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  • 血圧が高い時いつ救急?|高血圧緊急症の見分け方・手術や歯科での注意を解説【今治・かとう内科】

特殊な病態の高血圧 ― いつ救急?手術・歯科のときは?

高血圧緊急症と切迫症の違い・危険サイン・急に下げない理由・周術期と歯科の血圧管理

高血圧 緊急症・手術・歯科 かとう内科(愛媛県今治市)

「血圧が200を超えていた!すぐ病院に行くべき?」――高血圧で多くの方が一度は不安になる場面です。連載の最終回は、JSH2025の第16章にもとづき、血圧が高いことが「緊急」になるのはどんなときか(高血圧緊急症と切迫症のちがい)、すぐ受診・救急が必要な危険サイン、そして急に下げすぎてはいけない理由を整理します。あわせて、多くの方が気になる手術や歯の治療のときに血圧の薬をどうするかも解説します。結論から言えば――症状を伴う高血圧は救急、数字だけが高いときは慌てず主治医に相談。そして、しっかり治療を続けることが、いちばんの安心につながります。

🚨 血圧が高い = すぐ救急? ―「緊急症」と「切迫症」のちがい

結論として、血圧が高いだけでは「緊急」ではありません。大切なのは臓器の障害が今まさに進んでいるかどうかです。

血圧が著しく高く(多くは180/120mmHg以上)、脳・心臓・腎臓・大動脈などに急性の障害が生じて進行している状態を高血圧緊急症といい、入院してただちに点滴で治療します。一方、血圧は著しく高いものの臓器障害の急速な進行がない状態は切迫症とよばれ、こちらは急いで下げる必要はなく、内服薬で数日かけて整えます(切迫症を急いで下げて予後が良くなるというエビデンスはありません)。救急外来のデータでは、高血圧緊急症の頻度は受診者の0.3~0.5%、緊急症と診断された方の院内死亡率は9.9%と報告されており、まれですが見逃せない病態です。

📌 ポイント(JSH2025 POINT 16a 抜粋)
緊急症高血圧性脳症、脳出血・くも膜下出血、急性大動脈解離、肺水腫を伴う急性心不全、急性冠症候群、褐色細胞腫クリーゼ、子癇など。入院してただちに点滴で降圧し、専門施設で治療。
切迫症急性の臓器障害がない、持続する著しい高血圧(通常180/120以上)。内服薬で降圧する。

🆘 こんな症状があれば、すぐ受診・救急を

血圧が高いときに、次のような症状を伴う場合は、緊急症のサインかもしれません。ためらわず救急要請(119番)・受診をしてください。

⚠️ 高血圧+この症状は「すぐ」受診・救急(119番)を

🔴 突然の激しい頭痛、吐き気・嘔吐、意識がもうろうとする、けいれん

🔴 顔・手足のまひ・しびれ、ろれつが回らない、片方が見えにくい(脳卒中のサイン)

🔴 引き裂かれるような激しい胸や背中の痛み(大動脈解離のサイン)

🔴 強い息苦しさ・横になると苦しい、ピンク色の泡のような痰(急性心不全のサイン)

🔴 突然の視力低下・視野の異常

🔴 妊娠中の高血圧に、頭痛・目のちらつき・みぞおちの痛み・むくみを伴う

※これらは生命に関わることがあります。「血圧が高いうえに、いつもと違う強い症状がある」ときは、自己判断で様子を見ず、すぐに医療機関へ。

逆に、家庭で測った血圧が高くても、こうした症状がまったくない場合は、多くは切迫症の範囲です。あわてて薬を多めに飲んだりせず、深呼吸して少し休み、数分おいて測り直したうえで、主治医に相談しましょう(次の項目で理由を説明します)。

⏳「急に下げすぎない」のが鉄則

意外に思われるかもしれませんが、緊急症の治療でも血圧は一気に下げません。急激に下げすぎると、脳・心臓・腎臓への血の巡り(灌流)が逆に悪くなり、脳梗塞・心筋梗塞・腎機能悪化を招くことがあるためです。一般的には、最初の1時間で平均血圧を最大25%まで、次の2~6時間で160/100程度、その後24~48時間かけて140/90未満へと、段階的に下げていきます。だからこそ、点滴で細かく調整できる環境(入院・専門施設)で行うのです。ご自宅で数値が高いときに、市販薬や手持ちの薬を自己判断で重ねて飲むのは、かえって危険なことがあります。

ただし、病態によって「下げ方」はまったく異なります。たとえば大動脈解離はただちに強く下げ、脳出血や脳梗塞では下げ方に細かいルールがあります。下の表は、その違いの一例です(実際は専門医が病態をみて判断します)。

表:病態によって「血圧の下げ方」はまったく違う(一例)
病態降圧の目安
大動脈解離(急性期)ただちに収縮期120mmHg未満、脈もゆっくりに
急性冠症候群
(心筋梗塞など)
ただちに収縮期140mmHg未満
脳出血(急性期)速やかに収縮期140mmHg未満
くも膜下出血処置までは収縮期160mmHg未満
高血圧性脳症・
悪性高血圧
数時間かけて平均血圧を20~25%低下
重症の妊娠高血圧・子癇ただちに160/105mmHg未満
一般的な緊急症1時間で最大25%→2~6時間で160/100→24~48時間で140/90未満

出典:JSH2025 第16章「1. 高血圧緊急症および切迫症」(各病態の降圧目標)。点滴ではニカルジピンなど、効果が早く調整しやすい薬が病態に応じて使い分けられます。

🏥 緊急症の治療と、希望のデータ

緊急症は入院が原則で、集中治療室などで血圧をモニターしながら点滴で治療します。なかでも加速型-悪性高血圧は、拡張期120~130mmHg以上の著しい高血圧に、両目の網膜の障害や急速な腎機能悪化を伴う、放置すると予後の悪い病態です。発症率は年間10万人あたり1~2人とまれですが、降圧治療が普及したことで予後は劇的に改善しました。英国のデータでは、5年生存率が大きく向上しています。

図:悪性高血圧の5年生存率 ― 降圧治療の普及で大きく改善
英国のデータ。きちんと治療すれば、かつて命に関わった病態も大きく予後が変わりました。
1967年以前
24%
1997~2006年
93%

出典:JSH2025 第16章「9)加速型-悪性高血圧」(英国の5年生存率:1967年以前24% → 1997~2006年93%)。ただし腎臓の予後はなお厳しく、長期的な血圧管理が重要です。だからこそ、ふだんの治療を続けることが何より大切です。

🔪 手術を受けるとき ― 血圧の薬はどうする?

手術を受けるときに「血圧の薬は飲んでいいの?やめるの?」と迷う方は多いです。原則は次のとおりですが、必ず主治医・手術を行う科・麻酔科の指示に従ってください(自己判断での中止は禁物です)。

📌 ポイント(JSH2025 POINT 16b 抜粋)
当日も降圧薬は手術当日の朝も含めて原則として続けて飲み、術後もできるだけ早く再開します。安定した血圧管理が周術期の合併症予防につながります。
例外ARB・ACE阻害薬は、手術中の血圧低下や腎機能への影響が心配される場合、手術によっては事前に休む(中止する)ことがあります。指示に従ってください。
延期も急がない(待機的)手術で血圧が180/110mmHg以上のときは、まず血圧コントロールを優先し、手術を延期することも考慮します。
事前評価未治療の高血圧では、褐色細胞腫など二次性高血圧の有無や臓器障害を事前にチェックします。痛み・不安を抑えることも血圧上昇の予防に大切です。

高血圧の方は手術時の合併症が起こりやすいため、可能な限り血圧を整えてから手術にのぞみます。理想は術前に130/80mmHg未満(または目標値)へのコントロールです。160/100未満に保たれていれば、血圧の数値だけを理由に手術を延期する必要は基本的にありませんが、臓器障害や合併症がある場合は慎重に判断します。診察室だけ高くなる「白衣現象」もあるため、家庭血圧での評価も役立ちます。

🦷 歯医者さんと高血圧

歯の治療中にも、痛みや緊張で血圧が上がり、まれに脳心血管の負担になることがあります。だからこそ、歯科でも次のことが大切です。

歯科治療を受けるときのポイント
  • 血圧の薬は治療当日も飲んで、血圧を整えてから受診しましょう。
  • 受付や歯科医師に、高血圧であること・飲んでいる薬を伝えましょう。
  • 血圧が180/110mmHg以上のときは、急がない処置は別の日に。緊急の処置は別途対応します。
  • アドレナリン(血管収縮薬)入りの局所麻酔も、適量なら高血圧の方に安全に使えます。痛みをしっかり抑えることは、むしろ血圧上昇を防ぎます。痛みを我慢しすぎないでください。

🧭 まとめ ― そして、ふだんの一歩へ

血圧が高いことが「緊急」になるのは、強い症状を伴って臓器の障害が進んでいるときです。突然の激しい頭痛・胸背部痛・息苦しさ・まひ・視力障害などがあれば、ためらわず救急を。一方、数字だけが高くて症状がないときは、あわてて自己判断で下げず、休んで測り直し、主治医に相談しましょう。手術や歯科治療のときは、薬を自己判断でやめず、当日も含めて指示に従うのが基本です。そして悪性高血圧のデータが教えてくれるように、治療を続ければ予後は大きく変えられます。

全16回の高血圧連載は、これで完結です。難しい数字や病名がたくさん出てきましたが、いちばん大切なことはシンプルです――毎日の血圧を知り、減塩や運動などの生活習慣を整え、必要な薬を続け、気になることは早めに相談する。その積み重ねが、脳卒中や心臓病からあなたとご家族を守ります。長い連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。これからも、今治の地で皆さまの「ふだんの健康」を一緒に支えていきます。

こんなときはご相談ください

✅ 家で測るとときどき非常に高い(症状はないが心配)

✅ 手術・内視鏡・歯科治療の予定があり、血圧の薬をどうするか知りたい

✅ 薬を飲んでも下がりにくい/血圧の変動が大きい

✅ これまで治療を中断していて、再開したい

✅ 連載を読んで、自分の高血圧を一度きちんと見直したい

❓ よくある質問

Q. 家で測ったら200/110でした。すぐ救急車を呼ぶべきですか?

症状があるかどうかで判断します。激しい頭痛・胸背部痛・息苦しさ・まひ・ろれつ困難・視力障害・意識の変化などを伴うなら、すぐ救急(119番)を。症状がまったくなければ、多くは「切迫症」の範囲で、急いで下げる必要はありません。少し休んで深呼吸し、数分後に測り直したうえで、主治医にご相談ください。手持ちの薬を自己判断で重ねて飲むのは避けてください。

Q. 血圧が高いとき、急いで下げた方がいいのでは?

いいえ、急に下げすぎるのはかえって危険です。脳や心臓への血の巡りが悪くなり、脳梗塞などを招くことがあります。緊急症の治療でも、点滴で段階的に下げます。だからこそ、医療機関での管理が大切なのです。

Q. 手術の日の朝、血圧の薬は飲んでいいですか?

原則として当日の朝も飲みます(安定した血圧が合併症予防になります)。ただしARB・ACE阻害薬は手術によっては事前に休むことがあるため、必ず主治医・麻酔科の指示に従ってください。自己判断での中止は避けましょう。

Q. 高血圧でも、歯科のアドレナリン入り麻酔は大丈夫ですか?

適量であれば安全に使えます。痛みをしっかり抑えることは、むしろ血圧の上昇を防ぎます。高血圧であること・飲んでいる薬を歯科医師に伝え、当日も血圧の薬を飲んでおきましょう。血圧が非常に高い(180/110以上)ときは、急がない処置を別の日にすることがあります。

🩺

執筆:加藤 丈陽(かとう たけあき)/かとう内科 院長

総合内科専門医(日本内科学会認定・認定番号 029447)

愛媛県今治市の「かとう内科」院長。総合内科専門医として、高血圧・糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸・肥満症などの生活習慣病を中心に、地域のかかりつけ医として日々の診療にあたっています。高血圧緊急症のような「いざというとき」の判断から、手術・歯科治療時の血圧管理、そして何より日々の予防まで、日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』など最新のエビデンスにもとづき、皆さまの健康を長く支えることを大切にしています。

※この記事は一般的な情報提供を目的とした解説で、特定の製品の推奨や個別の診断・処方指示ではありません。緊急性の判断や、手術・歯科治療時の薬の扱いは、お一人おひとりの状態によって異なります。薬は自己判断で開始・変更・中止せず、必ず主治医・担当医にご相談ください。強い症状を伴う高血圧は救急対応が必要なことがあります。記載の内容は日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』第16章にもとづいています。図表はガイドライン掲載の内容をもとに要約・作図したものです。

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