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1型糖尿病はどのように治療するのか?

インスリン療法・カーボカウント・インスリンポンプ・CGM連携まで

1型糖尿病 インスリン療法 CSII・カーボカウント かとう内科|今治市 2026.09.22 更新

1型糖尿病は、すい臓がインスリンをほとんど作れなくなる病気です。そのため、インスリンを体の外から補う「インスリン療法」が治療の中心になります。この記事では、インスリンの種類と打ち方、食事(カーボカウント)と運動の工夫、そしてインスリンポンプ(CSII)やCGM連携といった選択肢まで、できるだけやさしく整理します。

💉なぜインスリン療法が必要なのか

1型糖尿病では、自分でインスリンをほとんど作ることができません。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンですから、補わないままだと血糖値が上がり続け、ケトアシドーシスという命にかかわる状態になることがあります。そのため、1型糖尿病ではインスリンを外から補うことが欠かせません。

治療では、健康な方のインスリンの出方をできるだけ再現することを目指します。健康な方では、1日を通して少しずつインスリンが出ており(基礎分泌)、食事のたびに追加で分泌されます(追加分泌)。この2つを注射で補う方法を「強化インスリン療法」といい、1型糖尿病の治療の基本になります。

🔬インスリンの種類と打ち方

インスリン製剤は、効き始める速さと効いている時間の長さでいくつかに分かれます。生活のリズムや血糖値の動きに合わせて、担当医と相談しながら選びます。1型糖尿病では、次の2つを組み合わせるのが基本です。

超速効型・速効型(追加分泌を補う)

食事の前に打ち、食後の血糖の上がりを抑えます。超速効型は食事の直前から、速効型は食事の30分ほど前に打ちます。

持効型溶解(基礎分泌を補う)

ほぼ1日中ゆるやかに効き、1日中の土台となる基礎分泌を補います。1日1~2回、毎日打ちます。

📋 「週1回打つインスリン」は1型では基本的に中心になりません

2024年に承認され2025年に発売された、週1回打てばよい基礎インスリン(インスリン イコデク)も登場しています。ただし、血糖の変動が大きい1型糖尿病では、毎日打つタイプ(持効型溶解)のほうが安定しやすく、低血糖の面でも有利とされています。そのため1型では、毎日のインスリンが治療の中心になります。

📋 打つタイミングと部位

注射はおもに皮下に行います。吸収がよく安定しやすいのは腹壁(お腹)です。毎回まったく同じ場所だと硬くなって吸収が乱れるため、前回から指1本分(約2cm)ずらして打つことが大切です。インスリンは室温で保存できますが、直射日光・高温・凍結は避けてください。

📱インスリンポンプ療法(CSII)とCGM連携当院で対応

インスリンポンプ療法(CSII:持続皮下インスリン注入療法)は、小型のポンプを身につけ、超速効型インスリンを少量ずつ持続的に注入する方法です。1日の必要量のうち基礎分泌にあたる分をポンプから持続的に補い、食事のときはボタン操作で追加分を注入します。毎食前の注射をなくし、より自然なインスリンの出方に近づけやすくなります。

持続グルコース測定(CGM)は、ポンプと組み合わせる場合だけでなく、毎日のインスリン注射を行う場合にも血糖管理に役立ちます。2026年のADA/EASD成人1型糖尿病コンセンサスでは、CGMは血糖モニタリングの標準的な管理方法と位置付けられています。HbA1cだけでは見えにくい低血糖や1日の変動を把握し、目標範囲内にある時間(TIR)も参考にして、治療を一緒に調整します。

SAP(センサー付きポンプ)

CGMとポンプを連携させ、血糖の動きを見ながら使えます。低血糖を予測してポンプを自動で止める機能を備えたものもあります。

ハイブリッドクローズドループ(HCL)

アルゴリズムが基礎の注入量を自動で調整します。食事のときの追加インスリンはご自身で操作します。

より新しいタイプ

高血糖のときに自動で補正を加えるなど、調整をさらに細かく行えるシステムも使われるようになっています。

CGMとインスリンポンプをアルゴリズムで連携させるAID(自動インスリン投与システム)は、同コンセンサスでは継続して使用できる場合の最適なインスリン投与法とされています。ただし、食事時の操作などが必要な機器もあり、「すべて機械任せでよい」という意味ではありません。機器の選択には、ご本人の希望、使いやすさ、継続できる環境、教育と支援が重要です。これは国際コンセンサス上の位置付けで、日本で使える機器や保険条件、当院で提供できる内容は個別に確認します。

参考:ADA/EASD:成人1型糖尿病管理の2026年更新コンセンサス(Diabetologia、2026年9月16日)。

💚 かとう内科でも対応しています

当院ではインスリンポンプ療法(CSII)およびCGM連携に対応しています。「毎食前の注射が負担」「血糖の変動が大きい」「夜間や運動時の低血糖が心配」という方は、診察時にご相談ください。導入後の調整やサポートも行っています。

なお、ポンプ療法を安全に続けるには、十分な糖尿病教育と、それを支える医療チームの体制が必要とされています。

🍚食事療法とカーボカウント

1型糖尿病の食事で大切なのは、食事の量・内容・タイミングと、インスリンの量を合わせることです。「食べてはいけないもの」が決まっているわけではなく、何をいつ食べるかに合わせてインスリンを調整していきます。

カーボカウントとは

食後の血糖にもっとも影響するのは炭水化物(糖質)です。カーボカウントとは、食事に含まれる糖質の量(g)を見積もり、それに合わせてインスリンの量を決める方法です。1型糖尿病では「応用カーボカウント」を用いることが多く、より細やかな血糖管理ができます。

📋 応用カーボカウントの考え方

食事前のインスリン量を、次の2つを足して考えます。

① 食事の糖質に対するインスリン
糖質量(g) ÷ 糖質/インスリン比 = 必要単位数
例)糖質60g・比10g → 60÷10 = 6単位
② 高い血糖を補正するインスリン
(現在の血糖 - 目標の血糖)÷ インスリン効果値 = 補正単位数
例)現在250・目標100・効果値50 →(250-100)÷50 = 3単位

この例では、合計6+3=9単位を打ってから食事をする、という考え方になります。

主な食品の糖質量のめやす

食品 量 糖質量のめやす
米飯 100g(軽め1杯) 約35g
米飯 150g(普通1杯) 約55g
食パン(6枚切り) 1枚 約30g
うどん・そば 1人前(ゆで180g) 約45g
パスタ 1人前(乾80g) 約55g
いも類 卵サイズ1個 約10g
果汁ジュース 100mL 約10g

⚠️ 糖質/インスリン比・効果値には個人差があります

はじめは「糖質/インスリン比10g、効果値50」などを目安に始め、実際の血糖の動きを見ながら調整します。これらの値は、時間帯・体調・運動量によっても変わります。数値の設定は必ず担当医・管理栄養士とご相談ください。

🏃運動するときの注意

運動はインスリンの効きをよくし、血糖の安定にも役立ちます。一方で1型糖尿病では、運動の前後で低血糖などに注意が必要です。

  • ⚠️空腹時の血糖が250mg/dL以上で尿ケトン体が陽性のときは、強い運動を避けます。
  • 💉運動前のインスリンは、運動量に応じて通常の2分の1~4分の3に減らすことがあります。
  • 🍪運動量が多い・長時間になるときは、運動の前・中・後に補食をとります。
  • 🕐運動のタイミングは、空腹時よりも食後1~3時間が勧められます。
  • 💧運動中の低血糖には、ブドウ糖・砂糖水・糖分入りの飲料で対応します(人工甘味料では上がりません)。
  • 💪足や腕をよく使う運動のときは、その部位からの吸収が早まるため、腹壁に打つと安定しやすくなります。

⚠️ シックデイ(体調不良のとき)の注意

発熱・嘔吐・下痢などで食欲がないときでも、血糖は上がりやすくなります。インスリンを自己判断で中止・減量しないでください。とくにSGLT2阻害薬を併用している方は、血糖がそれほど高くなくてもケトアシドーシスが起こることがあります。体調不良時の対応は、あらかじめ担当医と確認しておきましょう。

💚 当院でできること/専門施設へおつなぎすること

かとう内科(今治市・19床の有床診療所)では、1型糖尿病のインスリン療法、インスリンポンプ(CSII)・CGM連携、カーボカウントを取り入れた血糖管理に対応しています。必要に応じて、入院での治療の立て直しも行えます。毎食前の注射の負担や、夜間・運動時の血糖変動などでお困りの場合は、診察時にご相談ください。

網膜症のレーザー治療や透析、より高度な専門的精査が必要な場合は、連携する専門施設へご紹介します。

2026年9月:ADA/EASDの成人1型糖尿病コンセンサスが改訂

2026年9月16日、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)は、成人1型糖尿病の管理に関する更新コンセンサスをDiabetologia誌に公表しました。インスリンによる血糖管理に加え、CGM・AIDの活用、腎臓や心血管の合併症、肥満、心理的負担まで含めて支える考え方が整理されています。

腎臓の確認では、罹病期間5年以上の成人で、尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)とeGFRを原則として年1回評価することが示されています。検査の頻度は病状に合わせて調整し、尿アルブミンの異常は再検査で確かめます。アルブミン尿が持続する場合の治療には、血圧や腎機能などを踏まえた薬の選択が重要です。フィネレノンによるUACR低下も取り上げられていますが、具体的な試験結果と日本での適応は、下の節で分けて説明します。

1型糖尿病でも、血圧・脂質・体重の管理と、治療を続けることのしんどさへの支援は診療の一部です。ただし、これは成人を対象とした国際コンセンサスで、日本の承認・保険制度が変更されたという意味ではありません。一部の治療の考え方は2型糖尿病などの研究も参考にしており、すべてが1型糖尿病の大規模試験で直接証明されているわけではありません。

参考:Holtら:ADA/EASD 成人1型糖尿病管理の2026年更新コンセンサス。心理面については糖尿病とこころのケアもご覧ください。

2026年9月:1型糖尿病の腎症にも新しい動き―米国でフィネレノン承認

2026年9月17日、Bayer社は、1型糖尿病に伴う慢性腎臓病(CKD)のある成人に対し、フィネレノン(商品名ケレンディア)が米国FDAに承認されたと発表しました。尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)を下げ、将来の持続的な腎機能低下や末期腎不全のリスク低下が期待される、という位置付けの承認です。

根拠となる第III相FINE-ONE試験では、アルブミン尿のある1型糖尿病とCKDの成人242人を対象に、ACE阻害薬またはARBによる治療にフィネレノンかプラセボを追加して、6か月間調べました。尿へ漏れるアルブミンの指標であるUACRの変化を評価した主要解析では、プラセボに対して相対的に25%の低下が報告されました。ただし、これは腎不全や透析を25%減らしたという結果ではありません。

注意点は、血液中のカリウムが高くなる高カリウム血症です。試験ではフィネレノン群10.1%、プラセボ群3.3%で報告され、腎機能とカリウム値の確認が重要になります。日本では、CKDに対するケレンディアの適応は2型糖尿病を合併するCKDであり、1型糖尿病に伴うCKDへの適応は承認されていません。また、インスリンの代わりになる薬ではなく、今回の海外承認を理由にインスリンを減らしたり中止したりしないでください。

尿アルブミンとeGFRによる腎臓の確認については、糖尿病の総合ガイドでも解説しています。

参考:Bayer:米国での適応追加の発表(2026年9月17日)/FINE-ONE原著(NEJM、2026年)/Bayer:日本のケレンディア製品情報。

❓よくあるご質問

1型糖尿病は治りますか(完治しますか)?

現在のところ、1型糖尿病を完全に治す(根治する)方法は確立されていません。膵島移植や、iPS細胞などを用いた再生医療、自己免疫をおさえる免疫療法の研究は進んでいますが、まだ研究段階です。そのため、いまはインスリンで血糖を補いながら付き合っていく治療が基本になります。

インスリン注射は一生続けないといけませんか?

1型糖尿病では、体内でインスリンをほとんど作れないため、原則として生涯にわたってインスリンが必要です。発症してまもない時期に必要量が一時的に減る「ハネムーン期(寛解期)」がみられることもありますが、多くは再び分泌が低下しますので、自己判断での中止は危険です。

食べてはいけないものはありますか?

基本的に「絶対に食べてはいけない」というものはありません。常識の範囲で何を食べても構いませんが、食後の血糖にもっとも影響する糖質の量に合わせてインスリンを調整する「カーボカウント」が、血糖の安定に役立ちます。具体的な食べ方は担当医・管理栄養士とご相談ください。

インスリンポンプ(CSII)はどんな人に向いていますか?

毎食前の注射では血糖の調整が難しい方、低血糖を繰り返す方、生活や仕事の時間が不規則な方、妊娠中・妊娠予定の方などに向いているとされます。導入には十分な糖尿病教育と、支える医療チームの体制が必要です。当院でもご相談いただけます。

― あわせて読みたい(生活習慣病の三兄弟)―

監修:加藤 丈陽(かとう内科 院長)
日本内科学会 総合内科専門医(029447)/日本神経学会 神経内科専門医(第5474号)・神経内科指導医(第3843号)/日本認知症学会 認知症専門医・指導医/日本老年医学会 老年病専門医
かとう内科 〒794-0821 愛媛県今治市立花町1-10-5 TEL 0898-23-2310(1986年開業・19床)

※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。診断・治療は必ず医師にご相談ください。インスリンの種類・量・打ち方は一人ひとり異なります。
参考:日本糖尿病学会/糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)/各製剤の電子添文(2026年時点)

成人1型糖尿病の管理について:Holt RIG, DeVries JH, Hess-Fischl A, et al. The management of type 1 diabetes in adults. The updated 2026 consensus report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetologia. 2026(公開2026年9月16日). DOI: 10.1007/s00125-026-06833-z(誌面リンク)。国際コンセンサスであり、日本の承認・保険制度の変更を意味するものではありません。

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