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  • コレステロールが高いと言われたら|LDL・中性脂肪の基準値を専門医が解説|かとう内科

健診で「コレステロールが高い」と言われたら──数値の意味と基準値

LDL140・HDL40・中性脂肪150/175・non-HDL170。空腹時/随時採血の違いまで専門医が解説します。

 
🩸 脂質異常症シリーズ 第1回

健康診断で「LDLコレステロールが高い」と言われたら
──数値の意味と基準値を専門医が解説

健診で「コレステロールが高い」と指摘されても、痛みも症状もなく、つい放置してしまう方が少なくありません。しかし脂質異常症は、自覚のないまま動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞の土台をつくる病気です。この記事では、検査値が何を意味するのか、どこからが「異常」なのかを、ガイドラインの基準にもとづいて整理します。

この記事で答えること

LDL・HDL・中性脂肪、どの数値がいくつからが「異常」? 空腹で測らないと意味がない?

🔑 まずここだけ押さえる
  • 脂質異常症は「LDLコレステロール(悪玉)が高い」「HDLコレステロール(善玉)が低い」「中性脂肪が高い」の3タイプに分かれます。
  • 診断の中心はLDLで、140mg/dL以上が高LDLコレステロール血症です。
  • 以前は「絶食での採血」が必須でしたが、現在は食後(随時)採血でもスクリーニングできるようになりました。
  • 中性脂肪は日によって変動が大きいため、1回の数値だけで判断せず、繰り返し測るのが基本です。

1そもそも脂質異常症とは

血液中の脂質(あぶら)には、おもにLDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪(トリグリセライド)があります。これらのバランスが崩れた状態が「脂質異常症」です。かつては「高脂血症」と呼ばれていましたが、善玉のHDLは“低い”ことが問題になるため、現在は脂質異常症という呼び方が使われています。

脂質異常症が怖いのは、ほとんど自覚症状がないまま動脈の壁にコレステロールが溜まり、動脈硬化を進めていく点です。気づいたときには狭心症・心筋梗塞・脳梗塞といった形で表面化することも珍しくありません。だからこそ、健診の数値の段階で向き合うことに意味があります。

新世界から見た「LDLコレステロール」──2026年8月の最新情報

「自分ひとりの数値」の話から少し視野を広げると、高いLDLコレステロールが世界規模でどれだけ病気に関わっているかを推計した大きな調査が、2026年7月末に医学誌JAMAで発表されました。健診の数値に向き合う意味を、あらためて後押しする内容です。

どんな研究か

これは「GBD(世界の疾病負担)2023」という国際プロジェクトの一部で、204の国・地域、25歳以上を対象に、1990年から2023年までを推計したものです。世界各地の調査データと、38件のランダム化比較試験のまとめ(メタ解析)を統合してつくられた、モデルによる推計です。一人ひとりを直接数えあげた集計ではない点が、最初のポイントになります。

約360万人
高LDL-Cに起因すると推計された死亡(2023年)
95%不確実性区間 220万~540万人
6.0%
世界の全死亡に占める割合
上記の推計死亡に基づく
9,070万
DALYs(病気による損失の総量)
95%不確実性区間 5,890万~1億2,330万
3.2%
世界の全DALYsに占める割合
関連づけられた病気は主に虚血性心疾患・虚血性脳卒中

図表①(実測ではなく推計値)|出典:GBD 2023 LDL Cholesterol Collaborators, JAMA 2026年7月29日。DALYs=病気による早死にと、障害を抱えて過ごす年数を合わせた指標。

「率」は下がったのに、「総数」は増えていた

この調査でいちばん興味深いのは、指標によって向きが逆になっていたことです。年齢構成の違いをそろえて比べた「年齢調整率」は大きく下がった一方、負担の「総数」はむしろ増えていました。

1990→2023年の変化
年齢調整した死亡率-45.6%(低下)
年齢調整したDALY率-39.5%(低下)
LDL関連の負担(総数)+38.5%(増加)
← 低下0増加 →

図表②|出典:同上。中央の線を0とし、棒の長さは各変化率の大きさに合わせています。「年齢調整率(年齢構成をそろえて比べた率)」と「絶対数(総数)」は性質のちがう指標で、単純に比べられるものではありません。左右に並べたのは向きのちがいを示すためのものです。

なぜこうなるのか。年齢調整率が下がった背景には、診断や治療、予防が進んできたことがあると考えられます(ただし率の低下の原因を治療・予防だけと断定はできません)。一方で、世界の人口が増え、高齢化が進んだため、病気を持ちうる人数そのものが増え、総数としては増加した、という説明になります。地域差もあり、世界の負担の約3分の1はインドと中国が占め、年齢調整DALY率は東欧で最も高く、日本を含む高所得アジア太平洋で最も低いという結果でした。

💡 日本の患者さんが受け取るメッセージ
この調査は、LDLコレステロールが世界規模でも心臓・血管の病気の大きな要因であることを示しています。ただし前述のとおりモデルによる推計で、直接の全例集計ではありません。また解析で使われた「LDL 35~54mg/dL」という参照値は、統計上いちばんリスクが低いと仮定した理論的な範囲であって、日本人の患者さん全員が一律に目指す治療目標ではありません。目標値は年齢や持病によって一人ひとり変わります(→ 次章以降)。まずできることは、ご自身の健診のLDL値を把握しておくことです。

2数値の基準値──どこからが「異常」?

日本動脈硬化学会の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』では、スクリーニング(ふるい分け)の診断基準を次のように定めています。これは“治療開始ライン”ではなく、まず「異常があるかどうか」を見分けるための基準です。

表:脂質異常症の診断基準(スクリーニング/空腹時採血が原則)
項目 基準値 分類
LDLコレステロール
(悪玉)
140mg/dL 以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール
(善玉)
40mg/dL 未満 低HDLコレステロール血症
中性脂肪
(トリグリセライド)
150mg/dL 以上(空腹時) 高トリグリセライド血症
175mg/dL 以上(随時/食後)
non-HDL
コレステロール
170mg/dL 以上 高non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症

「境界域」は、すぐ薬という意味ではありません。糖尿病や高血圧などほかのリスクを合わせて、治療が必要かどうかを総合的に判断する領域です。

3空腹で測らないとダメ?──採血のタイミング

「コレステロール検査は朝食を抜いてから」と覚えている方も多いと思います。たしかに以前はそれが原則でしたが、ガイドライン2022年版からは、食後を含む随時採血でもスクリーニングが認められるようになりました。健診のたびに絶食で来院する負担が減ったわけです。

ただし注意点があります。コレステロール(LDL・HDL)は食事の影響をほとんど受けませんが、中性脂肪は食後に上がるため、空腹時と随時で基準値が分けられています(150 mg/dL と 175 mg/dL)。ご自身の数値を見るときは、それが食前・食後どちらの採血だったかを意識すると、より正確に解釈できます。

💡 LDLの測り方には2通りある
LDLコレステロールには、計算で求める方法(フリードワルド式)と、直接測る方法(直接法)があります。中性脂肪が400mg/dLを超えると計算式が使えなくなるため、その場合は直接法や「non-HDLコレステロール」で評価します。健診結果でLDLの数値が空欄のときは、こうした理由が背景にあることがあります。

4non-HDLコレステロールという指標

近年とくに重視されているのが「non-HDLコレステロール」です。これは総コレステロールからHDL(善玉)を引いた値で、悪玉とされるあらゆる粒子(LDL・レムナント・Lp(a)など)をまとめて反映する“動脈硬化のものさし”です。食事の影響を受けにくく、随時採血でも安定して評価できる利点があります。基準は、LDLの基準それぞれに30mg/dLを足した値(170mg/dL以上)が目安です。

📑 根拠:これらの基準値・採血法は、日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』にもとづいています。随時採血の中性脂肪カットオフ値(175mg/dL)は、欧州動脈硬化学会・欧州臨床検査医学会の合同声明と同じ値が採用されており、国際的な整合性もとられています。

5こんな数値はすぐ専門的な評価を

脂質の数値の中には、放置せず早めに精密な評価を受けたほうがよいラインがあります。日本医学会連合・日本医師会などが示す「脳心血管病発症予防のための包括的リスク管理チャート2025年版」では、次のいずれかに当てはまる場合、専門医への速やかな相談がすすめられています。

⚠️ 早めの相談を検討する数値
  • LDLコレステロール 200mg/dL 以上(とても高い)
  • 中性脂肪 1,000mg/dL 以上(急性膵炎のリスク)
  • HDLコレステロール 25mg/dL 以下(極端に低い)
  • アキレス腱が厚い/皮膚のコブ(黄色腫)がある=家族性高コレステロール血症の疑い

とくに、ご家族に若くして心筋梗塞や狭心症になった方がいて、ご自身もLDLが著しく高い場合は、「家族性高コレステロール血症」という体質的な病気が隠れていることがあります(このシリーズで別途くわしく扱います)。

6糖尿病・高血圧がある方はとくに注意

脂質異常症は単独でも問題ですが、糖尿病や高血圧と重なると動脈硬化のリスクが大きく上がります。同じLDLの数値でも、糖尿病がある方は管理目標がより厳しくなります。あわせて以下もご覧ください。

🩸 糖尿病について(解説一覧) →
血糖が高い方はLDLの目標値がより厳しくなります。糖尿病シリーズ全15回でくわしく解説しています。
🫀 高血圧について(解説一覧) →
高血圧と脂質異常症が重なると、心筋梗塞・脳卒中のリスクが相乗的に高まります。
🩸 コレステロールについて(解説一覧) → 基準値・検査・薬・食事から、家族性高コレステロール血症(FH)まで。
監修
医療法人 かとう内科 院長 加藤 丈陽(たけあき)
日本内科学会 総合内科専門医(認定番号 029447)
日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)
日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310
参考文献
  1. 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.
  2. 日本動脈硬化学会:脳心血管病 発症予防のための包括的リスク管理チャート 2025年版.
  3. 小倉正恒 編:新装改訂版 見直し!脂質異常症.日本医事新報社,2026.
  4. GBD 2023 LDL Cholesterol Collaborators. Global Burden of Elevated LDL-C: Findings From the Global Burden of Disease Study 2023. JAMA. Published online July 29, 2026. DOI: 10.1001/jama.2026.8628.
📚 脂質異常症シリーズ
第1回:健康診断でLDLが高いと言われたら(この記事)
第2回:善玉HDLは高いほど良い? → 次の記事へ
この記事に最新情報を追記した日:2026年8月1日

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