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二次性高血圧 ― 「原因のある高血圧」を見つける

ホルモン・腎臓・血管・薬やサプリ・遺伝まで、原因別の特徴と治療のエビデンス

高血圧 二次性高血圧 かとう内科(愛媛県今治市)

高血圧の多くは原因をひとつに特定できない「本態性高血圧」ですが、なかにははっきりした原因がある高血圧=二次性高血圧があります。その割合は、かつて考えられていたより多く、少なくとも全体の10%以上。大切なのは、原因が見つかれば、手術や原因薬の中止で治ったり、大きく改善できたりするということです。この記事は、JSH2025の第15章にもとづき、二次性高血圧を「疑うサイン(表15-1)」から、ホルモン・腎臓・血管・薬やサプリ・遺伝など原因別の特徴、そして治療のエビデンス(CQ18・CQ19)まで、表・図・研究データを交えて専門医の視点で解説します。「なかなか下がらない」「薬が効かない」高血圧こそ、一度立ち止まって原因を探す価値があります。

🔍 二次性高血圧とは ― 「原因のある高血圧」を見つける

二次性高血圧は、特定の原因による高血圧で、本態性高血圧とは病態も治療方針も大きく異なります。通常の治療では目標まで下がりにくい「治療抵抗性高血圧」の背景に隠れていることも多く、逆に原因を見つけて治療すれば、効果的に血圧を下げ、臓器障害を改善・予防できるのが最大のポイントです。代表的なものに、ホルモンの病気(原発性アルドステロン症など、高血圧の5~10%)、睡眠時無呼吸、腎臓の病気(腎実質性、全体の2~5%)、薬やサプリによるものなどがあります。だからこそ、すべての高血圧の方の診療で「二次性かもしれない」という視点を持ち、疑わしいサインを見逃さないことが重要です。可能性が高い場合は専門医に紹介します。

⚠️ こんな高血圧は「二次性」を疑う

結論として、次のようなサインがあるときは、二次性高血圧を一度疑ってみる価値があります。

二次性高血圧を疑う一般的なサイン(表15-1より)

✅ 若いうちに発症した高血圧/中高年で急に発症した高血圧

✅ 重症の高血圧、または薬が効きにくい(治療抵抗性)高血圧

✅ これまで良好だった血圧管理が急に難しくなった/急に発症・悪化した

✅ 血圧のわりに強い臓器障害がある/血圧の変動が大きい

✅ 血液検査で低カリウム血症を合併している

原因の病気ごとに、ヒントになる所見があります。下の表は、代表的な原因と「気づくきっかけ」をまとめたものです。

表15-1(要約):二次性高血圧の主な原因と、気づくきっかけ
原因(病気)気づくきっかけ・所見
原発性アルドステロン症低カリウム血症、副腎の偶発腫瘍、夜間頻尿(最多の二次性。低Kは半分以下の人にしか出ない点に注意)
睡眠時無呼吸症候群いびき、肥満、日中の眠気、早朝・夜間の高血圧
腎実質性高血圧腎臓病の既往、蛋白尿、血尿、クレアチニン上昇
腎血管性高血圧RA系の薬で腎機能が悪化、腎サイズの左右差、腹部の血管雑音、夜間多尿
クッシング症候群中心性肥満、満月様顔貌、皮膚の赤い線条、高血糖、低カリウム
褐色細胞腫発作的な高血圧・動悸・頭痛・発汗、高血糖
薬剤誘発性薬・サプリ・漢方の使用歴、低カリウム
甲状腺の異常動悸・体重変化・むくみなど(亢進症・低下症いずれも血圧に影響)
大動脈縮窄症上半身と下半身の血圧差、血管雑音

出典:JSH2025 第15章・表15-1(二次性高血圧の原因疾患と示唆する所見、鑑別に必要な検査)を要約。

🧪 ホルモンが原因の高血圧(内分泌性)

原発性アルドステロン症(PA)― いちばん多い二次性高血圧

副腎から血圧を上げるホルモン「アルドステロン」が過剰に出る病気で、高血圧の5~10%を占める代表的な二次性高血圧です。低カリウム血症は典型例だけ(半分未満)で、カリウムが正常でも否定できません。本態性高血圧より脳卒中・心筋梗塞・心房細動などの合併症が2~5倍多いと報告され、見つける意義が大きい病気です。血液検査(アルドステロンとレニンの比=ARR)でスクリーニングし、陽性なら専門施設で確認検査・CT・必要に応じて副腎静脈サンプリングを行います。治療は、片側の副腎だけが原因なら手術(副腎摘出)で治る可能性があり、両側性や手術を希望しない場合はMR拮抗薬(アルドステロンを抑える薬)を中心に治療します。手術と薬の効果の比較は、後半のCQ18で取り上げます。

クッシング症候群

副腎ホルモン「コルチゾール」が過剰になる病気で、中心性肥満・満月のような丸い顔・皮膚の赤い線条・高血糖・低カリウムなどが特徴です。血中コルチゾールやACTHの測定、デキサメタゾン抑制試験で診断します。副腎の偶発腫瘍が見つかったとき、はっきりした症状がなくてもホルモンが自律的に出ている「サブクリニカル(無症候性)クッシング症候群」が隠れていることもあり、治療抵抗性高血圧では特に注意します。

褐色細胞腫・パラガングリオーマ

カテコールアミン(アドレナリンなど)を過剰に出す腫瘍で、発作的な高血圧・動悸・頭痛・発汗や高血糖を伴うのが典型です。血液・尿のカテコールアミンとその代謝産物(メタネフリン)を測り、画像で診断します。手術が基本ですが、薬の準備など特別な周術期管理が必要なため、疑ったら専門医に紹介します。

甲状腺・副甲状腺・先端巨大症

甲状腺機能亢進症では脈が速くなり収縮期血圧と脈圧が上がります(動悸・体重減少・手のふるえ・眼球突出など)。甲状腺機能低下症でも血圧が上がることがあります(むくみ・寒がり・倦怠感など)。原発性副甲状腺機能亢進症は高カルシウム血症が、先端巨大症は手足や顔つきの変化とIGF-1高値が、それぞれ気づくきっかけになります。

🫘 腎臓・血管が原因の高血圧

腎実質性高血圧

慢性腎臓病(CKD)など腎臓そのものの病気による高血圧で、二次性のなかでも割合が大きく(全体の2~5%)、体液量の増加やRA系の活性化が関わります。高血圧によって腎臓が傷む「腎硬化症」との区別が必要で、高血圧より前から腎障害があったかが見分けるポイントになります。

腎血管性高血圧(RVHT)

腎臓へ向かう動脈(腎動脈)が狭くなる・詰まることで起こる高血圧で、高血圧全体の約1%。中高年では動脈硬化、若い人では線維筋性異形成が主な原因です。RA系の薬を始めたら腎機能が悪化した、腎臓の大きさに左右差がある、お腹に血管雑音が聞こえるなどが手がかり(表15-5)。まず腎動脈の超音波で調べ、必要に応じてMRA・CTAなどの画像検査を行います。治療は降圧薬が中心で、片側性ではRA系阻害薬が有利なことがありますが、両側性ではRA系阻害薬は原則禁忌です。風船で広げる治療(PTRA)の位置づけは、後半のCQ19で取り上げます。

大動脈縮窄症・高安動脈炎

大動脈の一部が狭くなる大動脈縮窄症では、上半身が高血圧で下半身の脈が弱くなり、上下肢の血圧差が特徴です。高安動脈炎(大動脈炎症候群)は若い女性に多い大血管の炎症で、左右の血圧差や血管雑音、原因不明の発熱・倦怠感などから疑います。いずれも早期診断と原因に応じた治療が大切です。

💊 薬・サプリ・漢方が原因の高血圧(薬剤誘発性)

意外と多いのが、飲んでいる薬・サプリ・漢方が原因の高血圧です。これまで安定していた血圧が急に上がった、コントロールが難しくなった――そんなときは、薬剤誘発性高血圧の可能性を考えます。複数の医療機関にかかっていると見落とされやすいので、お薬手帳・市販薬・健康食品・漢方まで、すべて主治医に伝えることがとても大切です。

表15-6(要約):高血圧を起こしうる代表的な薬・成分
薬・成分ひとことメモ
痛み止め
(NSAIDs)
水・塩分をためて血圧を上げ、降圧薬の効きも弱める。高齢者・腎機能低下で影響大
甘草
(グリチルリチン)
漢方・健康食品・一部の甘味成分に含まれ、低カリウム・むくみ・高血圧(偽性アルドステロン症)を起こすことがある
ステロイド中等量以上・長期で高血圧を起こしやすい(高齢者で顕著)
免疫抑制薬
(シクロスポリン等)
移植後などで使用。高率に血圧を上げる
ピル・ホルモン
(エストロゲン)
経口避妊薬・ホルモン補充。用量依存で血圧上昇。定期的な血圧測定を
貧血の注射薬
(ESA・HIF-PH)
腎性貧血の治療で血圧が上がることがある
がんの分子標的薬
(血管新生阻害薬)
抗VEGF薬などで高血圧が誘発される。がん治療医と連携

出典:JSH2025 第15章・表15-6(薬剤誘発性高血圧の原因薬剤と高血圧治療法)を要約。

💡 「漢方・サプリ・健康食品」も大切な情報です

甘草(グリチルリチン)は多くの漢方薬や健康補助食品、甘い加工品にも含まれます。長く使うと、低カリウム・むくみ・高血圧(偽性アルドステロン症)を起こすことがあり、原因の薬・サプリをやめるか、MR拮抗薬で改善します。「体に良いと思って続けているもの」が原因のこともあるので、自己判断でやめる前に、まずは飲んでいるものを医師に教えてください。

🧬 遺伝性・その他の二次性高血圧

ごくまれに、単一の遺伝子の異常で起こる高血圧があります(表15-7)。多くは副腎のステロイド合成や腎臓での塩分の再吸収に関わる遺伝子で、若くして発症し、血清カリウムの異常や家族歴を伴う場合に疑い、専門医に相談します。一方、高血圧の大部分を占める本態性高血圧も、実は30~70%は遺伝の影響を受ける多因子の体質で、たくさんの遺伝子の個人差(SNV)が関わっています。日本人は食塩感受性(塩分で血圧が上がりやすい体質)の遺伝素因を持つ人が多い可能性も報告されており、減塩がとくに大切な理由のひとつです。このほか、脳の病気で頭蓋内圧が上がるとき(クッシング反応)や、脳幹の血管が神経を圧迫するタイプの高血圧(神経血管圧迫症候群)もあります。

📊 エビデンスのハイライト ― 2つの臨床的疑問(CQ)

CQ18:原発性アルドステロン症は「手術」と「薬」、どちらがよい?

CQ
18
原発性アルドステロン症(PA)の治療で、副腎摘出術と、MR拮抗薬による治療は、同等の予後が得られるか?

→ 片側性のPAで、医師が手術適応ありと判断し患者さんが希望する場合は、病側の副腎摘出術を弱く推奨(病側を摘出すればアルドステロン症の完治が期待できるため)。

→ 両側性、または手術を希望しない場合は、MR拮抗薬を中心とする薬物療法の継続を強く推奨。

片側=推奨2/エビデンスB/合意率100% ・ 両側=推奨1/エビデンスB/合意率100%

片側性PAでは、8件の研究のメタ解析で、副腎摘出術はMR拮抗薬による薬物療法より、脳心血管イベント・収縮期血圧・内服薬の数を有意に下げることが示されました。具体的には次のとおりです。

表:片側性PA ― 副腎摘出術は薬物療法と比べてどうだったか(メタ解析)
アウトカム副腎摘出術は薬物より差[95%CI]
脳心血管イベント少ない(有利)0.63[0.46–0.85]
収縮期血圧低い(有利)-8.78 mmHg
[-11.61~-5.95]
拡張期血圧差なし-4.61 mmHg
[-9.27~0.04]
血清カリウム高い(改善)+0.43 mEq/L
[0.35~0.51]
内服薬の数少ない(有利)-1.49 剤
[-2.00~-0.99]

出典:JSH2025 第15章 CQ18(8件の観察研究のメタ解析)。ただし含まれた研究はすべてアジアからの観察研究で、RCTは含まれない点に留意。高齢者では手術の効果が減弱し術後の腎機能低下が大きくなりうるため、手術適応は慎重に判断します。両側性PAでは、MR拮抗薬を十分量使い、血圧・カリウム・レニンを指標に調整すれば、本態性高血圧と同等のリスクにできると報告されています。

CQ19:動脈硬化による腎動脈狭窄、「風船治療(PTRA)」は薬に勝る?

CQ
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高血圧を伴う動脈硬化性の腎動脈狭窄症に、経皮的腎動脈形成術(PTRA/風船治療)を薬物治療に併用すると、薬物単独より優れているか?

→ PTRA併用の優位性は認められていません(推奨保留)。ただし、必要に応じて手術適応を検討します。

推奨保留/エビデンスの強さ C/合意率 100%

9件のRCTのメタ解析で、PTRA(風船で腎動脈を広げる治療)を薬物に加えても、死亡・脳心血管イベント・腎機能の悪化のどれも、薬物単独と差がありませんでした。下のグラフは、どの項目もダイヤが「1」の縦線をまたいでおり、はっきりした差がないことを示しています。

図:PTRA併用 vs 薬物単独 ― 主なアウトカムの相対リスク(95%信頼区間)
ダイヤが「1」の縦線をまたぐ=はっきりした差なし。CQ19のメタ解析より。
死亡
1.01 [0.77–1.33]
脳心血管イベント
0.99 [0.90–1.08]
腎機能障害の進展
0.90 [0.74–1.08]
有害事象
0.83 [0.45–1.54]
0.10.51210
← PTRA併用で少ない薬物単独で少ない →

出典:JSH2025 第15章 CQ19(9件のRCTのメタ解析、図CQ19-1~5)。血圧については収縮期で-5.6mmHg程度、内服薬数で-0.28剤とわずかな差はあるものの、これまでのRCTには軽度~中等度の狭窄が多く含まれるなどの限界があります。線維筋性異形成によるものや、治療抵抗性・繰り返す肺水腫など一部の症例では、PTRAが選択肢になります(個別に専門医が判断します)。

🧭 まとめ ― 「下がらない高血圧」は、原因を探すサイン

二次性高血圧は、原因のある高血圧で、全体の10%以上を占めます。若年発症・重症・治療抵抗性・急な発症や悪化・低カリウムなどがあれば、ホルモン(とくに原発性アルドステロン症)、腎臓・血管、薬やサプリ、まれに遺伝など、隠れた原因を一度探す価値があります。原因が見つかれば、手術で治ることもあれば、原因の薬・サプリをやめるだけで改善することもあります。そのためにいちばん役立つのは、飲んでいる薬・漢方・サプリをすべて伝えることと、気になるサインを主治医に相談すること。なかなか下がらない高血圧でお悩みの方は、どうぞ一度ご相談ください。原因の見極めと、必要なときの専門医への橋渡しをお手伝いします。

こんな方はご相談ください

✅ 薬を飲んでも血圧が下がりにくい(治療抵抗性)

✅ 若いうちに高血圧と言われた/健診で低カリウムを指摘された

✅ これまで安定していた血圧が急に上がった・悪くなった

✅ 漢方・サプリ・市販の痛み止めなどを続けている

✅ いびき・日中の眠気がある(睡眠時無呼吸の可能性)

✅ 副腎などに偶然みつかった腫瘍があると言われた

❓ よくある質問

Q. 二次性高血圧は治るのですか?

原因によります。たとえば片側性の原発性アルドステロン症では手術で完治が期待でき、薬・サプリが原因ならそれをやめるだけで改善します。完治しない場合でも、原因に合った治療で血圧をしっかり下げ、合併症を防ぐことができます。「原因を見つける」こと自体に大きな意味があります。

Q. カリウムが正常なら、原発性アルドステロン症ではないですか?

いいえ。低カリウム血症は典型例にしか現れず、カリウムが正常でも原発性アルドステロン症は否定できません。最多の二次性高血圧で見つける意義が大きいため、治療抵抗性などがあれば、血液検査(ARR)でのスクリーニングを検討します。

Q. 飲んでいる漢方やサプリは、わざわざ言わなくてもいいですよね?

ぜひ教えてください。漢方や健康食品に含まれる甘草(グリチルリチン)などは、低カリウムやむくみを伴う高血圧(偽性アルドステロン症)を起こすことがあります。「体に良いと思って続けているもの」が原因のこともあるので、お薬手帳と一緒に共有していただけると、原因の発見がぐっと早くなります。

Q. 腎動脈が狭いと言われました。すぐ風船治療(PTRA)をした方がいい?

必ずしもそうではありません。動脈硬化による腎動脈狭窄では、研究のまとめでPTRA併用は薬物治療単独より、死亡や脳心血管・腎機能の点で優れているとは示されていません(CQ19)。ただし、線維筋性異形成や、治療抵抗性・繰り返す肺水腫などでは選択肢になります。狭窄の程度や腎臓の状態をみて、専門医が個別に判断します。

🩺

執筆:加藤 丈陽(かとう たけあき)/かとう内科 院長

総合内科専門医(日本内科学会認定・認定番号 029447)

愛媛県今治市の「かとう内科」院長。総合内科専門医として、高血圧・糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸・肥満症などの生活習慣病を中心に、地域のかかりつけ医として日々の診療にあたっています。「なかなか下がらない高血圧」の背景にある二次性高血圧(原発性アルドステロン症・睡眠時無呼吸・薬剤性など)を見逃さないことを大切にし、必要に応じて専門医療機関と連携しながら、日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』など最新のエビデンスにもとづく診療を行っています。

※この記事は一般的な情報提供を目的とした解説で、特定の製品の推奨や個別の診断・処方指示ではありません。二次性高血圧の診断・治療は、お一人おひとりの状態によって大きく異なります。薬・漢方・サプリは自己判断で開始・変更・中止せず、必ず主治医にご相談ください。記載の内容は日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』第15章にもとづいています。図のフォレストプロット・表は、ガイドライン掲載のメタ解析・図表の統合値をもとに要約・作図したものです。

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