMTといいます)や、壁にできた“こぶ”のようなプラークの有無・大きさ・性状を調べられます。首の血管は全身の動脈硬化を映す“窓”とされ、ここの状態から、心臓や脳の血管の傷み具合をある程度推し量ることができます。

✓ 検査時間 約15~20分 ✓ 放射線の被ばくなし ✓ 造影剤を使わない

体への負担がほとんどなく、繰り返し受けられるのが大きな長所です。一方で、検査する人の技術によって測定値に多少のばらつきが出ること、壁の厚み(IMT)だけでは予測の精度に限界があることも分かってきました。近年は、厚みよりもプラークの有無や面積のほうが、将来の心筋梗塞・脳梗塞をよりよく言い当てるという報告が増えています。

📑 根拠:60~74歳の日本人男性を対象とした研究では、首の血管の壁がもっとも厚いグループ(max-IMT 1.07mm以上)は、薄いグループ(0.77mm以下)にくらべ脳卒中のリスクが約3倍でした。また国立循環器病研究センターの研究でも、IMTが一定以上に厚い人は心筋梗塞・脳卒中の発症率が高いことが確認されています。

どんな人に頸動脈エコーを勧める?

日本人向けに開発された「吹田(すいた)スコア」という心臓病リスクの計算では、70歳以上・高血圧・糖尿病・LDLコレステロール140mg/dL以上・喫煙・腎機能の低下などがリスクを大きく押し上げます。こうした要因を2つ・3つと重ねて持っている方は、首の血管を一度のぞいておく価値が高いと考えられます。

3心臓の血管を診る「心臓CT」

もう一つの主役が、心臓を栄養する血管(冠動脈)を直接調べる心臓CTです。心臓CTには大きく2種類あり、目的に応じて使い分けます。

① 石灰化スコア(CACS)──血管の“カルシウム沈着”を点数化

動脈硬化が進んだ血管には、カルシウムが沈着して硬くなる「石灰化」が起こります。これをCTで点数化したのが冠動脈石灰化スコア(CACS)です。撮影は十数秒で終わり、造影剤を使わず、被ばくもごくわずか。点数が高いほど、心臓の血管に動脈硬化が溜まっているサインになります。

表:石灰化スコア(CACS)と心臓病リスクの目安
石灰化スコア 心臓病の相対的リスク
100~400 約 4.3 倍
401~999 約 7.2 倍
1,000 以上 約 10.8 倍

注目すべきは、別の検査では「リスク中等度」と判定された人でも、石灰化スコアを測ると“実は高リスク”だと分かる場合があることです。つまり、リスクをより正確に仕分けする力を持っています。

② 冠動脈造影CT──血管の“詰まり・狭まり”を直接見る

造影剤を使って心臓の血管そのものを撮影し、狭くなっている場所がないかを調べるのが冠動脈造影CTです。最大の強みは、「異常なし」と出たときの信頼度がとても高いこと。この検査で有意な狭窄がなければ、心臓の血管の詰まりはほぼ否定できるとされています。

⚠ 放射線被ばく あり(8~18mSv) ⚠ 造影剤を使用

造影剤を使うため、腎臓の働きが低下している方では注意が必要です。また、糖尿病の飲み薬(メトホルミンなどビグアナイド系)を服用中の方は、造影剤との関係で検査の前後に薬を一時お休みすることがあります。心臓が速く打っている方(頻脈)や不整脈がある方では画像が乱れやすい、といった弱点もあります。

📑 根拠:国際的な大規模研究(CONFIRM試験)では、冠動脈CTで見つかる狭窄の有無や、傷んでいる血管の本数が、将来の死亡を予測する因子であることが報告されています。さらに、狭窄だけでなく“崩れやすいプラーク”の所見も予後の予測に役立つことが示されています。
🩻 もう一歩進んだ「FFR-CT」
冠動脈造影CTの画像をもとに、血管の狭まりが実際に血流を妨げているかをコンピューターで計算する「FFR-CT」という手法も登場しています。これにより、より侵襲的なカテーテル検査を避けられる場合があります。検査技術は年々進歩しています。

どんな人に心臓CTを勧める?

おおまかには、リスクが中等度の方には石灰化スコア(CACS)でふるい分けを、より詳しく血管を見たい方や糖尿病歴が長い方には冠動脈造影CTを、という使い分けになります。ただし腎機能・不整脈・造影剤アレルギー・強い石灰化などがある場合は、別の検査を選びます。どの検査が向くかは一人ひとり異なるため、結果用紙を持ってご相談ください。

表:主な検査の早わかり比較
検査 主にわかること 放射線 造影剤
頸動脈エコー 首の血管の動脈硬化(壁の厚み・プラーク) なし なし
心臓CT
(石灰化スコア)
心臓の血管の石灰化の量 ごく少量 なし
心臓CT
(造影)
心臓の血管の狭まり・詰まり あり あり

4そのほかの検査(MRI・血管年齢の検査)

上の2つ以外にも、状況に応じて使われる検査があります。

心臓MRI/MRA

磁気を使って心臓や血管を撮影する検査です。造影剤も呼吸を止める必要もなく、腎機能が心配な方や高齢の方にも行いやすい一方、狭い筒の中でじっとする必要があるため閉所が苦手な方には不向きで、検査コストも高めです。崩れやすいプラークの評価に有用とする報告もあります。

血管年齢の検査(PWV・CAVI)

手足の血圧などから血管の硬さ(しなやかさ)を調べ、いわゆる「血管年齢」の目安にする検査です。体への負担が少なく、繰り返し受けて経過を追えるのが利点です。手軽な反面、単独で心臓病を強く言い当てるほどの根拠はまだ十分でなく、ほかの検査と組み合わせて使うのが一般的です。

5ご家族に若くして心筋梗塞の方はいませんか?

最後に、見逃したくない体質の話です。コレステロールが高い人の中に、生まれつきの体質でLDLが極端に高くなる「家族性高コレステロール血症(FH)」という方が一定数いらっしゃいます。実はそれほど珍しくなく、一般の方の約300人に1人、心筋梗塞を起こした方の30人に1人がこの体質と推定されています。放置すると若くして心筋梗塞を起こすことがあるため、早く見つけることがとても大切です。

🦶 手がかりは「アキレス腱の厚さ」
FHでは、かかとの上のアキレス腱が分厚くなるという特徴的なサインが現れます。診断の目安は、X線検査で男性8.0mm・女性7.5mm以上、超音波検査で男性6.0mm・女性5.5mm以上。当院ではこの厚さを調べることができます。

なぜアキレス腱が厚くなるのでしょうか。アキレス腱は歩行や運動でくり返し負荷を受け、その修復にコレステロールが使われます。LDLが極端に高い体質だと、余ったLDLがアキレス腱に溜まり、それを処理しようとする細胞が脂肪のかたまり(泡沫細胞)となって沈着し、腱が厚くなるのです。喫煙はこの沈着を進めることも分かっています。

次のような方は、一度きちんと調べる価値があります。

⚠️ 家族性が疑われるサイン
  • ご家族(親・きょうだいなど)に、若くして心筋梗塞・狭心症になった方がいる。
  • ご自身のLDLコレステロールが著しく高い(とくに未治療で180~200mg/dL以上)。
  • アキレス腱が厚い、まぶたや皮膚・手の甲などにコレステロールのコブ(黄色腫)がある。

FHは適切に治療すれば、心筋梗塞のリスクを大きく下げられます。ご家族にも同じ体質の方がいる可能性があるため、見つかった場合はご家族での相談もおすすめしています。

6糖尿病・高血圧がある方はとくに注意

糖尿病や高血圧があると、同じコレステロール値でも動脈硬化のスピードが上がり、検査で異常が見つかりやすくなります。心臓CTや頸動脈エコーを勧める目安も、より積極的になります。あわせて以下もご覧ください。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
糖尿病があるとコレステロールの管理目標がより厳しくなり、血管の検査もより重要になります。糖尿病シリーズ全15回でくわしく解説しています。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
高血圧とコレステロール高値が重なると、心筋梗塞・脳卒中のリスクが相乗的に高まります。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
  2. 日本動脈硬化学会 FH診療ガイドライン作成委員会:成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022.
  3. 日本超音波医学会・日本動脈硬化学会 合同:成人家族性高コレステロール血症スクリーニングに用いる「超音波法によるアキレス腱厚測定」の標準的評価法.2018.
  4. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
📚 脂質異常症シリーズ
第1回:健康診断でコレステロールが高いと言われたら → 記事を読む
第2回:善玉HDLは高いほど良い? → 前の記事へ
第3回:コレステロールが高いと言われたら(血管を調べる検査)(この記事)
第4回:薬の全体像と第一選択「スタチン」 → 次の記事へ

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