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  • 妊娠中の糖尿病はどう治療する?計画妊娠・血糖管理・インスリン療法をやさしく解説|今治市 かとう内科

妊娠中の糖尿病はどのように治療するのか?

計画妊娠から血糖管理・インスリン療法まで ― 母子の安全のために

糖尿病 妊娠と糖尿病 計画妊娠・血糖管理 かとう内科|今治市

糖尿病のある方が妊娠を望むとき、また妊娠中に「血糖値が高い」と言われたとき。「赤ちゃんは大丈夫?」「いまの薬は続けてよいの?」と不安になりますよね。妊娠中の糖尿病は、妊娠前からの準備とていねいな血糖管理によって、母子ともに安全な出産を目指せます。基本をやさしく整理します。

🤰なぜ妊娠中は「厳格な血糖管理」が必要なの?

妊娠中の血糖の異常には、妊娠前から糖尿病がある場合(糖尿病合併妊娠)と、妊娠中にはじめて見つかる場合があります。妊娠中に見つかるものには、程度の軽い「妊娠糖尿病」と、より明らかな高血糖を示す「妊娠中の明らかな糖尿病」があります。

⚠️ 妊娠を望む方へ:「計画妊娠」が大切です

妊娠のごく初期に母体の血糖が高いと、赤ちゃんの体の形づくりに影響(先天性の形態異常)が出る可能性が高まります。そのため糖尿病のある方は、妊娠前に血糖を適正な範囲まで下げてから妊娠する「計画妊娠」が勧められます。気づかないうちに糖尿病があるまま妊娠することを防ぐため、妊娠を望む段階で一度血糖を調べておくと安心です。

妊娠中に母体の高血糖が続くと、ブドウ糖が胎盤を通って赤ちゃんへ過剰に届き、赤ちゃんが大きくなりすぎる(巨大児)ことがあります。その結果、難産・新生児の低血糖・黄疸など、さまざまな合併症が起こりやすくなります。

表1:母体の糖代謝異常と関連する母児(ぼじ)の合併症

お母さんの合併症 胎児(おなかの赤ちゃん) 新生児(生まれた赤ちゃん)
流産・早産
妊娠高血圧症候群
羊水過多症
尿路感染症
肩甲難産・分娩時の損傷 など
先天性の形態異常
過剰発育・巨大児
発育不全
子宮内胎児死亡 など
低血糖
高ビリルビン血症(黄疸)
呼吸障害
心筋肥大
分娩時の損傷 など

🎯妊娠中の血糖値の管理目標

これらの合併症を防ぐには、妊娠の全期間を通して血糖を厳格に、かつ適正な範囲に保つことが大切です。妊娠中は、妊娠していないときよりも目標がやや厳しめに設定されます。

表2:妊娠中の血糖値の管理目標

空腹時血糖値 95mg/dL 未満
食後血糖値 食後1時間値 140mg/dL 未満
または 食後2時間値 120mg/dL 未満
HbA1c 6.0~6.5% 未満 *
グリコアルブミン 15.8% 未満 **

📋 目標値は一人ひとり調整します

* HbA1cは6.0%未満が理想ですが、低血糖の危険などを考えて6.5%未満に緩めることも認められ、個別に設定します。

** グリコアルブミンは肥満があると実際より低く出ることがあるため、経過を追いながら他の指標と合わせて評価します。

💉治療はどのように行うのか?(3つの柱)

治療でいちばん大切なのは、お母さんの高血糖による合併症を防ぐことと、おなかの赤ちゃんが健やかに育つことです。そのため母体の血糖をできるだけ正常に近づけます。ただし、下げすぎて低血糖にならない範囲で管理します。治療は「①血糖モニタリング」「②食事療法」「③インスリン療法」を組み合わせて行います。

① 血糖モニタリング(自己測定・CGM)

妊娠中は胎盤から出るホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、とくに妊娠後半は血糖管理がややむずかしくなります。表2のような厳しい目標を保つには、受診時の検査だけでなく、ご家庭での血糖自己測定(SMBG)が欠かせません。測定したデータをもとに治療内容を調整していきます。

📋 持続血糖モニター(CGM)という選択肢

指先で測る自己測定に加え、皮下のセンサーで血糖の動きを連続して確認できる「持続血糖モニター(CGM)」が、妊娠中の管理に役立つことがあります。気づきにくい低血糖や食後の血糖の動きを把握しやすく、より安全な管理につながります。導入できるかは担当の医療機関にご相談ください。

② 食事療法

妊娠中の多くの方は、食事療法だけで目標とする血糖値を達成できます。基本は、ふだんの糖尿病食の指示エネルギー量に、赤ちゃんの発育に必要なぶんを加えることです。目安は「目標体重1kgあたり30kcal」で、妊娠の時期に応じて次の量を足します。

  • +妊娠初期:+50kcal
  • +妊娠中期:+250kcal
  • +妊娠後期:+450kcal
  • +授乳期:+350kcal

ただし、肥満のある方(妊娠前のBMIが25以上)は、全期間を通して「目標体重1kgあたり30kcal」で十分とされています。実際には、お母さんの体重の増え方や赤ちゃんの発育を見ながら、医師や管理栄養士が個別に調整します。体重が増えすぎないよう、食事をゆっくり食べるのも有効です。

適切なエネルギー量をとっていても目標の血糖値に届かない場合は、主食を少し減らしてそのぶんを間食に回す「分割食」を取り入れる方法もあります。

③ インスリン療法

食事療法と軽い運動で血糖を適正な範囲に保てない場合は、インスリン療法に切り替えます。妊娠前からインスリンを使っていた方はそのまま続けますが、妊娠の週数に応じて量の調整が必要になります。

📋 大切なポイント:妊娠前に薬を「インスリン」へ切り替えます

飲み薬(経口血糖降下薬)や、近年広く使われるGLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチドなど)で治療していた方は、妊娠にあたってインスリン療法への切り替えが必要です。インスリンは胎盤を通らないことがわかっていますが、これら以外の薬は赤ちゃんへの安全性が確認されていないためです。妊娠を望む段階で、早めにインスリンへ切り替えておきましょう(メトホルミンなどの切り替えの時期は状況によって異なるため、主治医にご確認ください)。

妊娠糖尿病でも、食事療法で目標の血糖値に届かない場合はインスリン注射を使います。食後の血糖値だけが高い場合は食前に超速効型・速効型インスリンを、空腹時血糖値が高い場合は持効型・中間型インスリンを用い、必要に応じて1日複数回の強化インスリン療法を行います。

💚 インスリンの必要量は時期で変わります

血糖を正常に保つためのインスリン量は、妊娠初期にやや減り、中期以降(とくに20週前後から)はやや増えます。出産後は血糖が急に下がることが多いため、産後はインスリンの減量や中止が必要になります。自己判断で増減せず、必ず担当医と相談しながら調整しましょう。

⚠️妊娠中に注意したい母体の合併症

妊娠中は血糖が上がりやすく、かぜや下痢などをきっかけに「ケトアシドーシス」という危険な状態が起こることがあります(くわしくは別の記事「糖尿病性昏睡」で解説します)。また、早産を防ぐための薬が血糖を大きく上げることもあります。血糖自己測定で高血糖が続いたら、すぐに担当医へ連絡してください。

⚠️ 妊娠前・妊娠中のチェックを忘れずに

網膜症や腎症などの糖尿病合併症は、妊娠中に悪化することがあります。妊娠前によく調べておき、妊娠中も眼底検査や尿の詳しい検査を受けることが大切です。糖代謝異常のある妊婦さんは、妊娠高血圧症候群や早産も起こりやすいため、十分な注意が必要です。

💚「妊娠糖尿病」だった方へ:産後の検査も大切です

妊娠糖尿病は、出産後も血糖の異常が続いたり、いったん良くなっても年月を経て本当の糖尿病になることがあります。出産後6~12週ごろを目安に糖代謝の検査を受け、その後の生活指導や検査の予定もきちんと続けましょう。

❓妊娠中の低血糖は、赤ちゃんに悪い影響があるの?

妊娠していないときは血糖値が70mg/dL未満になると低血糖として対応しますが、妊娠中は胎児へブドウ糖が送られるため空腹時の血糖が下がりやすく、糖尿病のない妊婦さんでも60mg/dL台前半になることがあります。そのため70mg/dL未満でも必ずしも対応が必要とは限らず、低血糖とみなす値は個別に設定するのが望ましいと考えられます。

⚠️ インスリン使用中・1型糖尿病の方は要注意

インスリンを使っている1型糖尿病の妊婦さんは、血糖が急に下がることがあります。低血糖はその後の血糖管理を難しくするだけでなく、昏睡・けいれん・事故などの重大な事態につながることもあります。とくに無自覚性低血糖の方は注意が必要です。血糖自己測定の回数を増やし、適宜補食をとって、血糖を安定した範囲に保ちましょう。

なお、赤ちゃん(胎児)はブドウ糖以外にケトン体などもエネルギーとして使えるため、低血糖そのものが赤ちゃんに重大な悪影響を及ぼすことはない、といわれています。心配しすぎず、担当医と一緒に安定した管理を目指していきましょう。

💚 当院でできること/産科・専門施設との連携

かとう内科(今治市)では、健診で「血糖値・HbA1cが高め」と言われた方の検査・診断や、妊娠を望む段階での血糖チェック・合併症の確認といった、妊娠前の入口の相談を行っています。血液検査の結果は当日にお伝えできます。

妊娠中の血糖管理や出産は、産科・周産期の医療機関で行われます。当院では妊娠を考え始めた段階からの準備をお手伝いし、必要に応じて産科や専門施設と連携・ご紹介します。血糖のことで気になることがあれば、診察時にご相談ください。

❓よくあるご質問

妊娠糖尿病と診断されました。赤ちゃんに影響はありますか?

血糖を目標の範囲に保てれば、多くの場合、元気な赤ちゃんを出産できます。高血糖が続くと巨大児や新生児の低血糖などが起こりやすくなるため、妊娠中の血糖管理が大切です。インスリンが必要になっても、インスリンは胎盤を通らないので、赤ちゃんに薬が直接届く心配はありません。

妊娠糖尿病は産後に治りますか?

多くの方は出産後に血糖が落ち着きます。ただし、将来糖尿病になりやすい体質であることがわかっているため、産後6~12週ごろを目安に再検査を受け、その後も定期的にチェックを続けることが大切です。次の妊娠でも妊娠糖尿病になりやすい点にも注意します。

妊娠中も飲み薬は使えますか?

妊娠中の薬物療法は、原則としてインスリンを用います。飲み薬やGLP-1受容体作動薬などは、赤ちゃんへの安全性が確認されていないものが多いためです。妊娠を望む段階で、早めにインスリンへ切り替えておくと安心です。切り替えの時期は薬によって異なるので、主治医にご相談ください。

糖尿病がありますが、妊娠・出産はできますか?

できます。妊娠前から血糖を整える「計画妊娠」と、妊娠前の合併症(網膜症・腎症など)のチェックが鍵になります。妊娠を考え始めた段階で主治医に相談し、薬の見直しや血糖の調整を進めておきましょう。

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監修:加藤 丈陽(かとう内科 院長)
日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
かとう内科 〒794-0821 愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310(1986年開業・19床)

※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。妊娠中・出産の管理は産科の医療機関で行われます。診断・治療は必ず医師にご相談ください。
参考:日本糖尿病学会/日本産科婦人科学会/日本糖尿病・妊娠学会(2026年時点)

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